いまなぜ、「コトづくり」か? 〜「企業の変化」を考える①〜
いまなぜ、「コトづくり」なのか?前回、このブログでは、「コトづくり」が必要とされる背景について「企業」「個人」「社会」の変化から考えています。
今回は、その中でも「企業の変化」の中から「モノのコモディティ化」「モノづくりの新しい潮流」「新しいビジネスモデルの出現」の3つについて最近のトレンドを踏まえて詳しく考察したいと思います。
- モノのコモディティ化
企業を取り巻く変化のうち、モノのコモディティ化は、近年最も悩ましい問題ではないでしょうか?品質や機能といったモノやサービスの単体の”交換価値”ではもはや差別化は難しく、モノやサービス全体の”使用価値・経験価値”に人々の関心が高まっているからです。そして、多少高くても信頼できるお気に入りの企業の製品(モノ)やサービスを使い続けたいといった変化が出て来ています。
従来のモノやサービスの単体としての考え方である”グッズ・ドミナント・ロジック”に対して、この”サービス・ドミナント・ロジック”の考え方は、モノのコモディティ化に対抗する企業の考え方としてコトづくりの実現に必要な視点だと考えます。
- モノづくりの新しい潮流
”メイカームーブメント”をご存知でしょうか?大手家電量販店の店頭で3Dプリンターのデモが行われるなど社会現象になりつつあります。『MAKERS』の著者クリス・アンダーソンは、ものづくりは特定の企業や職人のものではなくなり、世界を大きく変えるだろうと指摘しています。これまで「ものづくり大国」を支えてきた日本の製造業は、よりオープンに社内外とつながりながらアイデアを形にするための変化や柔軟性が求められそうです。この”メイカームーブメント”には大きく3つのカテゴリに分かれると考えています。
まず、デジタルファブリケーション(コンピューター制御によるものづくり)とは、レーザーカッターやCNCマシン、3Dプリンタなどのコンピュータと接続されたデジタル工作機械によって、3DCGなどのデジタルデータを木材、アクリルなどの様々な素材から切り出し、成形する技術の総称です。
最近話題のパーソナルファブリケーション(個人用工作機械によるものづくり)は、コンピュータやネットワークを取入れた、個人によるものづくりを指します。デジタルファブリケーションが主に技術を指すのに対して、こちらは「ひとりで」「誰でも」といった文脈で語られるときに用いられます。
そしてソーシャルファブリケーションは、インターネットでのつながりや、リアルな人のつながりがものづくりに展開し、価値が他者へもたらされることを指します。「DIY(Do It Yourself)」ならぬ「DIWO(Do It With Others)」の精神の延長として、慶応大学の田中浩也さんやファブラボ鎌倉の渡辺ゆうかさんが提唱しています。
「21世紀の産業革命」と呼ばれるこの”メイカームーブメント”は、3Dプリンターなど個人での利用であるパーソナルファブリケーションが注目を集めがちですが、個人や企業を巻き込んだソーシャルファブリケーションこそがこれからの本流だと考えます。
- 新しいビジネスモデルの出現
モノのコモディティ化の流れに対応して様々な新しいビジネスモデルが企業では考案されています。”フリーミアム(Freemium)”とは、「フリー(無料)」+「プレミアム(割増料金)」のことであり、基本的なサービスや製品を無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能について料金を課金する仕組みのビジネスモデルです。もともとはベンチャー・キャピタリストのフレッド・ウィルソンが創った言葉です。
例えば、「試供品を使った従来のビジネスモデル」は、5%を無料(フリー)で提供して95%を買ってもらうのに対し、「フリーミアムを使った新しいビジネスモデル」では、95%を無料(フリー)で提供して5%の人にプレミアム版を買ってもらうというもの。なぜ、そのようなモデルが成立するかと言うと以下のような仕組みが可能になったからです。
- デジタルであれば大量に複製して配布する際のコストがほぼゼロになる。
- そのため無料版を配布して最大可能数の潜在的顧客にリーチできる。
- そのなかの数%の顧客が有料版に移行すれば、分母が大きいためにビジネスが成立。
身近な例は、「コンピュータ同士の通話は無料、コンピュータと電話の通話は有料(スカイプ)」や「画像共有サービスは無料、追加の保存容量は有料(フリッカー)」など、人々にモノやサービスの”利用体験”を無料で経験させてヘビーユーザからは、利用料をいただくというモデルです。
次回は、「企業の変化」の2回目として「共創(コ・クリエーション)」「クラウドソーシング」について考察してみたいと思います。
(つづく)