「こんなに元気になりましたっ!」と病棟を訪ねることは医療従事者の喜びにつながるのだそうです
今年に入ってから病院関係のお仕事をたくさんいただき、多くの医療従事者の方と接する機会に恵まれています。父が内科医だったこともあって、看護師さんにかわいがられたり、父の勤務先の医局で医師の会話をソファで聴いていたりと、子供のころから医療従事者はとても身近な存在でした。なので、医療従事者の方たちとのお仕事というのは、どこか懐かしい匂いがするような、「病院」という場に身を置いて、すごく落ち着くような気持ちになりました。(門前の小僧?)
さて、いろいろは会話をした中で、いくつか印象的だったことをつらつらと。
ランチタイムの雑談で、私が甥っ子の話をぽろっとしました。
「うちの妹は妊娠中にかなり長く入院しており、甥っ子は早めに生まれたので、N(NICU)に2か月くらい入っていたのですね。2500gくらいになってようやく退院したのですが、妹や甥っ子が入院中は、カンファレンスでもまっさきに話題になるほど、みなさんにご心配をいただいた妊産婦とBabyだったようです。退院後数か月して、Nでお世話になった看護師さんに息子を見せに行ったら、とても喜んでくださったそうなのですが、ただでさえ忙しいのに、退院した人間が職場にお邪魔したりして迷惑じゃないかしら、なんて少しは気になったりもして・・・。もちろん、事前に連絡してから、ですけれど。」
「うわーーーーーー、それ、もう、看護師にとっては一番一番うれしいことなんです。その後あの赤ちゃんがどうなったかしら、あの患者さん、どうなったかしら、とやっぱり気になります。見せに来て下さると、ああよかったと思えるし、本当にうれしいことなんですよ。ましてやそれほど心配していたお母さんと赤ちゃんだったりしたら、みんなが気になっていますから。」
「あ、そうなのですね。じゃあ、いいことをしたのですね」
「以前、500gの赤ちゃんがいて、かなりのケアをしたのですが、3歳くらいになって小児科にかかってきたことがあり、みんなで、”あの赤ちゃんが歩いている!””おしゃべりしている!”ってすごく盛り上がったことがあったんです。もう、涙出そうなくらい感激しちゃって」
「硬い言い方をすると、”仕事の結果、その後をきちんと見届けられる”という感じなのでしょうか。そういえば、私も、”その後がどうなった”を教えていただけると、やはり、とても嬉しいですもの」
「看護師の意識調査みたいなことをしたことがあって。何に喜びを感じるか、というようなものです。上司に褒められたとか上司に○○してもらった、というようなキーワードはあまり浮かんでこないんです(笑)。でも、「患者様に感謝された」「患者様が元気になって退院できた」・・・と、キーワードは、ほぼ「患者様」なんですよ。」
「なんとなくわかります。だれに向けて医療を提供しているかといえば、一番喜ばせたいのは、患者さんですもんね。」
「そうなんです。で、面白いですよ。病棟看護師の中には、”赤ちゃん連れてきましたー”とやたらと来客がある人がいるんです。”彼女、訪問者が多いね、際立って多いよね。関係構築の仕方に何か秘訣があるのだろうね”なんて話をするんです」
「へぇ、そうなんですか。でも、なんとなくわかります。私や家族が入院して、印象的だった看護師さんには、後日、報告に行きたい気持ちになりますが、それって、”心の交流”があったことが要因のような・・。面白いですね」
「面白いでしょう?」
・・・・・・ と、まあ、こんな会話を。
仕事の種類にもよりますが、「自分が提供した仕事」の「その後のその後」を自分の目で確認できないケース、案外多いかも知れません。
医療従事者のように、退院した「元患者」がその度どのような日常を送っているのか、ハッピーなのか、もそうです。
大工さんは素敵なおうちを建てたと思っているけれど、そこに住まう人がどのような生活をその家で営んでいるか、知ることはあまりないような気もします。
私のような人材育成支援業でも、研修を受講された方が、その後、学んだことをどう実務に生かし、成果を上げていらっしゃるのか、なかなか知ることはできません。(時々、メールで”あれをこんな場面で使ったら、すごくいい結果が出ましたよ”と報告してくださることがあります。これは、Nの看護師さんが赤ちゃんを見せに来てくれた!と喜ぶのと同じように、私たちも嬉しい)
こちらから「その後どうなりましたか?」と尋ねることができる場合もありますが、そこまでできないケースもあります。
サービスの受け手として、自分からサービス提供者にフィードバックを返していくことは、働く人たちのモチベーション維持に役立つでしょうし、よりよい仕事をするための一助になるのではないかと思うのです。
フィードバックする、というと、ついついクレームのほうが先に立ってしまう気がしますが、「満足した」「こんなに幸せになった」「こんな風によい変化があった」というような、ポジティブ・フィードバックも返していくことは、互いの仕事力を上げるために必要なことなんですね。