読中メモ:「リストのチカラ」
「リストのチカラ」
堀内浩二/ゴマブックス
最近ずっとカバンに入れて持ち歩いています。
この本にざっと目を通してわかるのは、ものすごく時間をかけて作られた本に違いないということです。前半は、堀内さん厳選のリストが計50本、1見開きに1リストという形でまとめてあります。読者として何気なくページを繰っていく分には、ささっとスキャニングすることも可能なのだろうけれども、書き手の目線で1つひとつのリストに込められた”練り具合”をなぞっていくと、1見開き1見開きに気の遠くなるような時間がかけられているであろうことが、うっすらとわかってきます。筆者が心血注いでいる。そんな雰囲気があります。
なるほど「リスト」とは、知恵の言葉であり、暗誦しやすいようにした何か条かの文言です。けれども筆者にとっては、1本1本のリストが、読んで理解して覚えて暗誦して、そして血肉に変えて、その人の行動の規範になる、言わば、その人自身の未来を決める可能性がある、ものすごいう重みを持ったものである。だからこそ、1本1本をゆるがせにせず、吟味して吟味して、書かなければならない。そういう覚悟や姿勢が行間からよく伝わってくるように思います。
リスト自体はちょっと見お仕着せのように見えますが、リスト1か条1か条にも手間ひまがかかっていて、翻訳ものはわかりやすく言い換えられたりしています。左側ページにある個々のリストの解説文にも相応の時間をかけている風があります。
ということで、本書は珠玉のリスト集として存在しています。
そういうのが一度読み取れてしまうと、1本1本のリストをさっと読み飛ばして、通過してしまうということができにくい…。先日も風呂に入りながら読んでいて(いつもそうなので)、以下のリストに出くわして、堀内さんのブログのキャッチコピーではありませんが「ハッ」としてしまいました。
-Quote-
人生における13の富
1. 金融資産--蓄積と交換が容易な富
2. 健康--豊かな人生の条件であり、同時に目的である。
3. 伴侶--互いを、社会を、支える基盤
4. 子(孫)--未来へのかけはし
5. 志--生涯を賭けた挑戦
6. 見識--自分の言葉を持つ
7. 自由時間--重要なことに時間を配分できる状態
8. 友情--損得を超えた信頼の絆
9. 職業スキル--世の中の役に立つ力
10. 仕事のネットワーク--自分の価値を認めてくれる顧客・仲間
11. 事業--社会貢献の装置
12. 思想--後世に遺せる無形の富
13. 姿勢--死後、自分がどのように思い出されるか
-Unquote-
それぞれの言葉に添えられた短いフレーズにも含蓄があります。「自由時間」について「重要なことに時間を配分できる状態」なんて説明をつけるのは誰にもできることではありません。「事業」が「社会貢献の装置」であるとはっきり自覚している方は、そうそういないと思います。深く考え抜かれた言葉や表現が並んでいます。
こんな風に1つのリストに目が留まると、次のリストに移っていけないので、本書はまだ読み終わっていません。その時々にいろんなところを開いて、目に飛び込んできたところに「ハッ」とするという読み方が、意外と筆者の望むところなのかも知れません。人それぞれにおいてセレンディピティがあるように、という願いが込められている本だと思います。