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いまなぜ、「コトづくり」か? 〜「個人の変化」を考える①〜

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 いまなぜ、「コトづくり」なのか?このブログでは、「コトづくり」が必要とされる背景について「企業」「個人」「社会」の変化から考えることを提言しました(いまなぜ、「コトづくり」か? 〜「企業」「個人」「社会」の変化から考えてみる〜)。

 過去2回のブログ(「企業の変化①」「企業の変化②」)では、「モノのコモディティ化」「モノづくりの新しい潮流」「新しいビジネスモデルの出現」「共創(コ・クリエーション)」「クラウドソーシング」について紹介しましたが、今回は「個人の変化」について、まずは人、すなわち生活者起点の発想を実現する「デザイン思考」について詳しく考察したいと思います。

 デザイン思考を最初に提唱したのはピーター・ロウというハーバード大学の建築研究家だと言われています。また、最近では米国・パルアルトにあるデザイン・コンサルティング会社、IDEO(アイ・ディ・オ)の長年の努力もあり、認知度が上がってきました。以下では、

 デザイン思考は、頭の中で処理される思考プロセスにとどまらず、さまざまな人や場所、モノやサービスとの相互作用など、人を中心とした具体的なプロセスを通じてダイナミックに知を形成する手法です。野中郁次郎先生、紺野登先生の共著である『知識創造経営のプリンシプル』を参考にわかりやすく紐解いてみたいと思います。

 日本では、”デザイン”というと「設計」「意匠(モノや文字等のカタチ)」といった表層的なことのように捉えられがちですが、本来はある目的やコンセプトの下で必要とあらば既存のものを否定し、試行錯誤を繰り返しながらイノベーションを創造することが本質のようです。これは、語源であるラテン語の”designare”に「既存の否定」という意味が含まれていることからも明らかです。

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 デザイン思考の過程は、「概念空間」で頭の中で分析するだけでなく、「実践の現場」において、身体との関わり合いの中で技術やハード、ソフト、サービス、ビジネスなどの具体的な人工物が徐々に関係づけられ、綜合されていくものです。技術が社会(都市生活や日常生活)の中に融合されていく知識デザインのプロセスとも言えます。

 知識デザインはまず「現場観察」を通じて直観的に仮説推論します。具体的には、顧客の現場から体験的に概念を見出す作業であり、エスノグラフィーリサーチ(文化人類学的手法)などの社会学的な方法を用いることができます。既存の市場を形成している大多数の顧客(マジョリティ)を見るのではなく、まだ見えない、いわば正規分布のボリュームゾーンでなく、両端にあるバラツキに目を付ける必要があると言われています。例えば、現在の製品やサービスに不満足な層、問題を感じている層、あるいは次の時代の市場の一部をなすような、ユニークな顧客層を仮定して、そこに観察の現場を求めていく必要があります。机上の分析から新たな価値の発見は難しいと言われています。

 次に、現場の視点から見出された仮説を演繹的な検証をして「概念化」を行います。これはしばしばグラフィックに視覚的に図式であらわされます。そこに技術や他の知識資産を関係づけていきます。これはまさにコトの中にモノの知を埋め込んでいくアプローチとも言えます。ここでのデザインの役割はモノづくりではなく、コトの中に技術を入れ込む「経験デザイン(experience design)」、つまり顧客の経験を形成すべく技術やハードウエア、ソフトウエア、サービスを融合することを指します。

 最後に「モデル形成」は綜合された概念をもとに、再び顧客の現場で概念を具現化して実践的なフィードバックを得る過程です。それには「プロトタイピング」の手法が用いられます。プロトタイピングは、簡単に言うと製品やサービスの試作や仮のモデルですが、すべてを作りこんでしまうものではありません。大まかな概要を作成し、顧客からのフィードバックを得ながら、徐々に価値を実現する方法です。同時にそのことによって早期に問題を明らかにすることができます(帰納的作業)。

 このようなアプローチは消費者製品やサービスなど、領域を問わず重要です。実は、プロトタイピングはソフトウエア開発手法として用いられてきたものが、デザインの領域に転用されたものであることは良く知られています。

 昨今デザインが注目されるのは、サービスや行為や経験を創出するという、あらたな役割が求められるようになってきた点にあります。これは、「経験デザイン」といわれますが、「経験デザイン」にはいくつかの領域があると言われています。情報とのかかわり、人的サービス、あるいはモノとの関わり合いなどです。

 例えば、「ユーザがウェブサイトからスムーズな知識を得て最適な購買を決定する」といったのも、経験デザインの領域です。あるいは、「病院で患者がストレスのない高質な治療経験を得られるようにする」、といった心理的領域もあります。また、「電気自動車のユーザがどのような「移動体験」をするのかを、ハード、ソフト、情報を含めてデザインする」、といった領域も期待されています。

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 スターバックスが提供しているのは、単なるコーヒーというコモディティ化されたモノではなく、「人々にとっての"サードプレイス"」だと言われています。最近では、住宅街に実験店もオープンしているようです。

  BMWは、「究極のドライビング体験」を提供する企業であり、「駆けぬける歓び」をスローガンにしています。

  ナイキでは、先頃発表した「Nike+ FuelBand SE」をはじめとした、Nike+ プラットフォームで人々の全ての活動を記録して「消費者に最高のエクスペリエンスを、すべてのレベルのアスリートにモチベーションと刺激を提供します。」と宣言しています。

 20世紀に比べてデザインの対象が「総体的なユーザの行為や経験」となり、モノやサービスはその媒体として位置づけられるようになりました。これを「コトの中にモノを埋め込む」と表現します。これがまさに「経験デザイン」、あるいは「経験価値デザイン」とも呼ばれる方法論だと言われています。

「デザイン思考」は、これからの「コトづくり」ビジネスを考える上でとても重要な考え方ではないでしょうか?

(つづく)

 

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