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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

実録:「理由」があれば、売れるようになる

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先月、我々333営業塾吉見範一氏&筆者・森川)は、ある生命保険営業の方(Wさんとしておきます)の無料相談(※)をお受けしました。

生命保険も昔のように訪問で成績を上げるのは難しくなってきた。特に企業などはアポなしで中に入れなくなったので、訪問営業はまず不可能。

なので、ライフプランナーの資格を持ち、コンサル的なアプローチをする人が増えてきたわけです。

どうせコンサル的にやるならば、集客はセミナーで・・・。

ここまでは誰でも考えるわけですが、ではどうすればセミナーを開催できるのかという事務的な話もよく分からないし、ましてや集客となるとまったく分からない。

そこで相談に乗ってほしいということだったのです。

※無料相談は、弊塾主催のセミナーに参加いただいた方への特典であり、飛び込みは受け付けておりません。よくメールでコンサルをやってくれないかという問合せが来るのですが、初対面の人とは信頼関係がまったくないのでミスマッチである可能性が高く、お受けしていません。コンサルを希望される方は、ぜひ弊塾主催のセミナーにいらしてください。

●やはり「顧客価値」が出てこない

セミナーの集客のしかたや事務などの話を一通りしたあとに、セミナーの告知文を作成するには、自分軸(「誰に」「何を」「なぜ」提供しているか)が必要だということで、自分軸発見のコンサルを始めました(写真)。

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「誰に」に関しては、そんなに大きなブレはありません。特にすでに営業経験のある方で、このあたりを間違う人は少ないのです。

問題は「何を」であり、Wさんも案の定、「生命保険+ライフプランニング」との回答でした。

前項の「※」に書いたように、無料相談を受けているからには、セミナーも受講されています。それでも、「何を」を「顧客価値」として表現できません

これは、Wさんの能力が低いわけではけっしてなく、100人中99人はWさんと同じような回答をします。それだけ商品そのものを説明するということが身に染み付いているのです。

このあたりの事情は、こちらの記事が参考になるかと思います。

●「なぜ」を聞くと、「顧客価値」が出てくる

「何を」を聞くと、100人中99人は商品名や(売り手目線での)商品のメリットが出てくることは重々承知しています。

なので、いちいち「そうではなく、顧客価値で表現してくださいませんか?」などという野暮な要求はしません。

「そうですね。生命保険とライフプランニングですよね。確認できて良かった」などと笑顔で受けつつ、「ところで、どうして生命保険の営業を始められたんですか?」と質問します。

そうすると、以前SEだったときに将来の生活設計に不安を持ったこと、この不安を解消したくて転職したこと、お客様にも不安を解消してもらいたいと思っているから続けていることなど、次から次へと出てきます。

「そう、それ!将来の生活への不安の解消ですよね。それもっと具体的に言えますか?」この質問以降は、それまで<なぜ>の欄に書いていたのを、<何を>の欄に書いていきます。

それを見たクライアントは、急に晴れ晴れとした顔になります。

提供している顧客価値が明確になってくるので、なんだか売れそうな気になってくるからです。

●「何を」と「なぜ」の相乗効果

ホワイトボードの板書(前掲写真)で特筆すべきは、生命保険を法人に対して営業する際に、「精神的安定によるモチベーション/生産性の向上」というのが価値になることが見えたことです。

ただ、同じことを誰もが価値として提供できるわけではありません。

Wさんには、SE時代に不安を抱えてモチベーションが下がり、結局は転職したという体験があります。その体験が、説得力を生むのです。

ですので、生命保険営業の方で、これを見て同じことをやってみようとしても怪我をすると忠告しておきます。あなたにはもっと向いた売り方が必ずありますので、それを自分軸を考えることで発見してください。

顧客価値(「何を」)に、その価値を提供している理由(「なぜ」)が重なるので、売れそうな気がするのです。

売れそうな気がすれば、実際に売れるようになります。

営業において、メンタルはきわめて重要で、営業マンが売れそうもない、あるいは売るのに苦労すると思っている商品はやっぱり売れないのです。

逆に、これは売れるぞと思っているものであれば、売れるまであきらめません。結果として売れるようになります。

●自分軸が分かれば、モチベーションが高まる

マーケティングにおいて、営業マンのモチベーションは実は最重要な成功要因となります。

すでに紹介している『こころを動かすマーケティング』という本。

著者の魚谷雅彦氏は、現・日本コカ・コーラ会長であり、ジョージア、爽健美茶などのキャンペーンを次々と成功させてきた、いわば日本でも有数のマーケッターです。

その方が、キャンペーンのときに一番重要視していたのが、販売事業者であるボトラーのモチベーションでした。

また、一時期日本コカ・コーラの営業部隊(実質はボトラーの支援部隊です)を率いたときに、やはり大切にしたのが、営業マンのモチベーションでした。

「こころを動かす」というタイトルには、当然消費者のこころも入っていますが、同等のレベルで実際に販売の現場にある人たちのこころも重要視しているのです。

よく「自分軸が分かると実際に結果が出るのはなぜですか?」と聞かれますが、その答えはもう明らかでしょう。

自分の売りたい相手、売りたい価値、それを売る理由が見えてくると売れそうな気がしてくる。そうなると、モチベーションが上がるからなのです。

なので「自分軸はどこまで掘り下げればいいのか」という質問にも簡単に答えが出ます。それは、モチベーションが上がるまでです。

このときにキーになるのが、「なぜ」を掘り下げること。そのことが今回の実例からお分かりいただければ幸いです。

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