カリフォルニア州の友好都市は、フレグランスフリー・ポリシーの策定を ~日用品公害・香害(n)~
米国カリフォルニア州公衆衛生局は、香水や香り付け・消臭・防臭目的の日用品が、喘息などの発症に関与しているとして、啓発活動を行っています。使用を中止することが、予防になるからです。(情報提供:香害図書館)
一方、わが国では、香り付き柔軟剤・抗菌系合成洗剤・除菌消臭スプレー等の消費が急拡大し、「香害」問題を引き起こしています。5省庁や自治体や消費者団体が啓発活動を行っていますが、まだ健康リスクに気付いていない消費者も少なくありません。
わが国には、カリフォルニア州と友好関係にある府や市町村が多数あります(後掲の表を参照)。友好都市の先行事例に倣い、ひな型の文例を参考にして、フレグランスフリー・ポリシーを策定する必要があるでしょう。
なぜなら、健康リスクを避けるには、交流する双方に、フレグランスフリーがもとめられるからです。海外では「香害」は、新しい受動喫煙、第二の受動喫煙などと呼ばれています。「香害」製品の「拡散して粘着する」という特性上、人的交流をはかれば、フレグランスフリーの側に、受動的な健康リスクが生じます。
公共機関では職員や来庁者、医療機関ではスタッフと患者の、「香害」製品による喘息の発症を予防するためにも、策定と実施は急務です。
職場の健康と香害製品の関係については、カリフォルニア州公衆衛生局が公開する資料のうち、トップページの概要と、雇用者向けの啓発リーフレットが参考になります。内容を次に紹介しました。(同局資料はパブリック・ドメイン、筆者訳)
カリフォルニア州公衆衛生局 労働衛生部
カリフォルニア州労働関連喘息予防プログラム 公開資料の一部
労働関連喘息予防プログラム 香料および労働関連の喘息
香水、パーソナルケア用品、清掃用品、芳香剤に使用される香料の物質は、喘息を引き起こす可能性があります。香り付き製品は、カリフォルニアの多くの職場で使われており、350例以上の労働関連の喘息に関与しています。
労働関連の喘息予防プログラム(WRAPP)は、職場での香料が関与する何百例もの喘息を追跡してきました。これらの労働者の疾病は、学校・病院・オフィス・製造現場など多くの屋内作業環境で発生しています。
WRAPPは、香料が、労働関連の喘息患者の報告の中で、9番目に多い共通の曝露要因であったことを確認しています。香料に関連する症例のうち、ほぼ4分の1は新規発症例で、喘息の既往は報告されていません。
香料および労働関連の喘息 雇用者向け情報 2017年度版(PDF)
職場での、パーソナルケア用品・清掃用品・芳香剤の香料および香水は、喘息のトリガとなります。それらの製品には多種多様な化学物質が含まれています。喘息の既往のないスタッフにも喘息を引き起こす物質があるのです。
労働関連の喘息とは?
喘息は、空気の流れが悪くなる慢性肺疾患で、呼吸を困難にします。労働によって生じたり憎悪するものが、労働関連喘息です。
症状は、呼吸の直後から始まることもあれば、勤務時間外に時間をおいて始まることもあります。何年かの労働による曝露で、突然発症することもあります。
喘鳴・胸痛・咳・短い呼吸・呼吸困難を訴える従業員がいたら、受診させましょう。症状を発生あるいは憎悪させたと考えられる、職場での曝露を、医師に報告させてください。
労働関連喘息は深刻なものです。早期に曝露を避ければ、改善します。
(イメージ写真:職場の自席で芳香スプレーを使うデスクワーカー)
事例報告
【同僚の使う芳香剤で救急搬送された例】
25歳女性の喘息患者。保育園勤務、データ入力オペレーター。
オフィス内では化学物質のスプレーを使わないよう周知されていた。ただし、就業規則に香料の規定はなかった。そのため、オフィス内で同僚がスプレーを噴霧。即座に深刻な症状を引き起こし、救急搬送。経口ステロイドでのコントロールが必要となる。
同僚も喘息を発症との報告あり。
【香料製品の使用で警備員が離職した例】
50歳男性の喘息患者。9年間警備保障業務に従事。強い香水や香料製品を使う従業員が常時いる環境のため、喘息を発症。香り付けをやめてほしいと言い出せないまま、悪化。同僚の防刃ジャケットに塗布した香料入りクリームで、喘息が憎悪、蕁麻疹も。退職するまでの間に6回、救急搬送。
カリフォルニアの労働関連喘息
労働関連の喘息予防プログラム(WRAPP)は、喘息患者の情報を追跡、勤務中の喘息予防を支援しています。学校・病院・オフィス・製造現場など多くの屋内作業環境で、香料曝露が原因の喘息を250例以上確認しています。
悪臭対策の応急処置としての消臭剤
消臭・防臭剤は、スプレー・液体・ジェルの形で販売されています。こうした製品は、悪臭を除去するというよりもマスキングします。消臭剤は、喘息だけでなく、頭痛やアレルギーといった健康問題を引き起こす化学物質を、空気中に撒き散らすのです。
このような、悪臭を包みこんで隠す消臭剤を使うよりも、ニオイのモトを特定して解決するほうがよいでしょう。たとえば、カビが生えないように雨漏りを修理したり、悪臭を放つカビ臭い敷物を交換するなどです。
香水および香料製品による喘息を予防するために、雇用主が取りうる措置
・香料が健康におよぼす影響についての、従業員教育。
・学校、オフィス、現場でのフレグランスフリー・ポリシー(無香料の方針)の適用と実施。下記に掲載の「追加リソース」にある、ポリシーのひな型をカスタマイズするとよい。
・職場での消臭スプレーを許可しないこと。悪臭は原因を特定して除去すること。
・無香料の清掃用品を選ぶこと。
・新鮮な空気を取り込めるよう、ビルの換気を最適化すること。
【パーソナルケア用品】
香水やコロン以外にも、香料は使われています。ボディスプレー・アフターシェーブローション・ヘアケア用品・デオドラント用品・石けんなどにも、香り付きのものがあります。無香料のものを使いましょう。
(イメージ写真:手首に香水を噴霧する女性)
追加リソース
- フレグランスフリーポリシーのひな型(Microsoft Wordドキュメント)
- 喘息にも安全な無香料の清掃用品のリストを提供している、ニューヨーク州グリーンプログラムのウェブページ(製品カテゴリで清掃用品を選択、[No]ボタンをクリック、「好きな香料製品」の質問へ)
- 米国EPAによる、より安全なフレグランスフリーのラベルが表示された清掃用品
- 職場におけるフレグランスフリーポリシーの実施手順を含む、カナダ労働局安全衛生センターのウェブページ
カリフォルニア州各都市と友好関係にある自治体(50音順)
明石市 | バレホ | 芦屋市 | モンテベロ |
天草市 | エンシニタス | 有田市 | デレイノ |
安城市 | ハン ティントンビーチ | 飯塚市 | サニーベール |
犬山市 | デービス | 飯能市 | ブレア |
出雲市 | サンタクララ | 伊勢原市 | ラミラダ |
市川市 | ガーデナ | いちき串木野市 | サリナス |
糸満市 | レドンドビーチ | 岩沼市 | ナパ |
大阪府 | カリフォルニア州 | 太田市 | バーバンク |
大槌町 | フォートブラッグ | 大町市 | メンドシーノ |
大村市 | サンカルロス | 岡崎市 | ニューポートビーチ |
小田原市 | チュラビスタ | 貝塚市 | カルバーシティ |
柏市 | トーランス | 神栖市 | ユーリカ |
函南町 | カーマン | 木更津市 | オーシャンサイド |
岸和田市 | サウスサンフランシスコ | 北上市 | コンコード |
串本町 | へメット | 久留米市 | モデスト |
向日市 | サラトガ | 高知市 | フレズノ |
甲府市 | ロダイ | 堺市 | バークレー |
島田市 | リッチモンド | 下関市 | ピッツバーグ |
新宮市 | サンタクルーズ | せたな町 | ハンフォード |
仙台市 | リバーサイド | 大山町 | テメキュラ |
高石市 | ロミタ | 武雄市 | セバストポール |
田子町 | ギルロイ | 立川市 | サンバーナディノ |
秩父市 | アンチオック | 津島市 | ハーキュリーズ |
土浦市 | パロアルト | 鳥羽市 | サンタバーバラ |
飛島村 | リオビスタ | 富津市 | カ ールスバッド |
豊川市 | キュパティーノ | 豊中市 | サンマテオ |
七尾市 | モントレー | 韮崎市 | フェアフィールド |
橋本市 | ロナ・パーク | 浜松市 | ポータービル |
日野市 | レッドランズ | 深谷市 | フリーモント |
福岡市 | オークランド | 福井市 | フラトン |
船橋市 | ヘイワード | 真岡市 | グレンドーラ |
松山市 | サクラメント | 三木市 | バイセリア |
瑞穂町 | モーガンヒル | 芽室町 | トレーシー |
四日市市 | ロングビーチ | 四街道市 | リバモア |
和歌山市 | ベーカーズフィールド | 蕨市 | エルドラド郡 |
上記は、本稿執筆時点で、友好都市を紹介するHTMLページを確認できた自治体です。PDFの広報のページや、交流協会など外部のウェブサイトに掲載している自治体は、含まれていません。
次の自治体の友好関係については、別途確認する必要があります。
糸島市:エスコンディード、江津市:コロナ、大分市:ストックトン、男鹿市:リビングストン、小野市:リンジー、刈羽村:ハーフムーンベイ、川上村:ワトソンビル、 つくば市:ミルピタス、東御市:リードリー、那智勝浦町:モントレーパーク、日南町:スコッツバレー、日光市:パームスプリングス、東大阪市:グレンデール、丸森町:へメット。
また、これら以外の自治体でも、友好関係を締結している可能性があります。
※ カリフォルニア州以外では、函館市の友好都市のカナダ・ハリファックス市、豊田市の友好都市のデトロイト市が、フレグランスフリーを推進しています。
参考URI
カリフォルニア州公衆衛生局 ウェブサイト
業務関連喘息予防プログラム 香料および業務関連の喘息 twitter向けリンク
カリフォルニア州公衆衛生局 Twitter(CA Public Health)
香料および業労働関連の喘息 従業員向け情報(PDF) - ファクトシート 2017年度版
香害図書館
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