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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

日本の将来を憂えているのなら、必ず読むべき本~基礎的知識が間違っていては、語れない(#181)

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地域格差などという幻想を捨てて、日本を元気にするビジネスに取り組もう

 

いま『デフレの正体』という本を読んでいます。

パッと速読してから、現在熟読をしています。読めば読むほど、地方を活性化して、日本を復興していきたいという人の必読書だという思いが強くなっていきます。

▼『デフレの正体』
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我々の経済常識は、マスコミによって形作られているといっても過言ではありません。

マスコミは、経済学者やシンクタンクの意見をもとに、番組を作っていると思われるのですが、実は日本の経済学は世界的にみて遅れており、世界の常識とは大きくずれています。

その証拠に、あれだけ物理や化学の世界ではノーベル賞を取っているのに、ノーベル経済学賞を獲った日本人はいません。いないどころか噂にすら上りません(これは私が寡聞なだけかもしれませんが)。

一例を挙げると、有効求人倍率という指標がありますが、世界中でこんなものを景気の指標に使っている国は、日本だけなんだそうです。

まあ、このような驚きの事実から話が始まり、ふだん我々が常識と信じているものが、いかに危ういかが分かってきます。

私は、『デフレの正体』を読むまで、地方は高齢者ばかりになっており、首都圏より先に衰退していくと思っていました。ところが、それは間違いだと気づきました。

高齢者の問題は、首都圏のほうがずっと深刻です。

●まず知っておいてほしいこと

その前に、まず知っておいてほしいことがあります。

今、円高になっている理由分かりますか?

日本がこんなに不景気なのに、円高なんておかしいという人は多いと思います。

それは、日本が世界中のほとんどの大国に対して、貿易黒字だからなんです。

多くの日本人が、中国に対して貿易赤字と思い込んでいますが、中国に対しても貿易黒字です。特に香港に対しては黒字額が大きい。

ちなみに赤字なのは、スイス、フランス、イタリアに対してです。もちろん高級ブランドを輸入しているからです。

実は、香港、韓国、台湾などのアジアの雄と言われる地域が、日本に対して貿易赤字なのは、彼らが日本の「ブランド」品を買い漁っているからなのです。

アジア諸国が経済発展するほど、日本(日本人ではないですよ)が儲かる仕組みになっており、中国にGDPで抜かれるというは、逆に歓迎すべき事態なのです。

これだけ国際競争力の「強い」(日本人はみんな弱いと思い込んでいるが)国の通貨が安いわけがありません。

しかし、景気はよくならない。なぜか?

内需が拡大しないからです。貿易黒字でいくら外貨を稼いでも、国内でものが売れないのなら、ほとんどの人は儲かりません。

これが基本です。日本は、どうにかして内需を高めないといけないのです。

●団塊世代以上の人口は首都圏に集まっている

さて、さきほど高齢者問題は、首都圏のほうが深刻と書きました。

どういうことでしょうか?

2000年から2005年にかけて、全国で65歳以上の方が367万人増えています。

そのうちの3人に1人の118万人が首都圏民です。ちなみに全人口の4人に1人が首都圏民(同書では一都三県(千葉・埼玉・神奈川))ですから、この増え方は人口比以上です。

何が起こっているのか?

私が子供のころ、集団就職という言葉がありました。

2000年から2005年にかけて65歳になった人たちは、1930年代後半生まれです。この人たちが集団就職で東京や大阪など大都市にいっせいに移住してきました。

つまり、この年代の人口は大都市圏に多いんですね。その中でも首都圏は特に多い。

そのあとの団塊世代も、集団就職で大挙して大都市圏に移住しています。「中卒は金の卵」という言葉のあったころの話です。

ということは?

団塊世代の頃の出生率は4人を越えていました。単純にいえば4人のうち3人は家業を継げない子供でした。その人たちが大挙して大都市圏に来たことになります。

今後、首都圏では介護施設も介護従事者もまったく足らなくなることが容易に予測できます。

もちろん地方だって高齢者問題はたいへんです。しかし、首都圏は桁違いに大変なことになる。

●高齢者を支える生産年齢人口は?

さて、高齢者を支える生産年齢人口(15歳‐64歳;著者はこの指標は古いが、とりあえず使うとしています)はどうなのでしょうか。

これが著しく減っているのが、地方の衰退の原因ではないのか。

地方の方たちは嘆いています。雇用がないから、若い人がみんな都会に行って返ってこない、と(でも、これは昔からでは、という突っ込みをしたくなりますが)。

実を言うと、この数字、一部を除いて、全国一律に減っています。

子供が増えていないのもありますが、大量の定年退職者がいるからです。

団塊世代が、そろそろ65歳になりはじめますから、来年以降、ますます減るでしょう。

では、生産年齢人口が一番減っている都道府県は分かりますか?

それは大阪府です。

私は、1994年まで大阪で働いていましたが、当時はまだ活気がありました。

その後、出張などの機会で訪れましたし、独立当初は半年間単身赴任していました。

90年代から関西の没落ということは言われていましたが、生活実感レベル(たとえば、すっかり歩く速度が遅くなったなど)で、なんだか元気がなくなったという感覚を持っていました。

原因は、バリバリ働いている現役世代が減っていたということなんですね。

もちろん地方でも、生産年齢人口は減っていますが、関西の実数ベースでの減り方は、中規模の政令指定都市が一つ吹っ飛ぶほどの減り方(大阪府で70万人)なんです。

●内需が減る原因は分かったが

高齢者が増えれば、当然支出が減ります。

生産年齢人口が減っても、当然支出が減ります。

日本では、この両方の現象が同時に起こっているのです。

※ちなみに、少子高齢化という言い方は、少子化が解決すればすべて解決するという杜撰な考えが根底にあるので、著者は使わないとのことです。

なぜかというと、団塊世代が日本の人口のほぼ1割いて、その人たちが、当たり前だけど、年に1歳ずつ加齢しているからです。

人口の一番大きい層が加齢して退職していけば、生産年齢人口が減り、高齢者が増えていくのはあたりまえ。少子化は(これは将来じわじわ効いてくるとしても)今の状況には関係ありません。

この団塊世代の景気に与える影響は半端ではありません。

彼らが30代中盤のころには、バブル景気が来ました。彼らが一斉に家を買い始めたからです。当然土地も家屋も高くなります。子供でも分かる理屈です。

団塊世代に一通り住宅が行き渡った後、同じような需要がくるはずもありません。これも子供でも分かることです。

しかし、それを当時も今も経済学者やシンクタンクの連中は、景気がよくなれば需要が増えると言っています。だから政府は景気対策をしろと。

本末転倒です。

政府がやれる景気対策とは、公共事業とか、金利の変更ですが、それでは内需は増えない。人口の波はいかんともしがたいのだから。

我々がやるべきことは、他にあります。

●むしろ著者の志を感じる

以上をまとめると、確かに地方は苦しい。しかし、それ以上に東京や大阪あるいは名古屋を中心とする大都市圏のほうがずっと苦しいということです。この10年ぐらいで、さらに苦しくなります。

なので、地方の有意の方々は、地域格差などという幻想にとらわれず、地域格差を前提とせず(いや、地域格差ならむしろ有利)、ゼロベースでビジネスを考えていくべきでしょう。

その新しいビジネス・ビジョンは、地域を活性化させ、さらに日本を元気にする処方箋を含んだものであればなおいいと思います。多くの人に支持され、応援される可能性が高いからです。

処方箋は、人によってそれぞれでしょう。

著者は、3つ挙げていました。

1)高齢富裕層から若者へ所得を移転する
2)女性の就労と経営参加を当たり前にする
3)労働者ではなく外国人観光客・短期定住者を受け入れる

詳しくは同書をお読みください。

▼『デフレの正体』
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経済の実態を見極め、これからの時流に乗りたいと考えている方の必読書です。これが新書(つまり価格が安い)というのは恵まれています。

著者自体もこう書いています。

「これは読んだ方がいい」と、誰にでも薦められる本は、そうそうはありません。ましてや自分が書いた本についてそのように話すのは、いかにも気恥ずかしいものです。でも今回は心からお薦めします。これは「読んだ方がいい」本だと思います。極めて当たり前な、誰が読んでも客観的とわかるような事実を並べていますが、類書にない、オンリーワンの内容です。

(前掲書)

ふつう自己宣伝は眉唾なのですが、まったくこのとおりであり、むしろ著者の志を私は感じます。

この本をベースに、一緒に日本のあるべきビジョンを語り合える仲間を我々は求めています。

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