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通信業界特殊偵察部隊のモノゴトの見方、見え方、考え方

SOPA/PIPAの一連の動きはアメリカに対するカントリーリスクと考えてよいのだろうか

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例のSOPA/PIPAに絡んでWikipedia英語版は一時止まるわ、Twitpicは背景を黒くするわ、Googleは米国でロゴを隠すわ、なんだかんだと大騒ぎな訳です。それ自体をどう評価するのかというのは評価する人の立場立ち位置によって全然違うわけで、そういった構図自体は別の業界でも起きていたりするわけです。もっとも今回のSOPA/PIPA関係については情報を得るインフラに手を入れる話なので、ちょいと影響が大きいのは事実。

でも、冷静に考えなくてはいけないのは、これは米国内法に纏わる動きであるという事実。そして、その米国内法に基く何らかの動きが米国から全く離れたところの人にすら影響を与える事。もっとも、そういうコト自体、今に始まった話じゃないですけれど。

 

たとえば(通称)米国愛国者法とか

もちろんそれだけじゃないですが、米国の国内法に基いて非居住者に対して何かしらの影響力を及ぼすことが出来るケースというのが無くはないのは事実です。もちろんその制定の目的が純粋に国益に帰するとして作られる仕組みもあれば、ある業界を守るため、あるいは何かしらの権利者を守るためのモノなど多様なわけですが、どこまでやるかは別にして多くの国で同じような動きがあるといえばあるわけで、内容はともかく、そういう動き自体は別に目新しい話じゃない。

ただ、今回は著作権保護のために「海賊行為」をしている何かしらへの情報到達経路を絶つことを認めるとかなんとかかんとか、で議会はどうよとかホワイトハウスはどうよとか・・・ まぁ実際に法律として成立した段階ではないので物事は流動的ですが、少なくともそういう動きがあるわけです。

とりあえず米国内の話なので、太平洋を挟んだ日本からは静観するしかないわけですが。

 

インターネット上のサービスの国籍と米国という国に対するカントリーリスク

たとえば日常ネット上で使うサービスがどこの国の企業が提供しているのかというところを意識することはあまり無いわけです。でもそれぞれの提供主体はどこかの国に所在を持ち、基本的なところでその所在する国の法律に規制されているわけです。が、逆に言うと、それを他の国からネットワークを通じて使っていても自分の国の法律は殆ど手出しを出来ない事が実際にあるわけです。

でも、これはユーザーとしての立場の話。それが自分の使っているサービスの提供者が属する国の法律によってサービス自体に何かしら手が入るようになると、これは全然別の話です。そのアタリが本来今回のSOPA/PIPA関係の話には巻きついてるんですが、議論自体は米国内の話だからなのか、あるいは私の観測範囲が穴だらけだからキチンと理解できていないのか、どう理解されているのかが良くわからないんです。

ただ間違いないのは、海外のサービスを使っていると提供しているサービス主体の所在地の法律やら政策の影響を受ける事があるし、実はそういったサービスの多くが米国内の企業によって運営されているし、多くのユーザーがそこに巻きついてるという話があるというコトです。もちろん他の国の事業主体が提供しているサービスは一杯あります。米国だけが提供主体となる国ではない。でも、多くのサービスがそこで提供されているのは事実。で、そこでの政策や法規制が何らかの影響を与えるとすると・・・ これってカントリーリスクとして意識していても悪くは無いと思うんです。

 

かといってIT鎖国論を叫ぶ気はサラサラ無いんですけれど

国内にある事業主体が提供するサービスだけを使え系の、それこそ中国のような政策は支持しません。それは困る。体制上の問題から日本がそういう流れになることは基本的に無いとは思いますが、ならば逆に選択肢の幅の広さは実は裏に多くのリスクを背負っていて、それらの中には明らかにカントリーリスクと理解してよいものもある事だけは覚えておいて損はないと思うわけです。

たとえばURL短縮系サービスの大手どころが実はリビアのドメインだったので政変でどうなるんだと大騒ぎになったこともありましたし、ケータイ系サービス大手のカナダ企業のサービスを自国の公務員が利用するのはまかりならんと暴れた欧州の国があったりとかってのは比較的知られた話ですが、それ以外にも実は色々とあったりします。

選択肢が増えるというコト、それらが実は国境を平気で踏み越えている事っていうのを意識せずに使えるのが今のネットの世界。でも踏み越えている先は別の主義主張の体制なわけです。決して日本の中だけではない。そこは常に意識している必要があるかと思うんです。そして、それを踏まえつつ、SOPA/PIPAの流れがどうなるかを見ないと、多分なにか大きな流れを見誤ることになるんじゃないかと。

 

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