いまなぜ、「コトづくり」か? 〜「個人の変化」を考える②〜
いまなぜ、「コトづくり」なのか?このブログでは、「コトづくり」が必要とされる背景について「企業」「個人」「社会」の変化から考えています(いまなぜ、「コトづくり」か? 〜「企業」「個人」「社会」の変化から考えてみる〜)。
前回のブログ(個人の変化①)では、生活者起点の発想を実現する「デザイン思考」について紹介しました。ちょっと本業の事業計画と重なって一週間空いてしまいましたが(笑)、今回は、個人の変化に見られる「2つのシフト」について考察してみたいと思います。
- 消費動向の変化 〜スペンドシフト〜
スペンドシフトとは、消費者行動の研究家であるジョン・ガーズマ氏が提唱した考え方で消費のパラダイムがシフトしているという意味。
アメリカでは、未曾有の経済危機を契機に消費者の行動に変化が出ているという。例えば、自分の属する地域やコミュニティーをより意識し、地域を潤し、人との絆を深めることに価値観を置いた消費行動に変化しているという。
スペンドシフトは、人々に様々な変化をもたらした。人々は自分を飾るよりも自分を強く賢くするためにお金を使うようになったという。そして希少な「購買力」を「投票権」のように行使して、社会に希望をもたらし、人の絆を強めるようなモノやサービスを支援することも覚えた。
ここには、「宣伝に踊らされてお金を落とす」移り気で受身のかつての消費者ではなく、「自分の意思で目的をもって対価を払う」能動的で思慮深い新しい消費者の姿が浮かび上がってくる。これは、アメリカ固有の話ではなく、最近の日本の消費者にも当てはまる部分が多いのではないだろうか?
「自分を飾るよりも自分を賢くするためにお金を使う」消費者は、モノをただ単に消費するだけでなく、将来の夢の実現のために自分への投資をすることを優先する。
「ただ安く買うよりも地域が潤うようにお金を使う」「モノを手に入れるよりも絆を強めるためにお金を使う」ように個人の満足から社会的な関係性の構築を重視する消費者像がイメージされる。
最近の購買活動では、友達や知人の意見を検索エンジンの結果よりも尊重するという調査結果があるが、「有名企業でなくても信頼できる企業から買う」という現象もなるほど納得できる。
そして、「消費するだけでなく自ら創造する人になる」。これは、「企業の変化」を考える①で紹介したメイカームーブメントにも通じる発想だ。
- 働き方の変化 〜ワークシフト〜
働き方の変化として、ワークシフトが注目されています。生活者は、「お金」と「消費」に最大の価値を置く発想から、家庭や趣味、社会貢献など多様な選択肢の中で「情熱を傾けられる経験」に価値を置く発想へ転換してきていると言われています。
では、『ワーク・シフト』の著者リンダ・グラットン教授が説く、これからの働き方「3つのシフト」とは、いかなるものでしょうか。
- 「ゼネラリストから連続スペシャリストへ」
- 「孤独な競争からみんなでイノベーションへ」
- 「金儲けと消費から価値ある経験の追求へ」
広く浅い知識しか持ってない「なんでも屋」の最大のライバルは、ウィキペディアやグーグルだという。なるほどスマホ片手に検索エンジンがあれば大抵のことは調べがつく。そして未来で成功するには、「専門技能の連続的習得」が求められるという。これからニーズが高まりそうな職種を選び、高度な専門知識と技能を身につけ、その後もほかの分野に脱皮したりすることを繰り返さなくてはならない。生涯勉強というワケだ。同時に、自分の能力を取引相手に納得させる「セルフマーケティング」も重要になる。これは、自らメディアとして発信していくことにもつながる。
「孤独な競争からみんなでイノベーションへ」とは、未来ではイノベーションの重要性について説く。そのためには、多くの人と結びつくことが必要だという。カギになるのは、オンラインで築かれる世界規模のコミュニティを指す「ビッグアイデア・クラウド」、同じ志を持つ仲間を意味する「ポッセ」、そして情緒面で安らぎを得るための「自己再生のコミュニティ」。この3 種の人的ネットワークが、創造性を発揮する源となるという。
「金儲けと消費から価値ある経験の追求へ」とは、所得を増やし、モノを消費するために働く──こうした仕事の世界のかつての常識がもはや機能しなくなっているという。これは、スペンドシフトの考え方にも極めて近い。先進国の多くの人は、所得がこれ以上増えても幸福感は高まらない。働くことで得られる充実した経験こそが、幸福感の牽引役になるという。時間とエネルギーを仕事に吸い取られる人生ではなく、もっとやりがいを味わえて、バランスのとれた働き方に転換しようと提言する。
「食えるだけの仕事」から「意味を感じる仕事」へ、「忙しいだけの仕事」から「価値ある経験としての仕事」へ、勝負に「勝つための仕事」から「ともに生きるための仕事」へ。
なるほど、高い志を持って仕事や働き方を選べば、未来は自分で変えられるかもしれない。
少し、勇気が湧いて来た。
(つづく)