みんななぜか精神的にしんどくなるほうを選ぶ(#183)
これをやればできるというのではなく、これをやるほうが本質的に楽というものを探す。
ある顧問先で、売っているものに対して愛着があるかどうかをチームで話し合って欲しいという課題を出しました。
そして、愛着がないとすれば、なぜか?どうすれば愛着が持てるのか?という問いかけをしました。
すると、「そもそも愛着を持てば売れるのか?」という疑問が出す人が現れました。
その人は、こうも言いました。「私は、仕事と割り切るほうが、精神的にラクです」
●商品に愛着を持つほうが売りやすい
商品に愛着があれば必ず売れるかというと、それはそうとは言い切れないでしょう。
しかし、極端な例ですが、考えてみてください。
隣同士で2軒の本屋があったとします。品揃えも店舗の大きさもほぼ一緒とします。
片方の本屋は、主人が大の本好きで、商品にはほこり一つなく、また自分が読んでよかったと思う本の感想をポップに書いて、その本のそばにおいています。暇な時間には、お客さんと本の話で盛り上がることもあります。
もう一方の本屋では、主人が本屋はビジネスと割り切り、ムダなことは一切やりません。ほこりは目立ったら掃除する程度。本はベストセラーなら勝手に売れるし、売れない本は返本すればいいだけ。お客と話すなんて面倒。せいぜい買ってくれたときに「ありがとうございます」と言う程度。それも事務的に。
本当に極端な例ですが、どちらの本屋が流行ると思いますか?
こう考えると、商品に愛着を持ち、愛を持って薦められる人のほうが、少なくとも売るのがラクという気がするのです。
実際、営業電話のほとんどが、仕事と割り切って、いやいや売っているように感じます。トークが事務的なので、どうしてもそう感じてしまいます。
愛を持ってマイラインを売っている人、愛を持って不動産を売っている人、愛を持って保険を売っている人、愛を持って広告を売っている人。残念ながら、そのように感じる人から電話をもらったことがありません。みんないやいや売っています。お願いだから同情してよという気持ちさえ伝わってくることがあります。
いや、仕事と割り切ることは否定しません。そのほうがモチベーションがあがるのなら、売りやすくなる可能性もあります。中には、「この人は、ビジネスライクだから信用できる」という人もいるかもしれません。結果が出ていれば何だっていいのは確か。
しかし、これがもし結果が出ていないストレスを抑えるための割り切りだとしたら、まったく逆効果です。愛着を持って売るほうが、結果が出て、ストレスがなくなる可能性はずっと高い。
すでに結果が出ているのならなおさらです。ビジネスライクに売っていても売れるのだから、愛着を持てば倍増するかもしれません。
●私は本当に愛着が持てないならやめるべきだと思う
私は、愛着が持てない理由が正当であれば、その商品自体を扱うのをやめませんかと提言するつもりでした。
私は、それでいいと思うのです。
自分軸(筆者の定義は、自分は「誰に」・「何を」・「なぜ」提供しているのか)とずれているがために愛着が持てないのであれば、やめたほうがずっといい。
これが仮に自分軸と合っているのに愛着が持てないとしたら、まだまだ「ぶれている」自分軸だということなので、自分軸の見直しが必要です。
いま扱っている商品が愛着が持てない商品だと分かることは、一つのビジネスを考え直すチャンスなのです。
●本質的に楽になることを探す
愛着が持てるかどうかは一例です。
また、所詮は私の仮説に過ぎません。
本当は、ビジネスライクに割り切るほうが売れるかもしれません。
しかし、本屋の例のようなことやふだんかかってくる営業電話のことを考えると、商品に愛着を持つほうが本質的に楽と私は思うわけです。そして、どうしても愛着が持てないなら、やめればいいとまで思う。同じ割り切るなら、このように割り切るほうが私にはずっと楽です。
ケースバイケースで個人にとってなのかチームにとってなのかは考える必要はあるでしょうが、いろいろな事例を検討して、本質的に楽になることを探していけばいいと思います。
●テクニックで売れるという考えは捨てよう
さて、冒頭の方がそうだと決め付けるわけではありませんが、商品への思いや愛着で売れるのかという疑問を持つ人の多くは、逆にテクニックで売れると思っていることが多いようです。
それは、ここ数年数多くの営業コンサルタントや経営者と話をしてきて結論は出ています。テクニックで売れるようなことはありません。
才能はあります。何でも売ってしまう才能を持つ人はいます。それはある意味「長島茂雄」的天性であり、真似はできません。なので、世界一売った人の営業本は、ほとんどのみなさんには参考になりません。
しかし、才能はなくても売ることはできます。それもテクニックは関係ありません。というより、営業のテクニックで身につけるべきものは、あまりにも初歩的で、そんなところで差がつくとは思えないものばかりなのです。
もちろん知らないより、知っているほうがいいでしょう。知らない人は確かにまず売れません。
営業の初歩的テクニックを学びたい方はこちら(弊社の売り込みではありません。存じ上げない方の無料動画セミナーですが、非常にいいと思いました)
http://ameblo.jp/sigmor/entry-10626819957.html
とはいえ、本当に掛け算九九みたいなものでして、知らないと算数の問題は解けませんが、知っていても解けるとは限りません。そういうものなので、テクニックで売れるなんてことは考えないほうがよいでしょう。
売ろうと思えば、人間の心の機微の本質を捉えることに注力すべきなのです。だから、優れた営業論(もっと言えば経営論)は、みな精神論に聞こえるということなのです。
※これも実際に別の顧問先で、トップ営業マン以外のメンバーが、トップ営業マンとまったく同じ営業トークをしているのに、全員合わせてトップ営業マンの売上に及ばないというケースがありました。吉見範一さんの指摘で分かったのは、テクニックの問題ではなく、なぜそのようなトークをするのかという本質的な部分の理解が不足していたからでした。
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