オルタナティブ・ブログ > 田中淳子の”大人の学び”支援隊! >

人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「信頼を蓄積する」という考え方~IKKOさんのインタビュー記事を読んで~

»

美容家のIKKOさんの記事が目に留まり、「いい話だなあ」と思ってツイートしたところ、若手ITエンジニアの方たちの目に留まったようで、何人かから反応がありました。

これ、です。
常識の違いが心を苦しめる!? ・・・だから!・・・

ご興味ある方は、上記記事をお読みいただきたいのですが、要約(意訳)すると、こんな感じ。

●たとえば、新人としてどこかの組織に入ると、「自分の常識」と「その組織の常識」の差に愕然とすることがある。けれど、「常識」は実はたくさんあるのだから、まずは、自分が合わせてみてはどうだろうか?

●そんなことしたら「自分らしく生きていけない」と思うかも知れないけれど、新人の内、仕事内では「自分らしさ」よりも「そこの仕事、やり方を学ぶこと」が先決だし、「自分らしく」は仕事以外で追求すればよいじゃないの

●今目の前にある「すべきこと」にまずは全力で取り組む。そうしたら、周囲からの評価も徐々に上がってくる。「今学べること」を精一杯学ぶことが大事なのよ

●そういう基本をきっちりしておくことが、中堅・ベテランになった時生きてくるから

・・・・。うん、かなりの意訳ですが。

3年くらい前、IKKOさんの講演を聴いたことあります。 下積み生活が長くて、非常に苦労したこと(先輩たちから「あなたは何をさせてもダメねぇ」と散々言われたそうです)、その中から、「自分の場所」を作るために地道に努力したことを淡々と話されていました。 自らの体験からにじみ出る言葉なので、とても重くて、会場がしーんとしたのを覚えています。

信頼の蓄積理論」というものがあります。ホランダーという社会心理学者が提唱したものです。


「新しく入った組織で、まずは、当たり前のことを当たり前にこなす。これによって、周囲から見た自分への”信頼”を少しずつ貯金できる。ある程度の貯金、つまり、”信頼”が貯まったら、今度はその貯金を使って、周囲に影響力を発揮することができる」といったことを指します。

たとえば、新任リーダー、新任マネージャが、いくら前職・前の組織で実績があっても、新組織に来ていきなり大ナタ(大改革)を打ち立てても、周囲が着いて来ない。それは、「えっとぉぉぉ、あなたは何者?」と周囲が思っているから。周囲との間に信頼という貯金がないから。

だから、まずは、その場でのやり方に従い、粛々と動いて見て、周囲からの信頼を蓄積できたら、いよいよリーダーシップを発揮する時機と捉え、動き始める。

新人も同じで、「新人ならではの感性」で「ここ、変ですよね」「これって、おかしい」と思うことがあるかも知れない。たとえば、「このルール、無駄ですよね」など。でも、その「ルール」で動いてみたこともないうちからそういう発言をしても、誰も聞く耳を持ってくれない。だから、まずは、そのルールに合わせて動いてみる。そうやって信頼の貯金を得たら、時機を見て「改善提案をする」。その方が、自分が思っているように動きやすい、周囲もそれを聞いてくれやすい、ということです。

IKKOさんのインタビュー記事を読み、この「信頼の蓄積理論」を思い出しました。

新参者(これは、何も、新卒新入社員に限らず、あらゆる場面で”新人”になることは50代でもあります。新任○○しかり、転職した人しかり)にとって大切なことは、何がなんでも「私らしくやる」「私のスタイルを通す」ことではなくて、まずは、粛々と「そこでのやり方」を学び、自分を合わせていくこと(「魂を売る」こととは別です)。

その過程で周囲からの「信頼」を蓄積し、自分の実力も蓄積し、たくさん貯まった「信頼」(と「実力」)という貯金を使える状況を自らの手で作り出す。

こういうプロセスを踏むことで、仕事を楽しいものにする、自分らしい仕事をする道が作れるのではないかと思います。


※ ホント、どーでもいいお知らせですが、IKKOさんと同じ誕生日です。(1歳違い。)他に、鈴木その子さんも同じ。
1月20日は「美のカリスマ」が生まれる特異日のようです(笑

************* 昨日活けたお花です。 春は色とりどり *************

__

Comment(2)