ビジネスがうまくいっていない原因を誤解を恐れず一つだけ言うと・・・(#156)
美学があれば、課金がすることが怖くなくなる。
●解説
前回、「ビジネスのエッセンスが知りたければ、剣客商売を読め。」という記事を書きました。
▼大切なことはみんな、時代小説から学んだ(#155)
http://blogs.bizmakoto.jp/toppakoh/entry/1009.html
その中で、下記のとおり引用しました。
「あの又六から、五両の礼金をうけとるのは、いささか心苦しくおもいますが......」
「ばかな」
小兵衛が舌うちをして、ふといためいきを吐いて
「あいつはこれから五両はおろか、十両も五十両も稼げる男になったのだ。あれだけの力をつけてやって、五両なら安い」
「はあ......」
「すこしは、商売気を出せ。お前だとて、又六の肌身を切ったときは、真剣勝負そのものの心構えであったはずじゃ」『剣客商売 2 悪い虫』より
その説明として以下のように書きました。
きちっと価値を提供しているのに、それが分からず、正しい値付けができない人への戒めです。
小説の中で、このことを説明してくれている部分がありました。ちょっと長くなりますが、引用します。
「この医者という稼業は、やり方しだいで、いくらでも金が儲かるのじゃよ」
「ははあ......」
「何も彼(か)も知っているくせに、小兵衛さん、惚(とぼ)けていなさる。剣術だってそうやないか。現に、いまのあんたは、うまいことしてるがな」
「こりゃあ、どうも......」
「けれど、あんたは金を手に入れるのもうまいが、つかうのもうまい。つかう金じゃということを知っていなさる。わしも、そのつもりじゃ。(略)本所界隈で、小川宗哲の名声は大きいが、金のある無しにかかわらず、身分の上下にかかわらず、宗哲の診察と治療は行きとどいている。だから、本所(ところ)では、
「生き神さま」
なぞという者もいる。
それもこれも、宗哲にいわせると、
「わしが金を恐れ、金を避けているにすぎないのじゃよ」
と、いうことになる。
さらに宗哲は、こういった。
「そこへ行くと、さすがは秋山小兵衛先生。大金をつかんでも、たちまちこれを散らし、悠々として、小判の奴どもをあごで使っていなさるわえ」『剣客商売 2 不二楼・蘭の間』より
> わしが金を恐れ、金を避けているにすぎないのじゃよ
> 大金をつかんでも、たちまちこれを散らし、悠々として、小判の奴どもをあごで使っていなさるわえ
この二箇所に、金が集まる人とそうでない人の違いが明確に表現されています。
ここの意味が分かれば、
> あんたは金を手に入れるのもうまいが、つかうのもうまい。つかう金じゃということを知っていなさる。
という境地になります。これは、ひっくり返せば、金のつかい方がうまい人は、金を集めるのもうまいということです。
『剣客商売』の主人公の秋山小兵衛が、作者池波正太郎の分身であることは言うまでもありません。
池波正太郎といえば、(もはや死語かもしれませんが)ダンディの代名詞のような人でした。服装、食事、生き方、すべてにわたって美学を説き、それを貫いてきた人ではないかと思います。
金の使い方にも、集め方にも美学あると、彼は言いたいのでしょう。
誤解を恐れずにいうと、ビジネスがうまくいっていない人のほとんどが、「金を恐れ、金を避けているにすぎない」のです。
言い方を変えると、課金することを恐れているということ。
課金すべきところでせず、課金してはいけないところでしているというケースもありますが、課金に対してきちっと向き合って考えないという意味では同じ。金を避けていると言えます。
課金を恐れるのは、うしろめたいから。
まだまだ実力がないのにお金をもらっていいのか?こんな商品やサービスでお金をもらっていいのか?困っている人を相手にしているのにお金をもらっていいのか?いいのか?いいのか?いいのか?
このような気持ちが、「金を恐れ、金を避け」る気持ちに繋がっていくのです。
もう一度、冒頭の引用を思い出してください。
貧乏な又八から謝礼をもらうことにためらいのある息子大治郎を、秋山小兵衛は「商売気を出せ」とたしなめています。
まさに課金を恐れるな、恐れないだけの美学を持て(すでに価値はあるのだから)と言っているのです。
●裏解説
私は、『剣客商売』というタイトルをみて、池波正太郎の別作品『仕掛人梅安』シリーズからの連想で、金をもらって人を斬る渡世の人を描いた小説と思っていました。
これは、 大きな勘違いでした。
秋山小兵衛という還暦を過ぎた剣の達人が、いろいろな事件に関わっていくと、なぜかお金が入ってきて、それをまたいいことに使う。小兵衛自体は、なぜかいつもお金に困っていない。そういう話なんです。
池波正太郎が『剣客商売』というタイトルをつけたのは、これが「商売」の理想なんだと言いたかったからに違いありません。
手前味噌になりますが、我々333営業塾は、美経倶楽部というコミュニティを通じて、仲間とともにこのような商売の理想を実現したい、いやできると思っています。
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