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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

被害者意識はあるけれど、加害者意識はたいてい持ってないもので。

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「朝からテンション高すぎる」と注意されている、田中淳子です。はい、起きて2秒後に「オヤジギャグを言え」と言われても、すぐ反応できますよ! 

さて、

20-30代の方に、仕事において「やる気が高まる時」「やる気を損ねる時」を具体的に挙げていただくと、こんな例が出てきます。

【やる気が高まる時】
●仕事の目的や目指すものが明確に示された時
●「あなただからやってほしい」と言われた時
●期待されている!と実感できた時
●感謝された時
●話を最後まで聞いてもらえた時
●自分のアイディアや意見を採用してもらえた時

【やる気を損ねる時】(上記と対比させて書きます)
●「いいからやって」などと言われ、目的を示されない時
●「誰でもいいんだけど、やってくれるかな」などと言われた時
●「ありがとう」の一言もなく、「後で見とくから」と言われる時
●話の途中で、否定される時
●アイディアを出しても、聞く耳を持ってもらえず、最後は上司の考え通りに進むだけの時

実際には、この数倍も出てきますが、とにかく、「やる気出る」「やる気なくなる」というのは、たいてい、どこでも似たような例が挙がります。

これを全員で共有すると、「うん、あるある!」「わかる!」「そうだ、そうだ!」と共感の声があちこちから聞こえてきます。
私も「そりゃ、そーだよねー」と思います。

しかし、それにしても、ひとつひとつは、本当に「些細なこと」です。ちょっと気を付けたらいいこと、配慮があれば済むようなことが大半です。悪気があるかどうかすらわからない。上司は忙しいからそういうコミュニケーションになっているのかも知れないし、部下もそれで「やる気なくなったー」と言ってないで、自分から上司に訊きにいけば済むこともあるやに違いありません。


さて、これらは「モチベーションに関する被害者」として、こういう例を挙げているわけですが、立場を変えて考えてみるとどうでしょう?

同じことを、今度は、自分が他者にしていないか?

忙しい、ということを理由に、仕事の目的を丁寧に説明することなく、「とりあえずやって」(あとで事情は説明するから)とか、「ああ、誰でもいいからちょっと手伝ってー」(悪気ないけど、ついそういう言い方してしまった)とか、「ああ、もうわかった、わかった」(だって話が長いし、行ったり来たりするんだもん」とか、()内の気持ちなんかを抱えつつ、「」のセリフを口にしてしまう。

それによって、部下、後輩、同僚が「ああ、やる気なくなったー」「やる気低迷した」と思っていることだってあるはずです。

でも、こと「やる気」に関しては、「被害者意識」は持ちやすくても、「加害者意識」って持ちづらいんですよね。だって、自分が発する言葉、自分の行動には、ちゃんと「自分なりの理由がある」から。それに、「相手のやる気を損ねようと思って言うことなんてない」から。

気づかぬうちに、知らず知らずのうちに相手のやる気を損ねていることだって、きっとある。

なんせ、冒頭に挙げた一つ一つの例って、本当に些細なことだし。

・・・・

「加害者意識」を持ちづらい、からといって、何か言葉を発する度に、「これは、相手のやる気を損ねないか、ダイジョウブか?」と吟味しまくるのもとても疲れる。配慮はしないよりした方がいいけれど、どうしたって誤解されること、意図がうまく伝わらないこともある。こうなったら?ああなったら?とあらゆる可能性を考えてからしゃべるなんて出来ない。相手がどう受け取るかは、相手次第だし。

じゃ、どうしたらいいのだろう?

たぶん、一つの解決策は、あまりに単純な、あまりに当たり前のことなのだけれども、「日頃からちゃんと人間関係を築いておく」ことなんじゃないかと思うのです。よく話し、人となりも含め、よく知っておく、知ってもらう。

そうすると、「まあ、言い方は気に入らないが、悪気はないだろうから、いいや」と許される(というか、問題にならない)こともあるでしょうし、「もうちょっとやる気出るように言ってくださいよぉ」とジョーダンめかして相手に要求することだってできるでしょう。あるいは、「理解できないから、ちゃんと説明してほしい」と真面目に問いかけることだって可能になるはず。

メールなどの電子的なコミュニケーションがどうしても主流になりがちですが、やはり、Face to Faceで「対話」しておくことって、いつの時代も変わらずに大事、大事なんじゃないかと思っております。

「よく知っている相手のすること」と「よく知らない相手のすること」だったら、「よく知っている相手のすること」に対する許容度のほうがうんと高くなるものだから。

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