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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

Darden(MBA)の学長とゆっくり話していて気付いたこと

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おはようございます。

夜明けはどんどん遅くなってきています。
考えてみればあと6週間ほどで秋分の日です。
今朝の空をどうぞ。曇りがちですが涼しい朝です。

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一晩経って、今朝、この言葉が頭を離れません。
"It's like creating an institution!"

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週末からバージニア大学のDarden校(ダーデン、MBA:経営大学院)のDean(ディーン:学部長)、Robert Bruner(ロバート・ブルーナー)さんが来日しています。ブルーナーさんはもともとファイナンスの先生。Dardenの文化の一つに、ディーンは内部人材から出るのが望ましい、というものがあります。ブルーナー先生はこの春、ディーンとして一期四年の第二期目に再選さています。いわば生え抜きの正統派です。

今回、ディーンは日本には一週間の滞在予定で来ました。多数の企業トップや経団連などとの打ち合わせ、卒業生とのレセプションなど盛り沢山です。来週には、シンガポールやインドにまで行くとのことで、MBA校におけるアジアのプレゼンスが高いことを象徴しています。今回は "Japan Passing" とならなかったことに感謝です。

自分は今年からDarden Alumni Japan Chapter (ダーデン卒業生日本支部)の運営をお手伝いすることになりました。野村証券の鈴木さんという先輩と二人で立った、President(s)の一人としてです。その関係から今回のディーン来日のスケジュール調整などに関与しています。

昨日は、8時半から帝国ホテルでの朝食会でした。この1週間の予定や方針の確認をするためです。朝食会の後、ディーンは予定通りヒゲタ醤油の濱口社長(大先輩)の車付きアテンドで、各社との打ち合わせに出向きます。その出がけ、当日夕方のスケジュールに空きがあったので、折角の機会です。お誘いしてみました。

「夕食とマッサージチェアをごちそうします。夕方うちにいらっしゃいませんか?
 日本のITベンチャーがどんな様子なのかも是非お見せしたいし。」

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約束どおり夕方、ブルーナーさんは、今回いろいろと活躍してくれている先輩の古川さんと二人でいらっしゃいました。

4階受付のウェルカムボード、ライブラリー、セミナー室や、3階の執務室などをご案内します。ひとしきり事業として何をやっているのかを説明した後、マッサージチェアを体験してもらいます。

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『全身疲労回復コース』のスイッチを押します。約20分間。

皆さん、マッサージチェア体験中は無言になるので、その間は外します。その間に帰宅の準備をして、再びマッサージチェアの場所に出向くと、ブルーナーさんと古川さんは痛く感心していました。矢継ぎ早に質問がきます。

「すごい。気持ちよかった。これ、いくらくらいなの?何処が出しているの?」

「日本のハイテクマッサージチェア、Familyという会社のG-メディカル。2500ドルくらい。」

「え、それほど高くないんだねぇ。どう、古川さん、この輸出業やらない?(笑)」

そんな会話の後、いつもの「煙やてん(えんやてん)」に出向きます。会社からすぐ近所の焼き鳥屋さんですね。美味しい焼き鳥とお店の方々の雰囲気の良さに魅かれてよく行きます。

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焼き鳥と鳥スープ、生キャベツ、冷やしトマト、そして「明るい農村(芋焼酎)」ロック。三人でひとしきり話が盛り上がります。起業をするチャンスがもらえて、それが当初は苦戦したものの、今は軌道に乗っていることの幸運さなどについてお話しします。そこでブルーナーさんに聞かれます。

「で、シロー、それで、エグジットは何を考えているの?上場、それとも、売却?」

アメリカでアントレプレナー(起業家)と言えば、その会社を育てて売る、そしてまた新しいことにチャレンジしてまた育てて売る。スタートアップが得意でそれを繰り返す人たちのことです。故にエグジットをクリアに決めてチャレンジするのです。

ふと、いつも思っていることが口から出ます。

「いや、上場とかって、大きくなっていく中で通過点としてあると思うのですが、
 自分の目標ではない。売却も違うんです…。」

きっと、なんだかはっきりしない奴だと思われたかもしれません。でもこのコンセプトは是非ディーンに伝えたいと思ったのです。饒舌になります。

「私がダーデンで学んだ中で、コアになっている価値観があるのですね。
 それは、理想的な組織で働くメンバーによって運営されるビジネスは必ず健全なものになる。
 そんな理念みたいなものなものです。

 だから人がのびのびと働ける環境を創る、e-Janではそんな実証をしてみているのです。
 ビジネスありきではない。人が先。

 上場とか売却とかのエグジットを通じてお金持ちになるのは一つの選択肢ですよね。
 95年卒の同級生にも、最初から『この会社を売ることが目標だ』と、極めてクリアな
 目標設定をしている奴がいて、実際に価格比較サイトのグローバルオペレーションサイトを
 運営する会社を創って、百数十億円で売りましたね。よく日本に来ていて一緒に飲みました。
 その鮮やかな目標設定と達成を尊敬してしまいます。彼は今は投資家です。

 もちろんお金は多めにあれば嬉しいです。でも、やっぱり自分は違う。

 それよりも、ライフワークとして理想組織のレシピみたいなものを追求しているのです。
 それが見つかって、実践して改善して。その結果、何十年、いや、もしかしたら百年以上も
 続くようなビジネス母体が創れるかもしれない。そんなことにチャレンジしているのです。」

聞いていてブルーナーさんが言います。

「ワォ、シロー、それ、すごいビジョンだよ…。」

そして、続けます。

「それって、教育機関を創っているみたいじゃない!
 (It's like creating an institution!)」

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一晩経って、今朝、この言葉が頭を離れません。

"It's like creating an institution!"

自分は東レ株式会社からの企業派遣で90年代にビジネススクールへと留学させてもらいました。バージニア大学のダーデン校は、ビジネスウィークのMBA調査結果からでもずっとそうですが、教育のクオリティに対する学生の満足度がナンバーワンです。学校全体として教育の質を高めることにものすごく努力しているのです。

実際に授業に参加して、鳥肌が立つようなことを何度も体験しました。ダーデンは一つの理想的な教育機関だと思っています。そして16年。いつの間にかそこで学んだコアなコンセプトをビジネスの世界で実現しようとしている自分がいました。それもかなり「闇雲に」です。

ブルーナーさんからの一言には理想組織の一つのヒントをもらえた気がしました。

どうやら『ビジネス体験を通じて生涯教育がされるような機関を創っている』みたいなのです。うまく表現できないのですが、e-Janという母体を通じて自分が実現しようとしていることの道筋が見えたような、不思議な嬉しさを感じたのです。

さらに、今朝読んだ日報に一種の同時性を感じました。ベテラン営業の方で、今年から採用事例作成をお手伝いしてもらっている人からのものです。

「いいじゃんネットの社員の方々は皆さん几帳面な程、努力をされてます。
 心地良さを感じるぐらいですから。」

何かある!そんなことに勇気をもらえた朝でした。

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