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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

2017年10大ニュース (10位~6位)

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e-Janネットワークスの10大ニュースを何にするか、先日の経営会議で話し合いました。今年も営業日が少なくなってきました。少しずつ発表していきましょう。


■第10位:代表電話やめました

会社には代表電話番号というものがあります。どの部署につないでいいかが分からないときにかける番号ですね。ところが、そこには連日多数の売り込み電話がかかっていました。

電話対応は社会人の素養。e-Janでも教育として、新人に担当してもらっていました。ところが、代表電話での対応を見ていると、しつこい売り込み電話への対応に四苦八苦していることもしばしば。これでは折角の新人さんのモチベーションまで下がってしまいます。
http://blogs.itmedia.co.jp/shiro/2017/08/post_256.html

e-Janでは各人がモチベーション高く仕事をすることにプライオリティを置いています。仕事として営業電話をひたすらかけさせる会社も多数あるわけです。そこのブラックなオーラがこちらに伝播して、電話を取り断り続ける人のモチベーションを下げてしまうリスクがあります。

悪い要因は排除するに限ります。

実際に外からの問い合わせに対しては、ウェブでの受付ができます。また、電話については、名刺やメールの署名の電話番号から、かかってきます。それなので、業務やいざというときの連絡には支障が無いです。

一方、旧来使っていた代表電話には「製品についてのお問い合わせ番号」を流すようにしました。それを聞いて売り込み電話を「製品についてのお問い合わせ番号」にかけてきたとしても大丈夫。電話を受けた人は、堂々とお断りができるという図になります。それ以来、平和です。Peace of Mindです。

そういえば、先日、代表電話をやめたことを、ある経営者さんに自慢したのです。すると彼からは、「うちは電話番号さえ載せていない」と、メールアドレスだけの名刺で逆自慢されてしまいました(笑)。電話自体の価値を改めて考え直す必要があるのかもしれませんね。


■第9位:e-Jan昼市、農業体験

私がよくお世話になっている個人タクシーの方がいらっしゃいます。その人の誘いに乗って、今年6月に埼玉の小川の方で無農薬有機農業の体験をしました。土いじりや農作業には、普段の仕事や遊びとは違う刺激があります。とても楽しかったのです。これはぜひ会社の皆にも体験してもらいたいと思いました。

http://blogs.itmedia.co.jp/shiro/2017/06/post_245.html

そこで、思い付きました。「そうか。この野菜を週に一度会社に送ってもらおう!そしてその野菜に社員に親しんでもらえば、次第に野菜作りを手伝い体験をしたくなるかも」と。そこで早速、農作業後の懇親の場で、野菜を送ってほしいと頼んでみたのです。翌木曜日から早速送ってもらいました。

どういう仕組みで野菜を分けるか、いろいろな議論があったのですが、結論としては、購入価格の半額で社員に買ってもらうということになりました。当初は1万円分の野菜で運営していましたが、人気が高く、遠慮がちにしか買えない人も多かったので、2万円分の野菜を送ってもらうことにしました。毎週木曜日のお昼12時半開催の「e-Jan昼市」はこのように始まったのです。

水曜日の夜行便で送られる野菜たちを木曜日の昼に、昼市として出します。この仕組みを立てつけしてくれたのは経企・総務グループの面々。そして、毎回準備と片づけもしてくれています。野菜を並べるだけでなく、そこに値札をつけたり、意外と大変な作業を手際よくしてくれています。

野菜を作って梱包して送ってくれている酒井さんたちにも大感謝です。野菜と一緒に送ってくる「さかいファーム通信」は、毎回とても楽しみにです。片手にお財布を持った人たちがわさわさと集まってきて、妙な緊張感の中、販売開始の合図を待ちます。私も木曜日は近所でお弁当を買ってきて、待機したりします(笑)。販売開始されると、あれよあれよという間に野菜たちが捕獲されていきます。

福利厚生にはいろいろありますが、無農薬有機野菜が普通の野菜より安く手に入り、さらには食べて体に良く、旬の野菜の知ることができるというものになったのです。秋には週末イベントで何人かで農作業のお手伝いにも。来年また行きましょう!


■第8位:開発体制の改造・強化

今年の始めには、新規にBusinessMessengerというものを開発していました。

ところが、BusinessMessengerの初期版が完成間近というところでした。断腸の思いで開発を打ち切りました。レッドオーシャンになる分野にあえて出ていく必要はないとのビジネス判断もありました。ただし、完成前で打ち切った理由には別なことがあります。問題は、チームワークを奨励している会社において、開発ではチームワーク精神が芽生えていないところにあったのです。

e-Janでは、TMC (Ten minutes conversation)という短いけど毎月やる個人面談を通じて、皆の「仕事健康状態」を把握しようとしています。今年の2月のことです。開発グループの面々との面接をしたときに、開発メンバーから異口同音に「チームワークなんてできていませんよ」と。その声を聞いてBusinessMessengerの開発を止めました。

開発では、サーバーやOS毎にクライアントアプリを開発する必要があります。それらがCACHATTOとBusinessMessengerでそれぞれリソースがアロケーションされて開発していました。でも、これではチームワークどころではないです。バラバラな職人たちの集まりでした。そもそもe-Janの中でも最も外国人比率が高いメンバーで構成されている部署です。一筋縄ではいきません。

そうでなくても、開発リソースは、コミットメントに押しつぶされる。ボトルネックがあちらこちらに発生する。開発が遅れに遅れる。これが慢性化している状態でした。現場で起きている細かい問題も放置されがちです。そんな状態でいいわけがありません。さらに市場は待ってくれません。ビジネスにはタイミングというものがあります。次なる飛躍どころが、このままでは窒息してしまいます。直すべきことは、開発の体制でした。そしてチームワークを発揮して助け合うような仕組みをいれなければなりません。

グループリーダーが各人とのコミュニケーションを重視したOne-on-oneを始め、そこに4月の新入社員が入ってきて、さらには7月にかけて組織の変更をしました。

年末時点で、月次報告会を見ていてわかるのは、開発におけるチームワークは、ちゃんと生まれ始めてきています。担当者間での勉強会、ペアプログラミング、様々なことが試みがなされています。こういう方向に向き始めれば大きく変化していくのは確実です。チームで仕事をするほど楽しいことはないからです。

コミュニケーションはクリエイティビティの源泉です。次なる飛躍にも期待できるようになってきています。


■第7位:ダイバーシティ進む

「どういったきっかけでダイバーシティを?」

一昨日の雑誌インタビューでも質問されました。e-Janでは、ダイバーシティというというか、多様性というか、多国籍性というか、ここ5年ほどでだいぶ進みました。

これは私の個人的な育ち方が根っこにあるのは間違いありません。私は子供のころから父の仕事で世界を転々と3年ごとぐらいに言葉も環境も変わる世界が体験できました。1960年代70年代の世界では「made in Japan」は「安かろう悪かろう」の時代。ようやく自動車などの工業製品が認められるようになっても、「日本人はエコノミックアニマルだ」というようなレッテルを貼られたりして、とかく誤解されやすい、嫌われやすい国民でした。そして子供ながらに自分がその国の代表でした。

当然のことながら、差別もされましたし、それを乗り越えたり。親友ができたり。乗り越えるなかで、異文化との共通点を見出すことに価値を感じるようになりました。反面、日本に戻ってくると、今度は異端児だとまたイジメにあったりもしました。そして、本能的に日本での一元的な価値観に危機的なものを感じるようになったのです。

多様性といっても、実際やるとなかなか大変です。ちょっとした生活習慣の違いが、例えばトイレのマナーひとつをとっても違います。でも、そのバリアを乗り越える価値を本能的に信じているからこそ、今の姿、さらなる多様性の姿を実現するのです。つまり、価値が出る以前に乗り越えるべきハードルがちょっと大きいのです。

e-Janが幸運だったことには、その順番がよかったことです。2005年のインド人エンジニアのKさんの入社が、うちにおける多様性の始まり。その後、2010年以降、新卒採用に苦労して、海外大学卒業生の採用をしたのが第二弾。そして、帰国子女や外国人の採用を進めたのが第三弾。同時に社内語学レッスンも開始。もうすぐ丸5年です。ちょっと出身地を並べてみました。日本、フィリピン、アメリカ、オーストラリア、台湾、中国、インド、ベネズエラ、トルコ、韓国、カナダ。

今度は、海外進出をしようというときにも、ハードルが低いです。オーストラリア人の社員がe-Janから派遣で留学したハーバードのエグゼクティブコース。そこでで知り合ったモルジブに住む元シスコでのITエンジニアのインド人同級生経営者と、中東やインドの顧客にダイレクトにアプローチを始めました。それもほんの今年です。もちろん、ビジネス的には大変さは変わりません。でも、組織のメンタリティとしてのバリアが低いのと、ポテンシャルがダントツに上がります。

海外にチャレンジするから、国内では得られないような製品開発のヒントもいただけるのです。そして、それらを着実に現実化すれば、日本に持ち帰えれば「今までにない発想だ、e-Jan!」との高評価がいただけています。こうやって、多様性のメリットは次第に出てきているのです。

きっとまだ、こんなものではないです。e-Janの一人一人がGlobal Citizenとしての立ち振る舞いを身に着けたときには、さらなるすごいことがやってくるでしょう。

ワクワクしませんか?


■第6位:【朝メール】の進化とコミュニケーションの深化

今年の3月までの【朝メール】は、正直なところ「根性」で書いていました。皆からのメールでの日報をあるプログラムで自動回収してひとまとめにし、それをエディターで一挙に成型しながらコメントするというものでした。エディターとして使っているWindowsのメモ帳も容量で苦しいくらいの分量。あるとき、Wordにそのテキストを張り付けてみたらA4 100ページを超えていました。

さすがに毎朝90人近くの人たちにコメントするのに旧方式では無理になりました。毎朝5時過ぎに作業を開始しても10時近くまでかかるように。まさに「根性」です。このことを個人的には数年前から嘆いていたのですが、対策に踏み切れずにいました。ついつい「頑張ればなんとかなる」精神で頑張ってしまっていたのです。

年初のことです。友人の社長から「助けてほしい」と、緊急で委託案件が欲しいとの依頼。「渡りに船」というのか、「必要なときに必要な人に現れる」というのか、私はついています。【朝メール】作成支援ツール、CrossComという社内システムを開発してもらうことにしたのです。

私が、なるべく皆の日報にコメントを書く習慣にしているのには、次の理由があります。それは、皆が日々やってくれていることを知り、感謝を伝えたり、ちょっかいコメントを出したり、あるいは、「観ているよ!」「応援しているよ!」という気持ちを伝えたり。子どもの頃、学校で先生が赤ペンで花マルやコメントくれたりしたのを覚えていますか?そして、それがとても嬉しかったことも。原理的にはそれと同じです。人は大人でも、花マルやコメントはきっと励みになるという仮説を持っているのです。

そこで、始めたのが【朝メール】です。日報にコメントを書く間にもらうエネルギーで、思いついたことをエッセーにして、さらに、会社としてのGood Newsや連絡事項をまとめてメールにして毎朝送るというものです。ここ数年、人数が増えて時間的にギブアップしそうになっていました。でも続けていました。今度の1月で丸14年もやっていることになります。馬鹿の一つ覚えですね(笑)。その作業のシステム化に、ついに今年踏み切ったのです。

CrossComは、皆の日報を書くウェブシステムにしました。そして、書かれた日報には、誰からでもコメントを加えられるようにしたのです。さらに、コメントには、知らせておきたい人に通知できるようにしたのですね。クロスにコミュニケーション、あるいはにコメントができるという意味でCrossCom。年初に開発に着手し、運用を始めたのが4月です。その後も次々機能改善をしています。今までにないものをゼロから創れることになりました。その結果は、社内のコミュニケーションの改善に大いにつながっています。

同時に今年は、Teamsというメッセージ機能と、Office 365というメール・スケジュールのクラウドを全社で導入しました。考えてみると、これらはすべて、社内コミュニケーションをより良くするためのツールです。それほどコミュニケーションが大切だということです。ところがそこまでしても、コミュニケーションは足りないのです。Face-to-faceも必要。

月に一度、今までは、私が各メンバーとTMC (Ten Minutes Communication)も実施し、そのFace-to-face部分を補ってきました。ところが、そちらも人数が増えると辛いです。自分で動ける時間がほとんどなくなってしまうほど、TMCにかなりの時間が取られるのです。一人15分として70人になると17.5時間。1日に8人が限界。スケジューリングも大変。また、1対1でのマンネリ化も気になっていました。

そこでTMCをモデルチェンジ。4人の取締役で分業してTMCを行う体制にしたのです。組み合わせとしては、4ヶ月に一度しか回ってきませんが、違う部署の取締役と直接話ができることは、今のところいい刺激になっているようです。TMCを実施する理由は、皆が活き活きと働けているかを確認するためです。実際にその機能は大切。開発体制の変更に踏み切ったのもTMCで得られた危機感からだというのは前述の通りです。

大人数でのコミュニケーションの深化。これは2017年の大きな出来事のひとつです。

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