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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

浜松町の不思議~秋田屋はなぜ流行っているのか?(#197)

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流行っている店に行って、いろいろ考えてみよう。

昨日、顧問先に行きました。いつもより早く16時にセッションが終わりました。場所は芝。

ならば、17時以降だとすんなり入れない浜松町の秋田屋へ行こうと、パートナーの吉見範一さんを誘いました。

浜松町付近に会社がある人は誰もが知っていると思います。浜松町駅を降りて増上寺の方向に歩いたことがある人も気になっていたのではないでしょうか?煙がもうもうと出ていて、温かい季節だと店の前に立ち飲みの客が密集しているあの店です。

私は、以前竹芝に会社があり、大門から通っていました。2000年の末から2004年までです。その間、何度もよろうとしたのですが、一度も入れませんでした(並べば入れるのですが、私は基本的に並ぶのが嫌いなタイプです)。

その後、休日の夕方16時半ごろにヨメと入りました。中は、テーブルがあります。二人だと必ず相席になります。

昨日もそうでした。8人がけの席に7人座っているところに、私たち2人が相席で入りました。計算が合いませんが、1人がいわゆるお誕生日席に座っていたのです。

ちょっとでも席が空いていれば、続々と相席で通されます。誰も相席を気にしません。そんな店です。

●いろいろ考えてみた

我々は、企業向けに集客と営業のコンサルをやっています。酒の肴に、なぜこんなに流行っているのだろうと考えてみました。

まず基本である商品の品質。秋田屋は今はやりの焼トン屋のさきがけです。ホルモン屋という呼び方のほうが適当かもしれません。

もう数十年やっているはずです。新橋に多数ある焼トン屋のすべてに行ったわけではありませんが、大統領という店を除いて、みな同じような味です。

それらとは一線を画していました。ただ、好き嫌いはありそうな独特な味です。吉見さんと私はたいそう気に入りました。何十年も続いているわけだから、この味を気に入っている人は多いのでしょう。

次に立地と演出。

立地は浜松町からも大門からも徒歩1分から2分といったところで、申し分ありません。そこでもうもうと煙を立てています。先にも書きましたが、暖かい季節では外に立ち飲みの区画もできます。これは目立ちます。

なんだかよく分からないけれど、一度は行きたくなります。

●夕方四時なのにスーツ姿が多いわけ

一度は行きたくなる人が多いのがよく分かるのは、まだ16時なのにスーツ姿の人が多いこと。

これは明らかに出張の帰りあるいは前泊で早めに来た人たちです。口コミブログも見ましたが、事実出張で寄ったという書き込みが多い。

浜松町は、ご存知のように羽田行きのモノレールの出発駅です。飛行機で出張に来た人で秋田屋を目にした人が、一度は行きたいと早い時間に殺到しているようです。

●店員に家族が多い?

接客態度はどうか。

流行っている店の接客態度はよくないことが多いのですが、優良可でいえば、平均して良と言っていいでしょう。一人若いお兄さんがいましたが、彼は優でした。たくさんいるおばちゃんたちは、おしなべて良という感じです。

ホスピタリティで売っているわけではないようです。ただ、繁盛店としては十分なレベルだと思います。

経営者としては十分お客のことを考えていると思います。

行徳の某居酒屋と比較すると、そこも流行っているのですが、店員が少ない。なので注文したドリンクが出てくるのが遅い。これは人件費を抑えようとしているのでしょう。その分料金は安いので流行ってはいます。

秋田屋は、2階だけで、調理している人を除いて、店員が6人いました。ドリンクはすぐに出てきます。人件費をかけても待たせないということなのでしょう。それでも安い。店員に家族が多いのかもしれません。

●回転率よりも満席率

さて、これだけ流行っている店なのですが、けっこう長っ尻の人が多い。我々は1時間で帰りましたが、我々より先に来て、まだまだいそうな人も多かった。

普通これだけの繁盛店になると、客の回転率を高めることを考えるはずですが、店員は無理に注文を取りに来ることもないし、早く帰れという顔もしない。いつまででもいていいという感じです。

これは実は効果があります。

チェーンの居酒屋で、金曜なので2時間で帰ってくださいというところがあります。2時間後満席ならば、こちらも納得して帰るのですが、空席があるのに時間だからと帰される場合もある。そんなことがあると、その店には二度と行かなくなります。

秋田屋は、長っ尻の客が多い。ということは、なかなか席が空かない。なので、常に満席状態です。どころか行列ができている状態。これは効きます。

常に行列ができている。入れたらラッキー。なので、出張客は早い時間に殺到する。近所の会社員はめったなことでは入れない。

伝説となり、口コミもできます。入ったことがないのに店の名前を知っている人がたくさんいる。マーケティング的にはすごいことです。

●発端は?

しかし、同じような条件でも流行らない店は流行らない。

秋田屋がこれだけ流行るようになった何かきっかけがあったと思うのです。

それが分からない。

グルメな有名人(たとえば池波正太郎のような人)が、最初に絶賛したのだろうと思ったのですが、ネットで調べても痕跡はない。店のHPすらない。必要ないからでしょう。

テレビは意外と継続的な影響力がなくて、放映後1ヵ月ぐらいはお客が殺到するのだが、すぐに落ち着くのだそうです。これは、テレビの場合、次々と紹介するからとのこと。

だから、やっぱり本などで誰かが紹介したのがきっかけだと思うのですが、見当たりませんでした。どなたかご存知の方はいらっしゃらないでしょうか?

とはいえ、仕掛ける方法はいくらでもあります。逆にいえば、最初に何らかの仕掛けをしないと厳しいということですが、それはキャンペーンセールではないように思います。

一度食べてもらえればと思う店は多いようで、開店2週間は半額なんてキャンペーンを仕掛ける店は多いのですが、キャンペーン中は繁盛しても、その後閑古鳥になる店が多い。よほど味に自信がなければ避けるべき仕掛けでしょう。

何か「伝説」になるような仕掛け。いまはそこまで求められているように思います。

●流行っている店にはヒント満載

以上、分からないこともありましたが、たかだか1時間いただけでも見えることはたくさんありました。

流行っている同業を見に行くのは勉強になると思います。難しい言葉でいうとベンチマークというやつです。

同業は見に行けないという人もいます。

が、就任当時の1986年にシェア9%だったアサヒビールを立て直した名経営者樋口廣太郎氏は、社員にあきらめムードが蔓延する中、ひとり敢然とキリンビールとサッポロビールに出向き、「我が社の悪い点を教えてくれ」と頼み込んだのだそうです。

その後のアサヒの快進撃は誰もが知るところ。

経営者にはこのぐらいの図々しさが必要なのでしょう。

見学ぐらいなんてことはありません。

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