新人さんの素朴な疑問~プロは聴き手から教わり続ける
昨日は、あるIT企業の新人研修の講師を務めてきました。
テーマは、インタビュー・スキルですが、メインのメッセージは自分軸(「誰に」「何を」「なぜ」提供するのか)です。
ビジネスマンにおけるインタビューの究極の目的は、顧客との信頼関係作りであり、そのためには自分軸を持たないといけないと思うからです。
すると、参加者の一人から、素朴ながら鋭い質問をいただきました。
「お客様の満足を求めるのが、自分軸を考える目的だと思います」
その通り!よく理解されています。
「それなのに、「なぜ」で自分の中の理由を考えるのはおかしくありませんか?お客様の理由を考えるべきではないのですか?」
今日は、この疑問にどうお答えしたかをお話しします。
●共感が顧客満足につながる
実際は、後半の質問(お客様の理由を考えるべきでは?)からお答えしたのですが、ここではまず前半(自分の中の理由を考える理由)からお話しします。
こちらの記事の「●あるプラスティック製品製造販売業者の実例」と、その続きの「●「共感」は、深いところにある」と見出しがついた部分をご覧ください。
▼コンサルタントやコーチで起業したい方へ~あるいはこれらの存在理由http://blogs.bizmakoto.jp/toppakoh/entry/351.html
大岩さん(仮名)という方の、事例が出ています。
大岩さんが最初に思っておられた自社の顧客価値は、「手ごろな値段で安心して施工できる」というものでした。
それが、「なぜ」を掘り下げたら、「大岩さん自身にも、先代のこだわりの職人のDNAがあって、現場の人たちにとって一番価値のあるものを作っている。それを現場で苦労しながらも、品質へのこだわりを捨てない人たちに提供」することに変わりました。
どちらが顧客から共感を得られるかというと、「なぜ」を掘り下げた後のほうだと思うのです。
「なぜ」を掘り下げるための質問としては、1)理念や夢、2)楽しいあるいは得意なこと、3)影響を受けた人、4)過去の経験(挫折・失敗あるいは極度の幸せ)の4パターンがあります。
このどれもが人の感情を揺さぶり、共感を生みます。
共感は、信頼を生み、信頼は購買につながります。購買後も共感を裏切らないことを第一に考えれば、かならず満足、場合によっては感動を呼ぶことさえあります。
共感してもらった部分は、自分自身がやっている理由なのだから、常にその理由を問い直し続けていれば、最終的には満足や感動につながるという流れなのです。
●もちろん顧客の自分軸(相手軸)も考えないといけない
続いて、後半の「お客様の理由を考えるべきではないか?」という質問の回答です。
実は、これは説明していたのですが、ぼくの講師力が未熟なので伝わっていないようでした。
「お客様の理由」は常に考えなければなりません。ぼくは、これを「顧客の自分軸」あるいは「案件の自分軸」と呼んでいます。
たとえば提案依頼をいただいたときに、「案件の自分軸」を外してしまうと、注文をいただくことはまずありません。
「案件の自分軸」に対して、「自組織の自分軸」がうまく適応させられたときに、案件を獲得できるのです。
●新人さんから何を学んだか?
ぼくと新人さんとでは、明らかに経験の差があります。年齢もちょうど20歳ほど離れています。
ということは、かなり大きなギャップがあるということです。
今回の研修で、このような質問が出てきたのは、教える側が、そのギャップについて忘れていたということです。
プロは、相手と自分に大きな差があることを忘れてしまいがちです。そのため、自分の中では当たり前のことをはしょって説明しがちです。
前半の質問に対しては、ほとんど説明していませんでした。後半については、図解を1ページ入れて説明したのですが、説明した気になっていました。
今回は、そのことを教えてくれた新人さんがいたから良かったのですが、そうでなかったらと思うとゾッとします。
何か言ってたけど、何を言ってるのかよく分からなかった、という評価ほど、講師の評判を引き下げるものはないからです。
とはいえ、人前で話し続けていれば、このような反応に出会う機会は必ずあります。
プロが人前で話し続ける必要性について、心を新たにした出来事でした。
--
かけがえのないあなたのための自分軸メルマガ「週刊突破口!」の登録はこちらです。