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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

OJT担当になることが「誇らしい」と思えるためには?

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昨日(2/20水)は、勤務先で主宰している「OJT茶話会」というコミュニティ活動の会合日でした。10社ほどの人事、人材開発のご担当者が集まるこの会。2011年に発足し、昨日で6回目です。

皆様、新卒、キャリア採用者、あるいは、異動者、管理職などの「OJT」を制度化したり、支援したりする立場にある方ばかり。毎回1-2社の自社事例を紹介していただき、それについて、メンバからの質疑応答も活発ですし、私から「この事例のポイントはここ」「この事例での肝となるのはここ」などと解説していきます。それを受けて、数十分の対話時間を設けて、みなさんで自由にディスカッション。

答えを出そうという試みではないので、対話を通じて頭の中を整理したり、新しい情報を得たり、他者にアドバイスし、他者からアドバイスを受けて、何かを持ち帰る、というワークショップ型で進行です。(すでに、A社の試みを真似してみたB社で成果が出た、といったことはこの2年あちこちで見られているのです。業界と企業を超えた「智恵の共有」が出来てきています)

この10年、企業は、OJTを「制度化」して、たいていの場合は、1対1で専任の育成担当者をアサインして、1年から3年くらい(新卒者の場合)成長支援をしていく仕組みを整えていますが、昨日出た話で、興味深い問いがありました。

「OJT担当者に任命されることは、”誇らしいこと”なんだろうか? ”めんどくさいこと”なんだろうか?」

「誇らしい」とすれば、「若手の成長支援ができる人と見なされて任命された」という自負だったり、「OJT担当を経験することが幹部社員への登竜門」という位置づけだと社内で認知されていたり(←外発的動機づけ)、あるいは、個人的に「後輩指導をしてみたい!」とずっと興味関心を持っていた(←この場合は、完全に内発的に動機づけられているケースですね)ということかな、と思います。

一方、「めんどくさい」と思うとすれば、「日常業務もあるのに、その上、他者の教育、指導もするの?業務量が増えるばかりじゃないの」とか「その割に別に評価されないんだよね、他者を育てても」と思ってしまうことにあるように思います。(いずれも外発的な要因によって、モチベーションが下がるというわけです)

でも、じゃあ、「手当」を出せばいいのか、というと、「他者の成長支援」に携わったから月額●円を給与に上乗せします、というのも、なんとなく違うような気がしなくもない。お金もらうから後輩を育てるの?と。

そんな話をしている中で、ある方がこうおっしゃいました。

「他者の成長支援をすることが、自分にとってもすごく成長につながり、メリットがたくさんあるんだとみんなが気づいてくれるようになるといいですよね」と。

そうなんですね。

確かに、自分の仕事をしているだけではなく、他者の成長に関わると手間はかかる、イライラすることもある。早く帰れないこともある。でも、他者の成長支援をしていく中で得られるものもたくさんある。お金ではない色々なメリット。

たとえば、

●説明がだんだん上手になってくる
●後輩に質問されて答えられなかったことを再度勉強し直す
●自分と違う誰かと密に関わるためには、忍耐力とかストレス耐性も高める必要が出てくる
●上司や周囲の人をうまく巻き込まないと負荷を軽くできないので、他者巻き込み力も高まる
●相手が成長してくれたら、自分の仕事をゆだねられるので、自分はもっと新しいことやさらに難しいことに挑戦する機会が得られる

など、教え育てている側が得られることはたくさんあるんです。

そこを実感できたら、「OJT担当者に任命された」=「うわーい、うれしい」(大変だけど、うれしい」となるのではないかと思います。

実際、子育てを経験した「新米パパさん」「新米ママさん」が「子どもを育てながら、自分が成長させてもらっている感じがする!」と実感するという話はよく聴きます。

OJTもそれと同じことが言えるのですよね。

「新人の成長支援をしろと言われた、あーメンドウだなあー」ではなく、
「新人の成長支援に携われることにやった、やったー」と多くの人が思うようになるためには、「自分の成長実感」が必要なのかも知れません。

ただ、「あなたのためにもなるよ」と他者(上司など)に何度言われても、やはり、よくわからない。

担当してみて、1年も経たないうちに、「後輩指導」って実は楽しい、自分のためになるとようやく実感できるようになるものだと思うのです。

では、どうすれば「誇らしい」「楽しい」と最初から思えるようになるのか、というのは、まだまだ考えてみる必要のあるテーマではあります。

というわけで、ご参加くださった皆様、どうもありがとうございました。次回も楽しみにしていてくださいませ。また、何か新しい企画に挑戦してみますね♪

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