「私は大した仕事をしていませんから」―答えづらい一言へのおしゃれな返し方
仕事をしていると、「答えづらい一言」に出会う機会があります。
たとえば、昨日実際にあったお話。先日発売になった私の本を読んで下さった方から「いい本ですね」というお褒めの言葉をいただきました(ありがたいことです)。この本は、ノートに書きながらあたまとこころを整理する方法が書いてあるのですが、「あの書き方は本当にいいですね」とおっしゃるので、「仕事でイラッとしたとき、あたまの中でやってもいいのですが、実際に書いてみるといろんな発見があって面白いですよ」とお伝えしたところ、「私はそれほど大した仕事をしていないので、そんなにストレスがないんですよ~」とニコニコしながらおっしゃいました。
大変な仕事をされている方なので、ご謙遜や冗談の意味でおっしゃっているのは重々承知しているのですが、「私は大した仕事をしていませんから」のような一言への返し方って、意外と難しいんですよね。「はい、そうですね」と肯定すると、「大した仕事をしていない」を認めることになるし、「そんなことないですよ」だと、相手の言葉を否定することになるし。
仕方がないので、「あはははは~、またまたご謙遜を~」とごまかすのが、大人の対応といったところでしょうか。
「私は大した仕事をしていませんから」をはじめとして、
「私なんてまだまだ努力不足で」
「私はおじさん(おばさん)だからそんなこと無理ですよ」
「うちの会社なんてまだまだですよ」
のような謙遜や冗談めいた言葉をかけられたとき、あなたはどうお答えになりますか?できれば、おしゃれな一言を返したいものですね。
このようなシーンで役立つのが、「プロセスリフレーミング」です。
プロセスリフレーミングとは、「表面化している相手の言葉」とコミュニケーションするのではなく、「表面化していない、その言葉が発せられる相手の背景」とコミュニケーションをする方法です。
たとえば、簡単な例では、同僚が、眠そうな顔で「おはよう」と声をかけてきたとき、表面化している言葉とコミュニケーションすると「おはよう」になりますが、言葉の背景とコミュニケーションすると、「疲れていそうだね。大丈夫?たまには早く帰ったら?」になります。
プロセスリフレーミングを先ほどの例で使うなら、たとえば・・・
- 「私は大した仕事をしていませんから」 →
- 「大変な仕事をストレスに感じないほど、一生懸命取り組まれているんですね」
- 「大変な仕事をなさっているのに、お心遣いいただいてありがとうございます」
- 「私なんてまだまだ努力不足で」 →
- 「まだ努力不足とおっしゃるなんて、それほど高い理想をお持ちなのでしょうね」
- 「ご自身をもっと成長させたいと思われているのでしょうね」
- 「私はおじさん(おばさん)だからそんなこと無理ですよ」 →
- 「今まで、いろんなご苦労があったのでしょうね。今度勉強させてください」
- 「現場でご活躍なのに、誰がそんなひどいこと言ったんですか!」
- 「うちの会社なんてまだまだですよ」 →
- 「それだけ、社員のみなさんが成長しようとされているんですね」
- 「全社一丸となっている会社の方ほど、そうおっしゃいます」
などのようになるでしょう。
「あはははは~、またまたご謙遜を~」より、おしゃれな感じになるとともに、「その言葉が発せられる相手の背景」に思いをはせることで、相手の過去のご苦労や存在そのものとコミュニケーションすることになるので、信頼関係を築ける可能性が広がりますね。
ポイントがあるとしたら、「○○のときは、○○と言おう」のように言葉をそのまま記憶するのではなく、意識を「その言葉が発せられる相手の背景」 に向け、思いをはせることです。
ここまでお読みになって、ひょっとしたら、「なるほど、その意味は分かったけれど、そんな気が利いた言葉はなかなか出てこないよ」と思われているかもしれません。実際、そうだと思います。私もそうですから。
日常のトレーニングが、自然に言葉を生み出してくれます。
実は、そのトレーニングにとっても便利なのが、「ブログを書くこと」なんです。
その理由については、次回お話したいと思います。
追伸:こんなステキなコミュニケーションスキルを教えていただいた師匠には本当に感謝しています。