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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「着ぐるみ」メソッド

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もう10年以上前から提唱している「着ぐるみ」メソッドというものがあります。

ストレスが強くかかる状況への対処法としては、かなりおススメです。

仕事していると、非常に厳しいことを言われたり、場合によっては、相手の勘違いにより罵倒されたり、すんごくキツイ言葉を投げかけられたりすることがあります。(ない、という方もおいでかも知れませんが、私はあります。)

それを全身全霊で受け止めてしまい、それが金曜だったりすると、土曜も日曜もそのことが頭から離れず、気持ちが沈んだり、食欲が減退したり、口をついて出てくるのは、否定的なセリフだったり、はたまた、ただのため息だったり。

そんな状態で日曜夜6時半(少なくとも関東エリア)を迎えたならば、「サザエさん症候群」になるのも間違いなし。

月曜の朝も悶々と・・・。なんて、一つの出来事で心身疲れ切っちゃうこと、ありますよね。

この時登場するのが「着ぐるみ」です。

たとえば、私は、いくつかの役割の内、最も時間を割くのが「講師」業です。なので、講師として研修を行う場合、「講師」に着ぐるみを着る、という気分になります。

もし仮にツライ言葉をかけられたり、厳しいことを言われたりしても、それは、「講師」という「着ぐるみ」を着た私が言われたのであって、反省すべき点は反省し、次に生かせることは学びとして整理し、そして、金曜日の夜、その「講師」という「着ぐるみ」を脱いで、帰宅するのです。

そうすると、土日にひどく引きずることななくなります。
(もちろん、これは、「着ぐるみ」を着ている”つもり”なので、どうしても心の片隅に痛みなどは残ることもありますが、それでも、「脱いだ!」と思うことが重要です。)

営業職でも同じこと。「営業」という着ぐるみを着る。顧客に無理難題を言われても、着ぐるみを脱いだらいったん忘れる。そうやってリセットする。

エンジニアでも同じこと。トラブルシューティングで出かけて行った先で2時間も立たされた、なんて話をたまに聞きますが、それは「エンジニア」という着ぐるみを着た自分が受けた言葉と捉える。トラブル解決後は、着ぐるみも脱いでしまう。

マネージャだって、さらに上司、あるいは、部下からまあ、実にいろいろなことを言われるでしょうが、それも「マネージャ」という着ぐるみを着ているつもりで対応したら、疲弊しすぎることはないはず。

とにかく、「着ぐるみを着る」「着ぐるみを脱ぐ」の繰り返し。

そうやって、スイッチの切り替えをしていきます。

こういうことを考えたには訳があります。

20年近く前、新卒で入社した「講師」候補の後輩たちが、数年で戦線離脱することがたびたびありました。離職の理由はさまざまではあったものの、「ツライ」「アンケートに書かれている言葉が厳しい」など、やはり、お客さまからの指摘を、若い彼らはまともに全身全霊で受け止めてしまい、疲弊してしまう、という要因もありました。

その時、「ああ、これは、皆が、”講師”という着ぐるみを着るつもりで仕事したら、もうちょっと気持ちを平穏に保てるのではないか」と思ったものでした。

それで言い始めたのが「着ぐるみ」メソッドです。

これ、こういう風に勘違いされるとちと困ります。(↓勘違い例)


「へぇ、クレームいっても、着ぐるみが聴いているつもりでいるんだあ。あなたは反省しないんだあ。他人事に思うようにしているのね」と。

これは違うのですね。

自分でちゃんと受け止めるのです。ただし、心底、骨の髄まで、全人格で受け止めるのではなく、社会における「役割」として引き受けるという意味。

「善人のフリをする」とか「聞いているフリをする」というのとは全然違いますので、そこんとこ、よろしく、だかんね。(← リクエストにお応えして、「東海林さだお」風。)

ツライことがあったら、「着ぐるみ」メソッド。

おススメです。

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