オルタナティブ・ブログ > 「走れ!プロジェクトマネージャー!」 >

スマートデバイス導入プロ集団のイシン社長です。仕事に関係ない話題も多いです。

誰が「工数」を見積もることができるのか

»

「工数」あまり好きな言葉ではありませんが、どんな仕事にも工数は存在します。たとえ「仕入れ販売」だったとしても、人の手を介する業務は、すべて工数が存在するわけですね。

プロジェクトマネジメントのPMBOKがIT業界で大きく取り入れられ始めた2000年初頭、理論的には工数を見積もれるけれど、それは正しいのか、ということが議論された記憶があります。

それは、どういうことか。

もともとプロジェクトマネジメントをしっかりやっていたのは、建築や土木の業界です。たとえば建築の場合、目に見える部材があるわけです。どういう建築物には、どのような鉄骨が何本必要、それらを組み上げるためのボルトやビスがどのくらい必要という感じです。

そして、それらを組み上げるための工数が算出され、また進捗も目に見えてわかります。部材が半分減ったら、半分出来上がった。単純化するとこういうことですね。

しかし、IT業界、特にソフトウェアの場合、工数も進捗もパソコンの中にあります。仕事が早い人と遅い人、正確な人とミスが多い人。どういうメンバーが集められるかによって、工数は大きく変わりますし、かといって各自で見積もるとなると、バッファーを大きく取る人と、全く取らない人で大きな差が出てしまいかねません。

日経XTECHにこんな記事がありました。

見積もるのは誰?」2006年の記事です。

プロジェクト・マネージャが最終責任(Accountability)を負うにしても,見積もりの作業はできるだけメンバーに任せるべきでしょう。

その理由は2つ書かれていますが、2つ目が気になります。

二つ目は,育成の観点です。新人では無理でしょうが,若い人に見積もりの一部を任せていくのは大変よいことです。

うーん、当時はそれで良かったのかもしれませんが、今はちょっと違うような。

そして同じく日経XTECHの2018年には、こんな記事があります。

4年前と変わったか?プロジェクト成功率の実態

ITベンダーに、「あなたが関わっている案件で、採用している見積もり手法はどれか」と質問し、複数回答で答えてもらった。最も多かったのは「事例類推法」。これは、過去に手掛けた類似案件の実績データを参考にして見積もる手法で、回答比率は64%である。「担当者個人による勘・経験」も多く、58%を占める。見積もり業務の属人化が進んでいるのではないか、と心配になる。

事例類推法は、GITHUBなどから他人が作成したものを持ってくるのも含むのだと思います。そして、問題は担当者個人による勘と経験。これも、人によって大きく違いますよね。

noteに、はまあさんという方がこんなことを書かれています。

人類がソフトウェアの工数を正確に見積もるのは、もはや不可能である

タイトルが文内を要約していますが、不可能だからやらない、と仰っているわけではありません。ただ、難しいことは事実です。また、さらに正しい進捗を把握することも容易ではありません。

リーダー「Aさん、いまの進捗はどのくらいですか?」
Aさん「いまは70%くらいですね。あと30%ほどです」

これは本当でしょうか。あるいは、バグ率はどの程度なのか。手戻りはないのか。僕なら、いろいろと気になってしまいます。Aさんは嘘をついているわけではありませんが、事実かどうかはわからない、ということです。

誰が工数を見積もるのか。誰ならできるのか。

そして、誰が正しい進捗を把握できるのか。IT業界において、ある意味で永遠の課題なのかも。

Comment(0)