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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

後輩を注意した後、「私もできてないんだけどね」という言い訳を付け加えない

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新入社員研修と、彼ら・彼女らを受け入れてから現場で指導する「OJTトレーナー」向けの研修が4月は入れ子になっており、若手を教えたり、「若手の育て方」を伝授したり、視線・視点が日々ころころ変わる日々を送っております。

OJTトレーナーの方たちというのは、配属された新入社員を短くてその年度の3月末日まで、長ければ、3年ほど面倒を見ます。「OJT」ですから、もちろん、「仕事をしながら(On Job)」です。

新入社員(というか、若手社員)のOJT指導に当たるOJTトレーナーは、企業によってどの年代が行うか異なっています。 リーダーやマネージャクラスが担当することもあれば、「2-3年目」の「ほんの少しだけ先輩」に当たらせることもあります。

時々、「叱れないんだよねぇ」という声を聴くのですが、その理由として、「自分もできていないから」「自分もたぶん、できていないと思うから」「自分も自信ないから」といったコメントが並びます。

あるいは、「叱る」けれど、最後に「ま、そういうオレもできていないんだけどね」(テヘっ^^;;)と笑ってごまかしてしまう、というケースも。

これ、先輩の取るべき態度として、あまりよろしくないのです。

「●●さん、遅刻してはダメだよ。相手を待たせたら、相手の時間までも無駄にすることになるからね」

と叱ったその後に、「ま、俺もたまに遅刻しちゃうんだけどね」・・・・。

これじゃあ、先輩の指導がまったく機能しなくなります。

「●●さん、敬語の使い方、間違っていたよ。尊敬語と謙譲語、きちんと勉強しておいてね。」

と注意したその後に、「ま、私も敬語、苦手だから、人のこと言えないんだけど」。

そんな風に「そういうオレ・私も出来ていないんだけど」という話法は、後輩にとって好ましいものではありません。「先輩もできていないのに、それを後輩である自分に言うのか」と思ってしまいますし、「できていないんだ(テヘっ)」と笑ってごまかしてしまう先輩は、はたしてリスペクトすべき存在なのだろうか、と疑問に思ったり。

先輩もまだ若手の部類に入り、自分だってできていないことはたくさんあるのは事実でしょう。「自分もちゃんとはできていないけれど、後輩を指導する、叱る必要がある場面」はだから多々発生します。

そういう場面でどうふるまえばよいのか、考えてみました。

まず、「わたしもできていないんだけどね」を言わないと決める。
とはいえ、
「わたしはできている!」と胸を張って言うほどの自信もない。
けれど、
「後輩には厳しく指導しなければならない」
のであれば、
「私もそうふるまうよう努力している」
とせめて言ってほしい。

「私も修行中の身で、間違わないよう気を付けている」
「私も失敗することはあるけれど、次に同じ失敗をしないように本を読んで確認している」などと言えばよいと思うのです。

「先輩だって完璧じゃない。でも、自分はいいけど、君はちゃんとしろ!という言い方ではなく、君はちゃんとしなさい。自分もちゃんとするよう努力・修行中だから」という言い方は、後輩のリスペクトの対象になるような気がします。少なくとも「できない」ことをごまかしてはいないから。努力中と示しているから。


よく「背中見せる」と言いますが、それは「出来上がった背中」「完璧な背中」でなければならないわけはなく、「努力中の背中」「いつも精進している背中」であってよいのです。

後輩は、先輩の「言葉」からも学びますが、「学ぶ姿勢」「学ぶ態度」からより多くを感じ取るものだと思います。

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