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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「モチベーション(やる気)の伝播モデル」ってスゴイと感動した

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私、JTBモチベーションズ社の「モチベーションUP研修」というクラスについて、Certified Instructor(認定講師)資格を持っておりまして、で、昨日(2/28)は、資格更新を兼ねたSupervision(スーパービジョン:講義の見直し、内容のブラッシュアップ、その他振り返り)を受検(?)に行ってきました。

指導してくださったのは、モチベーションコンサルタントの菊入みゆきさんと野本明日香さん。お名前出してよいと思われるのは、お二人ともあちこちのメディアでご活躍なさっているからです。(このエントリーの最後のほうにリンク示しますね)

ヒューマンスキル講師をしているので、普段は、受講者のプレゼンテーションをビデオ撮影したり、フィードバックしたりする機会は多いものの、同僚ではなく、他社の方からプレゼンについてフィードバックしていただくのはとても久しぶりなので、全身にいやーな汗をかきました。でも、こういう機会、とても大事だと実感。

自分が思い違いしている部分も是正できましたし、講義の段取りやちょっとした言葉づかい(言い回し)の工夫の仕方も教えていただけましたし、新鮮でした。

そして何よりも、「たまには受講者になる」という体験はとても大切。こんなに緊張するんだ!と改めて知った次第。

さて、そのスーパービジョンの中で、先方から新しいことを伝授していただく時間もあり、たくさんのモチベーションの最新研究などお教えいただいたのですが、中でもとても興味深かったのが、「モチベーションの伝播モデル」のお話です。

2010年にアメリカ教育心理学会にて発表された内容だそうですが、ごくごく簡単に結論を言うと「モチベーションは伝播する」ということなんですね。

で、実験が面白いのですが、これまた簡単に言うと、

●A群とB群にAとBという人がそれぞれ全く同じ授業をします。
●A群の学生に「A先生は無報酬のボランティアで来てくださって、もんのすごいモチベーションの高い方なんです」と紹介し、B群の学生に「B先生は忙しい中、高いギャラを支払って無理をお願いして来てもらってますよ」と紹介する
●授業の結果、A群の学生のほうが内発的に動機づけされることがわかった

というもの。

さらに、このA群の学生(内発的に動機づけられている)が、別の学生にまた指導をさせるようにすると、A群の学生に教えられた別の学生もまたまた内発的に動機付けされる、という結果が出たそうです。

で、この時、「別の学生」は、A群の学生をどう評価したかというと、教えてくれるA群の学生は、指導者として「内発的に動機づけられている」と”推測”するだけなんですって。

「ああ、僕を指導してくれている人は、とてもやる気があるんだなあ」と思い込むことで、自分も動機づけされちゃうなそうです。ここ、面白いポイントですよね。

A群の学生が指導する立場になったとき、「指導が楽しい」と思うことと、学び手(別の学生)の自律性を促すような指導方法をとることによって、そう推測できるんだそうです。

・・・・ああ、簡単に言うと、と言う割に長くなりました。

この話はいろいろなところで応用できますね。

たとえば、私たち講師は、「やる気満々な状態」で受講者と対峙することで、受講者には、「やる気満々」だと”推測”されて、受講者もやる気が高まる(まあ、これは想像しやすい話です)

講師を紹介する人事部の方などが発するメッセージも大事だということもわかります。

「忙しい中無理を言って来てもらった、普段はなかなか講義してもらえない有名人なんです」的紹介をたまに耳にすることがありますが(私のことではありませんよ、一般的にセミナーなどで)、そういう紹介よりも、「今日の講師は、この日をとても楽しみに来てくれているんです」という一言のほうがよほど効くということですね。

それから、職場でも上司がやる気を持って部下指導にあたっているか、OJT担当者が「仕事だから仕方ない」と内心思いつつ後輩と接したりせず、「楽しいなあ」と思って後輩に仕事を教えているか、なんてことにも通じるこだと思います。


そういえば、「この先生は、日本史(例)が好きなんだろうなあ、だって、楽しそうに授業する、もん」と思えた課目は好きだったなあー、などとはるか昔まで思い出しました。

お二人のコラムも面白いし、ためになるので、ぜひアクセスしてみてください。

●菊入みゆきさん
「日経情報ストラテジー」にも連載されていますが、たとえば、こういうサイトにも。http://exec.busipla.net/column/jtbm

●野本明日香さん
「ITProサイト」などで連載されています。「日経SYSTEMS」にも寄稿されていました。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070710/277187/

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