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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

書籍メモ:「ツイッターノミクス」 - フォロワーが増える、増えないのヒント

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「ツイッターノミクス」(タラ・ハント著、文芸春秋)はお読みになりましたでしょうか?最近は会う人会う人にこの本を勧めていました。この本、翻訳が出ると聞いて、いちはやくAmazonで洋書を入手し、人さまより先んじて全体像を把握してやろうと考えたのは私です(^^;。読みきる前に翻訳が出てしまいました(^^;。
翻訳書刊行以降は、原書中のキーワードでモノを考えていても、翻訳書を読んだ人と話が合わなくなる可能性があることから、翻訳書を入手し、そちらで最後まで目を通しました。(私の場合は必要なところだけ読む飛ばし読み。本田さんのレバレッジリーディングに近い)

「ツイッターノミクス」、なかなか刺激的でしたが、もっともキモの部分は「ウッフィー」と呼ばれる仮想的な「富」を設定し、その「富」を増やす行為、その「富」を減らす行為を明確に記述している点でしょう。これによってオンラインコミュニティにおける行動原理が理解できます。

「ウッフィー」とは、自分の言葉で説明すると、オンライン上での自分の振る舞いによって、目に見えない形で蓄積されていく「他者からの信頼」および「自分が所属するコミュニティにおける名声や名誉」といったところ。オンラインコミュニティ上で構築した「パーソナルブランド」と言ってもよいでしょう。

彼女はこのウッフィーは増やすことができるし、ウッフィーが増えた場合には、有形無形のリターンがあるということを言っています。

 ギフト経済では、与えれば与えるほどウッフィーが増える。ここが、市場経済と大きくちがうところだ。それから、市場経済では万一に備えて貯金をするけれど、ウッフィーを貯めておくのは意味がない。ウッフィーには、流通することによって価値が高まるという性質があるからだ。たとえばAがみんなに喜ばれる事業を始めるとしよう(=ウッフィーを増やす)。それに共感したBが、仲間にクチコミで広めるなどの形で力を貸す(=ウッフィーを使う)。すると、A、B両方のウッフィーが増える。こうしてコミュニティの中でウッフィーが流通すれば、必然的に人と人とのつながりが増えることになる。これこそがウェブ2.0の世界で成功する決め手であり、また本書のテーマである。


 これまでは、お金をたくさん持っている組織や人が大きな影響力を持っていた。インターネットがなかった時代には、広告に予算を注ぎ込みさえすれば大勢の人に訴えかけることができたからである。いや、いまでもお金は有効だし、お金があれば強力な広告キャンペーンを展開することはできる。だが、だからといって影響力を獲得できるとは限らない。影響力の源泉は、ソーシャル・キャピタルにシフトしている。本書で紹介するように今日ではさまざまなソーシャル・メディアが登場し、お金はなくともウッフィーさえあれば、世界に向けてメッセージを発信できるようになった。いまやマーケット・キャピタルとソーシャル・キャピタルは、猛烈なスピードで収斂しようとしている。ウッフィーがほんとうに市場経済の通貨になる日だって、来るかも知れない。

「ウッフィーがほんとうに市場経済の通貨になる日だって、来るかも知れない。」ほんとうでしょうか?

従来の市場経済が基本的にはマスプロダクションに依拠しており、マスマーケティングで顧客に一方的なメッセージを浴びせてモノを買わせてきたという構造。この構造が急速に陳腐化しているなかで、企業はモノを売るためには、大衆でも分衆でも網衆でもない「1人のひと」と関係を作っていかなければならないという状況になっています。これは、企業人なら誰もが肌で感じている事実だと思います。
企業は「1人のひと」との間でエンゲージメントを行い、心理的な共感を醸成した上で、自然と消費が発生するという流れに持っていかなければなりません。
その際に、タラ・ハントの言う「ウッフィー」が重要になるのです。

彼女は「ウッフィーを増やす行動」と「ウッフィーを減らす行動」を表で整理しています。ここでは、「ウッフィーを増やす行動」について、さわりを抜書きします。

・誰かの頼みを聞いてあげる。
・アドバイスに感謝する、返礼する。
・紹介してもらったことに感謝する、返礼する。
・イベントにボランティアとして参加する。
・他のメンバーと協力してコミュニティの役に立つものをつくる。
・新入りの人、伝手がなくて困っている人に手を差しのべる。

うーん、まぁ当たり前と言えば当たり前。社会常識ではないかという印象を持たれるかも知れません。これがですね、表の下にある「ウッフィーを減らす行動」と対比すると、非常に説得力を持つのです。対比によって「ウッフィーを減らす行動」がくっきりと際立って、「これはオンラインコミュニティではやっちゃいかんな」と思わせるのです。どういうことが「ウッフィーを減らす行動」なのかは、本書を購入の上お読みください。(ここで書くと文芸春秋さんの機会損失になるため)

個人的には、Twitterのフォロワーが増える、増えないも、このタラ・ハントが作成した「ウッフィーを増やす行動」「ウッフィーを減らす行動」が大きく関わっていると思っています。フォロワーがなぜか増えないという人は、「ウッフィーを減らす行動」をしていないか、あるいは「ウッフィーを増やす行動」が少ないのではないか、チェックしてみるとよいでしょう。

以下は私がTwitterでその都度記した「ツイッターノミクス」関連のメモ的なツイート。

「ツイッターノミクス」でTara Huntは明確に"Gift Economy"(贈与経済)に言及している。「人類学の研究によると…」という記述もある。 http://en.wikipedia.org/wiki/Gift_economy #twnomics

RT @naokih: RT @twnomics ぜんぶつながっていくのです。これは編集した藤原和博さんの『つなげる力』のテーマですが、『ツイッターノミクス』も同じ。まったく違う要素をつなげることで、ブレークスルーが起きる。それをウエブは非常にやりやすくした。 #twnomics

Twitterの社会インフラ化の未来を垣間見たい人は「ツイッターノミクス」を読むとよいです。著者自身が実験台になってます。 #twnomics

Twitterが社会インフラ化していくと、「個が公になる」、「ローカルなものがユニバーサル性を持つ」、「個人がメディアになる」、「贈与が主原理になる」といった逆転した発想でモノを考える必要が出てくるので、今のうちに遊びながら慣れておくとよいです。

あともう1つ。企業が慣れていかなければならない発想は、「Twitterは買えない」ということ。Twitterを企業活動に応用しようとしても、一番大切な部分を「買う」ことはできない。(そのへん、「ツイッターノミクス」に説明がある) #twnomics

原書で5割方読んできたけど、みなさんと語彙を合わせたいのでこちらも買います。RT @twnomics:『ツイッターノミクス』 アマゾンでも発売開始! #twnomics

ウッフィーが貯まるとどういうよいことが起こるか。林さんはよい実例ですよね。RT @masayukihayashi:ギフト経済の誕生と「ウッフィー(仮想通貨)」の蓄積ですね。 RT @dimaizum: 「ツイッターノミクス」には林さん…現象が書かれています。 #twnomics

Twitterで勢いがある人たちの話を聴くと、みんな、贈与、ボランティア、NPO、社会貢献、他人の利益、を強く意識している。そのへん、「ツイッターノミクス」の主張とも合う。 #twnomics

Twitterのポテンシャルは、N対Nのカンバセーションが市場や生活にもたらす影響が、計り知れないものになりそうだ、というところにある。 #twnomics

メディアの未来に関心がある人で英語が聞き取れる人は@akihitoさんが2009/7/7に書いたこの投稿 http://bit.ly/aI7NnR にリンクされているClay ShirkyのTED講演ビデオを見るとよいです。最初の7分で十分。鳥肌もの。 #twnomics

日本の個人消費は300兆円。発想としては、このうち年々0.5~1%程度はソーシャルコミュニケーションによって方向づけられた消費に変わっていくと考える。その想定で広告代理店業、メディア、B2C産業がどう変化していくかシナリオを作るとよい。(一部修正)

しかし、そのソーシャルコミュニケーションは営利主義では動かない。そこが難しいところ。「ウッフィー」は企業がお金を出しても買えない。 #twnomics

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