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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

算数のすすめ~もちろん分析も抽象化も大事なのだけど、そればかりをやってきたのでは?(一日一言 #98)

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あえて抽象化せず、また分析せず、現実に即して具体的に考えるとよいことが多い。

●解説

私も333営業フレームワークというものを昨年末に作ったりしたので、抽象的思考、分析的思考も重要だということは分かっています。

しかし、フレームワークには怖いところがあります。きちっとした指導者がいないと、フレームワークを埋めただけでなんとなく戦略ができたように思ってしまうところです。

私の提唱している「自分軸」(誰に・何を・なぜ提供しているか)というシンプルなフレームワークでさえ、コンサルである私がいるといないとでは、成果物の出来に大きな差ができてしまいます(このブログでも何度か事例をお見せしました)。

※シンプルだからこそという面もあるでしょう。

我々は学校教育で、モノの考え方には、演繹と帰納の二通りがあると習ってきました。

演繹は、前提から出発して、論理的に考えて結論を出していく方法です。抽象的思考とまったくイコールではありませんが、それに近いものです。

帰納は、経験(つまりデータ)から出発して、法則を見出していく方法です。これも分析的思考とまったくイコールではありませんが、きわめて近いものです。

実際には、もう一つ仮説-検証法という考え方もあります。試行錯誤と言ってもいいかもしれません(『美徳の経営』という本では「実践的推論」あるいは「プラクティカル・シンキング」と呼んでいます)。

「仮説-検証」をしろというのは、どの会社の現場でも言われることですが、多くの人が苦手です。特にいわゆる「いい大学」を出ている人ほど苦手な傾向があります。

※本格的な実験に明け暮れてきた理系研究者は得意と思いますが。

その理由は簡単でして、彼らは抽象的思考と分析的思考の訓練を積んできているからなのです。現場で具体的に考えるということは訓練されてきていません。

それが、会社に入ってからも抽象的思考と分析的思考でずっとやってきているわけですから(特にエリートほどこの傾向が強い;あくまで一般論ですが)、具体的かつ実践的に考えろと言われても困ってしまうのです。

※私は、つい数年前に某省庁のキャリア官僚が、自分たちで具体的にスケジュールを作成するということができないことを知り、驚いたことがあります。政府から突然そんなことを要求されたので対応できなかったようです。

しかしながら、多くの識者が指摘するように、もはやデータの分析や論理的思考だけでは答えが出ない時代となりました。試行錯誤がますます重要になっています。

具体的、実践的(行動的)に考える文化を創っていきましょう。 

●裏解説

この点に関して、故本田宗一郎のすごいエピソードが残っています。

晩年、本田宗一郎が部下たちの戦略計画立案の場面を目にして、そんなことをやっている暇があるなら面白いものを作れ、と怒鳴ったという逸話が残っている。分析や計画を重視するマインドからすれば乱暴な考え方である。しかし、否定できないものがあった。(『美徳の経営』P.25)

なぜ「否定できない」のかは、ぜひ同書をお読みください。

同書で面白いと思った部分は多々あるのですが、その中でも「算数の発想」を勧めている部分が心に残りました。

たとえば、つるかめ算を覚えておられるでしょうか?

鶴と亀が合わせて10匹います。足の数を数えたら36本でした。鶴と亀はそれぞれ何匹いますか?

そもそもそんな数え方でなく、鶴は何羽、亀は何匹とそれぞれ数えるはずだという突っ込みはなしですよ。たまたま、こういうふうにしかデータが残っていなかったと考えてください。

ここで中学生以上であれば、方程式というものを知っているので、次のように解きます。

鶴がx羽、亀がy匹いるとすると、次の連立一次方程式を解けばよい。
x + y = 10
2x + 4y = 36
x = 2, y = 8  答.鶴が2羽、亀が8匹

これがまさしく抽象的思考です。抽象的思考は道具として切れます。数式が作れれば、あとは操作さえすれば答えが出てくるからです(というほど数学が簡単でないのもよく知っていますが)。

しかし、頭を使うと言う意味では、次の算数的解法には劣ります。

全部が鶴だとすると、足の数は 2 × 10= 20本。
実際の足の数との差は、36 - 20 = 16本。
この差は、亀の分と考えられるので、これを鶴と亀の足の数の差である2で割った、16 ÷ 2 = 8 が亀の数である。  答.鶴が2羽、亀が8匹

具体的思考を鍛えるために、算数は向いているように思います。

算数の問題集を買いに、本屋へ急ぎましょう!

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私は以前、算数と数学に連続性がないことに問題を感じていました。

鶴亀算以外にも、植木算、旅人算、時計算などというものを習ったのに(果ては、学校では習いませんでしたが中学入試レベルでは、ニュートン算というものもありました)、中学に入ると方程式で簡単に解けてしまう。

だったら、最初から方程式を教えてくれれば苦労はなかったのに――こういう考えです。

同じようなことを、数学教育家の故遠山啓さんもおっしゃっていました。同意見の方も多いと思います。

しかし、いま考えると小学生のときに、こういうパズル的な問題を強制的に解かされていたことは、ある意味自分の財産になっているように思います。

と言いながら、さきほどネットで見た、有名中学入試問題の算数は難しかった・・・。

 

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