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レンタル品を利用するときは、成分が残留する日用品の使用に、ご注意を。 ~日用品公害・香害(n)~

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レンタル品は、新品と同じ状態をできるだけ維持して、次のユーザーへ

レンタル用品をお使いになるときは、成分が残留する日用品の使用に、注意が必要です。

たとえば、給食着に、柔軟剤の香りが残留する問題。レンタルと同じ持ち回り方式の場合に発生しています。また、図書館の本や、賃貸物件も同様です。

さらに、レンタル介護用品でも、同様の問題が発生します。「香害」の移香問題として知られる現象です。

大型の介護用品は、通常、介護保険の適用を受けて、レンタルすることが多いものです。
病状の変化や、ショートステイの利用、介護施設への入居などによって、不要になるからです。
介護用品ですから、「誤って」人体の汚れが付着することは避けられないかもしれません。しかしながら、新品の時には付着していなかった化学物質を、「意図して」付着させないように気を付けたいものです。

レンタル品は、次のユーザーが快適に使用できるよう、できるだけ搬入時と同じ状態を維持したいですね。

介護機器で、日用品の成分付着(≒移香)問題が生じる、おもな原因

介護用品に成分が付着する原因は、おもに、ふたつあります。

ひとつは、要介護者のパジャマやアンダーウェア、寝具のカバー類の洗濯に、ここ10年で発売された、高残香性柔軟剤や抗菌系合成洗剤を使用することです。
それらの中には、洗濯物に成分が残留する製品もあります。さらに、洗濯槽内に残った物質が、次の洗濯物に移ることもあります(筆者はこれを「n次移香」と呼んでいます)。
接触する介護者が成分の移る製品を使っていれば、要介護者の衣類へと移ります。

もうひとつは、ベッドのマットなどに、除菌消臭スプレーを噴霧することです。
香料や、抗菌・消臭機能のある成分が、マットに浸透します。

そうした製品の中には、アレルギー性接触皮膚炎の原因となる第四級アンモニウム塩などが含まれているものもあります。また、喘息を生じる成分が含まれているものもあります。

次の使用世帯に、アレルギーや喘息の既往のある人がいるかどうかは、事前にはわかりません。知らずに使ってしまうと、他者の健康を奪うことになりかねません。

筆者が直面した、介護用ベッドへの日用品の成分うつり

筆者は、先月、介護用ベッドへの成分付着問題に直面しました。

筆者をサポートしてくれる医療・介護関係者は、ほぼ無香害です。ケアマネ、訪問看護師、ホームドクター、入院先の医療スタッフ、訪問診療医師と看護師、皆さん無香害です。利用先の介護施設では、この春、会議を開いて、柔軟剤不使用を決定。以降、パジャマ等への移香は減っています。そして、福祉用具介護機器のレンタル業者さんたちも、ほぼ無香害です。

ところが、レンタルしたベッドの以前の使用者が、無香害ではなかったようです。

大型備品ですから、搬入当日は、窓やドアを全開。フローラルの香りはとらえていました。
が、スタッフさんたちが先に立ち寄ったお宅で移香したのかもしれないと勘違いしていました。

搬入後、部屋を閉め切ったところ、猛烈なフローラル臭が充満。
発生源はマットレスでした。床ずれ予防のできる厚手のものです。一部カバーを外してみると、中のウレタンフォームまで強くにおいました。

さらに、そのマットから、ベッドの床板の下半分の2枚、ヘッドボードと足元ボードにも強く移香。

そして、そのニオイは、柔軟剤でも洗剤でもありませんでした。特に下半分に強く付着していることから、一度だけ嗅いだ記憶のある、除菌消臭スプレーではないかと推測しています。

また、手すりには、製品名を特定できる柔軟剤のニオイが強く付着していました。要介護者が触った後、柔軟剤で洗った雑巾で拭いたのかもしれません。

マットも、ベッドのボードを、何度も拭いて、脱臭機2台(プラズィオンとナイトライドAM1)をフル稼働。それでもも、充満した成分は一向に減衰せず、そのまま置いておくことすらできない状態。
そこで、搬入業者に電話、新品の買い取りを提案したところ、まずはマットを新品の在庫に交換、その後、新品フレームが入荷次第、これも交換すると申し出てくださいました。

また、SNSの相互さんから、フレームのボードには養生テープを貼ればよいのでは?という助言があり、ゴミ袋を被せて養生テープでとめて、交換を待ちました。
この成分は、高い位置でもにおっていたため、壁や天井への付着を防ぐため、換気と脱臭機のフル稼働を継続しました。

1週間後にマットを交換、2週間後にフレームを交換。その時点で、半減程度です。その間、筆者は、におう物質の充満する部屋で寝泊まりしていましたが、なんとか耐えました、

健康問題を引き起こす可能性がある、介護用品への成分付着問題

単なるニオイ移りではないか、大げさな、とおもう人もいるかもしれません。否、介護用品、とくにベッドへの移香は、ささいな問題ではありません。

1つには、発生源の表面積の問題があります。マットは、約1m×2m×厚さ8cmほど。移香した給食着の7~9着分が、介護期間中ずっと、部屋干しされている状況に等しい計算になります。

2つ目は、要介護者の健康問題です。ベッドに寝たまま、終日、揮発する物質を吸い続けることになります。
喘息の引き金になりかねません。高齢者の喘息が増えているそうですが、何割かは、近年発売された日用品によるものかもしれません(調査が必要でしょう)。高齢になると嗅覚が鈍るため、本人は、不調の原因に気付くことができません。また、自身で洗濯をするわけではありません。室内の空気事情は、家族次第になります。

3つ目は、介護者の健康問題です。ワンオペ介護の場合、ほぼ24時間、同室で介護にあたることが少なくありません。その間ずっと、揮発する物質を吸い続けることになります。介護者にとっても、喘息などの発症の引き金になりかねません。

4つ目、これも健康問題です。近年の日用品の中には、皮膚に炎症を起こすものもあります。付着した化学物質を除去するために、至近距離で清拭をすると、手や顔がかぶれるリスクがあります。
筆者は、ボードの移香除去作業で、目の周りの皮膚が発赤し、皮膚科で処方されたステロイドを塗布して事なきをえました。

5つ目は、これも健康問題です。要介護者に、掃除や交換などの本来不要な作業が降りかかります。ただでさえ介護者は心身ともに疲弊しています。疲労が倍増します。

さらに、冬季ならば、暖房によって揮発するリスクがあります。要介護者は、脂肪も筋肉も減っており、寒さを訴えます。その声を無視して、換気することは難しいものです。

以上のようなことが起こりうるので、レンタル用品を利用する世帯では、後に使う人たちために、想像力を働かせる必要があるでしょう。
そして、日用品の仕様を、メーカーのウェブサイトで確認したうえで、できるだけリスクの低い製品を選ぶことが重要ではないでしょうか。

取扱説明書に規定された方法で、お手入れを

シンプルに言えば、「取扱説明書に記載されていない化学物質が、レンタル用品に付着するような使い方をしない」単にそれだけのことではあります。

たとえば筆者がレンタルしたベッドの取扱説明書には、次のように記載されています。
長くなりますが、引用します。(赤は筆者の指定による)

推奨消毒方法
消毒用エタノール(清拭)
次亜塩素酸ナトリウム 400ppm以下
塩化ベンザルコニウム 0.5%以下
塩化ベンゼトニウム 0.5%以下
グルコン酸クロルヘキシジン 5%以下
IGB液(イソプロピルアルコール、グルタルアルデヒド、緩衝剤)
MRガス
オゾンガス 0.5ppm以下
ホルムアルデヒドガス
過酸化水素水 3%以下

ベッド自体の手入れ
消毒用エタノール 76.9~81.4%
塩化ベンザルコニウム(オスバンなど)0.05~0.2%
塩化ベンゼトニウム(ハイアミンなど)0.05~0.2%
グルコン酸クロルヘキシジン(ヒビデンなど)0.05%
次亜塩素酸ナトリウム(ミルトンなど)0.02~0.05%

揮発性のもの(シンナー、ベンジン、ガソリンなど)やクレゾールは使用しないでください。変色・変質するおそれがあります。
消毒剤を使用する場合は、指定以外の薬品を使用しないでください、(破損・変質のおそれがあります)
中性洗剤を使用した場合は、その後水拭きしてください。水拭きしないと樹脂の部分が割れる恐れがあります。

取説には、市販の香料入り除菌消臭スプレーを使ってください、付着したニオイは香残香性製品の香りで覆い隠してください、などとは書かれていないのです。

香料製品だけではない、フレグランス・フリーの対象製品

成分が移る製品は、高残香性柔軟剤だけではありません。
香りの強いハンドクリームや整髪料も、注意する必要があるでしょう。香水や煙草についても、さいきんではマイクロカプセルを使った高残香性の製品が登場しています。移る可能性があるかもしれませんから、メーカーのウェブサイトで仕様を確認してみてください。

また、抗菌系合成洗剤の成分も移ります。ただし、この成分のニオイについては、筆者がSNS上で簡易アンケートをとったところ、感知しない人が一定の割合でいます。無臭だから、感知しないから、成分が移っていない、とは限らないのです。嗅覚の個体差は大きく、多様です。自身が感知しなくても、ほかの人には感知することがあります。製品仕様を確認する必要があるでしょう。

仕様を見てもよくわからない場合は、化学物質名をキーにAIに尋ねるか、レンタル業者やメーカーに質問するとよいでしょう。

とはいえ、ユーザーの中には、製品情報を理解しにくい方々もおられます。それ以前に、ウェブサイトで検索することが難しい方もおられます。老々介護、認認介護の世帯も増えています。そのような世帯には、ケアマネや福祉機器を製造販売している法人が、サポートするしかないかもしれません。

また、メーカーは、現状に合わせて、取説のテキストを、再検討したほうがよいのではないでしょうか。カバーのメンテナンス方法については、もうすこし詳しく説明しなければ、伝わらないような気がいたします。

カバー
水または中性洗剤を水で薄めたものでマットレスの表面を拭いてください。
消毒用アルコールによる清拭も可能です。
洗濯方法(カバーは取り外して洗浄してください)

このテキストは、10年前であれば、全く問題のない表現です。端的で、よくわかります。
しかし、現在は、香りによる差別化をはかる洗剤胃や柔軟剤があふれています。それらをレンタル用品に使わないよう、注意喚起をお願いしたいところです。

介護者と要介護者の健康を守るための福祉機器が、一部の世帯の誤った使い方により、逆に健康を損ねる汚染された機器になってしまっては、本末転倒です。
関係者の皆さま、ユーザーの皆さまには、フレグランスフリーの重要性を理解してくださいますよう、お願いいたします。

なお、フレグランス・フリーの対象製品については、米国の事例が参考になります。
カリフォルニア州労働衛生局の啓発事例
カリフォルニア州労働衛生局による、フレグランスフリーポリシーのひな型

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