アメリカで正攻法で大学教授になるには?
おはようございます。
手袋なしでスマホをいじっていると手がかじかみます。
それくらいの寒さです。
===ほぼ毎朝エッセー===
「大学教授って、どうやったらなれるのですか?」
先日、Burroughs教授との懇親の場で出した私の不躾な質問にしっかりと応えてもらいました。そして驚いたのが、一度教授になるとクビにできないそうです。いわゆる終身在職権があると。ユニークな考えが、政治的な圧力で曲げられないことを保証するための仕組みだそうです。
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バージニア大学にはMcIntire(マッキンタイア)校という、いわゆる経営学部があります。そして、そこには1年でマスターが取得できるコースがあります。
2年かけてでMBAを取得するDarden校との位置づけが微妙ですが、Darden校は卒業後の実ビジネス経験が前提である、本格的なビジネススクールであるのに対して、McIntire校は学部卒生がそのまま進める経営学大学院であるという位置づけです。
さて、縁あって、昨年よりMcIntire校のプログラムの一環としての「修了旅行」のグループ約25名を会社に招請しています。昨年の記録はこちらに↓。
http://blogs.itmedia.co.jp/shiro/2013/05/post-6bc9.html
この「修了旅行」日本を含む北アジアコースは、5月の末から、東京→京都→ソウル→北京→上海→香港と、各都市の卒業生をつてに、実ビジネスの見学を4週間に渡って行うというものです。通常は2名の教授とヘルパーとが同行しながら実施しています。先日はその教授がコースの調整にやってきて打ち合わせ、その後一献設けました。
ちょうどe-Janでは、海外活動をどのように充実させるかということを議論しながら試しているところなので、今回は学生さんたちを相手にケーススタディーで色々意見を交わすのも面白いのではないかということになりました。グローバリゼーションが起きていることの実態の一つとして。5月の最終週にはそのイベントがあるでしょう。
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さて、冒頭の質問にもどりましょう。
実際にアメリカで大学教授になるとしたらどうしたらいいのか?
まず、学部を卒業し、大学院に進みます。教授を目指すのであれば、さらにドクターコースに進みます。ドクターコースでは通常、2年間のクラス学修、1年間の試験、1-2年間の研究を経て、PHD、いわゆる博士号を取得します。
PHDを取得した瞬間が、教授への6年間タイマーのスタート。その6年後には「Tenure」という、大学教授としての終身在職権を取得している必要があるのです。それが取得できなかったらチャンスは終わりです。
アフタードクターの6年間は、研究の時期。アシスタントプロフェッサーとして授業なども持ちますが、研究:授業は8:2の比重だそうです。なぜならば、そこでは著名ジャーナルへの投稿が必要だからです。著名ジャーナルに4稿掲載されることがTenure取得の最低条件です。
一般的な投稿は60ページ程度の分量。一つ仕上げるのに1年半はかかるそうです。6年間ではなかなかタイトなので、PHD取得中にもペーパー掲載を目指す必要があるそうです。
ジャーナルへの掲載には、教授陣からなるジャーナルの編集者と評価者とがペーパーを評価して掲載を決定します。当然、評価者には著者が誰なのかという情報は隠されて渡されます。まずは、どの原稿を評価するかというフィルターにかけられて、それから評価者に手渡されます。
ちなみに、ScienceやNatureなどの科学系のジャーナルでは、9割のペーパーがレビューすらされないそうです。そして掲載はレビューされたものの1割。つまりペーパーを出しても掲載されるのは1%くらいだということです。Nature誌の編集者に「科学の歴史への冒涜」と返答された万能細胞の小保方さんへのコメントも、この評価の一環だったのすね。
Burroughs教授もその評価者をしているとのことです。1ペーパーに約1.5日はしっかりと時間をかけるとのこと。「書いた人は1年半かけて頑張ったものだから、しっかりと読みますよ」と。
出稿したペーパーの優秀性は、それが参考文献として引用された数を指標にしたインデックスがあるとのことです。Hファクターと呼びます。今はGoogle Scolorというサイトで調べることが一般的だそうです。
なお、所属大学によってTenure取得のための条件が異なります。バージニア大学では5稿だそうです。掲載ジャーナルのハードルも低くなるそうえす。6年間で厳しそうとなると、大学を変わることも良く行われるそうです。
著名なジャーナルでの掲載が4-5本発表がされた後に、8名の他大学のChaired Professorsの推薦が得られると、Tenureが獲得できます。これを取得すると晴れて教授です。なおTenureは終身在職権です。学問の公平性のために、教授はクビにできないのです。
教授になってからもさらにChaired Professorになるというチャレンジもあり、このために、様々なジャーナルでの編集者や評価者などでの活動も大切と。より教えることへの情熱もカウントされるようです。
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どこの世界も、長いこと一つのことに情熱を持ちながら成し遂げていくというもののようですね。刺激を受けます。