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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

新人が職場のあらゆる方にインタビューするという取組み。

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企業の「OJT制度」の支援が私の仕事の6割くらいを占めています。たぶん。

さまざまな企業で、OJTの取り組み例をお聞きします。 人事部や人材開発部といった、OJT制度の運営事務局側の努力や工夫もさることながら、現場で実際に若手育成にあたっている上司や先輩たちの取り組みには、本当にいつも「へぇ」「なるほど」「面白い!」がたくさんあって、感心してしまいます。

そんな一つ。「書いていいですよ」と許可も得ているので、「インタビュー」という事例をご紹介。

配属された新入社員に、「職場の上司、先輩」にインタビューさせている、というものです。

上司、先輩に自分でアポをとり、30分ほどの時間をいただき、あれこれと聴くんだそうです。聞いた内容は、新入社員が自分なりにまとめてファイリングしておく。だれかにシェアしたりしない。語ってくれた上司や先輩も新人相手だからこそ話したこともあるだろうし、シェアすることが目的ではないので、新人には自分だけで持っててもらう。

じゃあ、これ、何のためにするかというと、
●OJT担当者以外の多くの方との交流の機会をつくる
●大勢の、それぞれの仕事内容や考え・思いを生の声として聴く
●上司や先輩に新人を覚えてもらう
といったことが目的のようです。

上司と先輩を合わせると30人も職場にインタビュー相手がいるとなれば、1回30分ですし、そればかりしているわけでもないので、数か月かかるんだとか。

「新人のインタビュー相手を嫌がる方もいらっしゃるのでは?」と尋ねてみると、「上司と私(OJT担当者)とでみんながいる場所で、協力お願いします、と言って回りましたので、基本的には理解されています」と。上司を巻き込んで、OJT担当者が動いたわけですね。すばらしい。

数か月かかると、「もうインタビューされ終わった人」と「まだインタビューの順番が回ってこない人」が出てきます。

「まだ」の方が「もう」の方に質問するそうです。「ねぇ、ねぇ、どんなこと質問されるの?」。

これには、箝口令を敷いていて、当日までのお楽しみ、としているとのこと。

インタビューされる側は、わくわくどきどきして当日を迎え、終わってみれば、こんな感想を。

「いやぁー、普段使わない部分の脳をたくさん使ったよぉ」「楽しかった~」。

これですね、新人のOJTの一環で行っている「取組み」ではありますが、実は、インタビューされる側にもものすごく大きなメリットをもたらしていると思うのですね。

実際、インタビュー経験者は、その後のOJT支援が増すそうです。手伝いやすくなるから。

でも、メリットはそれだけではないはず。

「新人に自分の仕事について30分説明する、自分の思いを30分語る」

その30分で、語っている上司や先輩たちの心のうちにも大きな変化が起こっていると思うのです。

それは、

「原点回帰」と「モチベーションの再燃」です。

「オレ、もともとこういうこと考えていたんだったよな」
「私、この仕事、この職場のここが好きなのよね」

ときっと思い出すはず。人に自分の仕事を語ることで、絶対に、内省が働き、そうすると、よほどのことがない限り、「やる気」は上がるものだと思います。

だから、「楽しかったぁ~」「普段使わない脳を使ったぁ~」という感想をおっしゃる先輩たちが多いのでしょう。

新人を育てるための「インタビュー」ですが、インタビューされる側にとっても、大きな贈り物が得られるイベントだと思います。

ちなみに、インタビューでの質問内容は、多少先輩もレヴューしてあげるらしいですが、基本的には、新入社員が自ら考えるそうです。

仕事のこと以外に、土日何してますか?とか人生訓とか?座右の銘とか、おそらく、様々な質問を(それも、若者らしい斬新なものを)ぶつけているに違いありません。

いいな、いいな。

インタビュー、されたい。

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