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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

長い話を打ち切ることができるようになる? ~イグ・ノーベル賞「発言できなくなる装置」受賞だそうで・・。

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人の話を聴くのは実に難しい。 だから、傾聴だとかActive Listening(アクティブ・リスニング)のトレーニングが若手から部課長までのどの研修の中でも盛り込まれているのだろう。

そういえば、先日のPMシンポジウムでセミナーを担当したとき、来場されていた52人の方に「話を聴くのが得意だという方はどのくらいいらっしゃいますか?」と手を挙げていただこうとしたところ、皆無だった。もちろん、手を挙げづらいだけで、心の中では「比較的出来ていると思う」と自負している方もおいでだっただろうが、少なくともその瞬間、堂々と手を高らかに挙げる方はいらっしゃらなかった。(他の問いかけでは手が挙がったものの)

聴くのが難しいというのは、色々な要因があると思われる。

たとえば、相手の話に興味がない。「ああ、つまらん。その話、全然関心持てないわー」というケース。

あるいは、自分が聴く状態にない。「今から出かけるところなんだけど、気持ちが焦っているんだ」なんて時。「体調がイマイチで人の話に真摯に向き合うことができない」など。

はたまた、相手そのものに興味がない。「苦手なタイプなのよねぇ」。

相手の話を聴きながら、「自分はどう応じようか」と考えながら聴くので話をきちんと聴けないという場合も多い。 たいてい、人は対話中、相手の話を頭の中で理解し、咀嚼しながら、それに対する自分の考え意見をまとめ始めるものだ。その時、聴くに100%は集中できなくなる。これ、悪いかといえば、そうでないと、「ぽんぽんぽんぽん」とキャッチボールにならないから、普段の会話ではこれでも成立するんだろう。

だって、100%完全に集中して聞いていて、その後、相手から、「ねぇ、淳子さんはどう思う?」と問われた時、「あ、ごめん、完全に集中して聴いていたんで、自分の考えはこれからまとめる」なんて返したら、「もぉー、考えながら聴いてよ。仕事なんだから、さくさくっとー」と怒らせちゃうかも知れない。 片方で話を聴きながら、片方で自分の考えをまとめている、というのは、だから、普段の”ふつう”の聴き方なのである。

とにかく、人の話というのは、聴こうという意識を相当強く持たないとなかなか完璧には聴けないものなのであ~る。

んでもって、はなから聴く気がない、という人もいる。自説だけを滔々と述べる。自分の話しかしない。相手の話の腰を折ってでも自分の話に持って行く。話し出したら止まらない。

たとえば、こんなケース。

例1) 顧客の話を聴くべき時なのに、自社製品や自分の考え、想いを延々と述べているコンサルタントや営業・・・。お客様の顔を見ていると、明らかに「もうその話はいいよ。飽きた」と書いてあるのに、気づかずに延々と楽しそうに話し続ける・・・。

例2) 部下との面談で、最初は「今日はあなたの考えや想いをいろいろ聴かせてね」とスタートしたはずなのに、3分もしない内に上司の考えや想いやあるいは説教くさい話が続き、30分の面談の27分は上司がしゃべっていた・・・。

例3) 会議で「はい、意見あります」と始めたしゃべりが、「どこが確信かわからない」ほど長い・・・。「言いたいコトを完結にまとめてください」とファシリテータが促しても、「はい、わかりました」と言った割に最初から巻き戻してより長くなる・・・。

例4) 講演やセミナーで、「はい!」と手を挙げて質問するのだが、質問に至るまでの前段が長すぎて、「いったい、何が訊きたいのかわからない」ほど話が続く・・・。「私は、普段、こういう風に考えて、こうやっていて、それはなぜかと言うと、あーでこーで、さきほどの話では、あなたはこう言ったけど、そうなると、こういうことが起こるように思って、実際にそれをしてみると、あーだこーだで、だから、すごく困惑するわけですが、たとえば、1年くらい前にも似たような経験があって・・・」←いつまでも「質問」にならない・・・。

と、お話しするの好きなんですなぁ、人間。

人に自分のことを語る、自分の想いをしゃべるのが苦手、好きじゃないと言う人ももちろんいるけれど、一般に、やはり、「自分のことを話す」のは好きだと思う。なによりもすっきりするし、満足できる。

ただ、それは時と場合によってで、上記の例のような場合、もうちょっと短くしゃべり、その場の他の誰かにも話すチャンスを与えるべきなのだろう、と思う。

さて、そこでイグ・ノーベル賞。受賞した「SpeechJammer」。邪魔とJamをかけた名称だそう。日本人の研究。

「自分の言葉が数秒遅れで耳に入ると、しゃべれなくなる」という現象を活用した「発言できなくさせる機械」ですって。

発想が面白い。

「必要は発明の母」というけれど、これ、まさに!

こういうの、好きです。

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そういえば、ある方が笑いながら愚痴っていた話。

「うちの上司は、まだ何も言っていないのに、”それは違う!”と全否定します」

「えー、まさか? 少しは話せるんですよね? 話の途中で言われるのでは?」

「いえ、違います。ホントにすぐ”それは違う!”です。たとえば、”あの、この件・・・”程度しか言えない内に、すかさず、”それは違う!”です。誰もがそう返されるので、発言しづらくて・・・」

スゴイなぁ・・・。





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