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セキュリティ製品、何十個も入れてませんか?―― SASE/SSEからプラットフォーム統合まで、今起きていることを整理する

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―― 「とりあえず入れた」の積み重ねが、やがて組織を壊す

第1章|「うちは対策してます」の落とし穴

「ランサムウェア対策のEDRを入れました」「Zscalerも契約しました」「SIEMも入れてログ監視もやってます」――
お客さんとの商談でこういう言葉を聞くたびに、私は心の中でこう問い返しています。「それ、全部つながってますか?」

セキュリティ製品は増え続けている。でも、バラバラに入れた製品たちは、攻撃者の一連の動きを誰も追えていない。メールで侵入し、端末で実行し、クラウドにデータを送信する――その全体像を把握するには、メールセキュリティ・EDR・CASBのログを人手で突き合わせるしかない。インシデント発生時に「どの画面を最初に見ればいいか」がわからない組織が、実は非常に多いのが現実です。

本記事は、今のセキュリティの現場で何が起きているかを整理し、なぜ「プラットフォーム統合」という流れが生まれているかを解説します。


第2章|そもそも、なぜこんなに製品が増えたのか

10年前のオフィスネットワークはシンプルでした。社内にルーターとファイアウォールを置き、インターネットへの出口を一箇所に絞る。「社内=安全、社外=危険」という前提で設計されていた。

それが崩れたのは、クラウドとリモートワークの普及です。

Salesforce、Microsoft 365、Slack――業務の中心がSaaSに移ると、「社内を経由してインターネットに出る」設計が根本的に非効率になった。拠点からSalesforceに繋ぐだけで、わざわざ本社のファイアウォールを経由させる必要があるのか? VPNが遅い、Teamsの画質が落ちる、という現場の声はすべてこの設計の歪みから来ています。

同時に、脅威の種類も爆発的に増えた。フィッシングメール、ランサムウェア、内部不正、クラウドの設定ミス、ゼロデイ攻撃――それぞれに「専門の製品」が登場し、気づけば10製品・15製品を抱える企業が珍しくなくなりました。

課題 登場した製品カテゴリ
Webアクセスの制御 SWG(Secure Web Gateway)
クラウドアプリの可視化 CASB
リモートアクセスの安全化 ZTNA(ゼロトラストアクセス)
端末の異常検知 EDR
クラウド設定ミスの検出 CSPM
ログの統合監視 SIEM
ネットワーク経路の最適化 SD-WAN

これらは、それぞれが本物の課題に対する本物の答えです。でも、バラバラに入れると管理コンソールも、ログも、ポリシーも、全部バラバラになる。


第3章|SSEとSASEとは何か――「統合」の第一波

こうした問題への最初の答えとして、2019年にガートナーが提唱したのが SASE(Secure Access Service Edge) です。

ひと言で言えば、「ネットワーク機能とセキュリティ機能を、クラウドサービスとして一体化する」 という考え方です。

SASEを構成する要素は大きく2つに分かれます。

ネットワーク側:SD-WAN 従来のルーターは「決まった経路にトラフィックを流すだけ」でしたが、SD-WANはトラフィックの中身を見て経路を振り分けます。「SalesforceへのアクセスはインターネットへDirect、社内基幹システムは専用線経由」といった判断をリアルタイムで行い、回線障害時には自動で切り替える。いわば**「賢いルーター」**です。

セキュリティ側:SSE(Security Service Edge) CASB・SWG・ZTNA・FWaaSの4機能をクラウドで一元提供するのがSSEです。ZscalerやNetskope、Palo Alto Prismaが代表的なベンダーで、すべてのトラフィックをクラウドのセキュリティノードに通すことで、場所を問わず同じポリシーを適用できます。

SASEはSD-WANとSSEを統合したもの。SSEはそのセキュリティ部分だけのサブセットです。

SD-WAN SSE
SASE
SSE単体

落とし穴:SASEは「機械を設置する」ものではない

よく誤解されるのですが、SASEはクラウドサービスなので「SASE専用機器」をオフィスに設置するわけではありません。必要なのは、①既存ルーターをSD-WAN対応機に更新すること、②社員PCにエージェントソフト(例:Zscaler Client Connector)をインストールすること、この2点が主な作業です。リモートワーカーはオフィスを経由せず直接SASEクラウドに繋ぐため、VPNが不要になるのも大きなメリットです。


第4章|現実の企業はSSEから入る

「ではすぐSASEを入れよう」とはならないのが現実です。

SD-WANはネットワーク全体の刷新を意味するため、既存のルーターベンダー・専用線契約・IT部門の体制すべてに影響します。大企業では半年〜1年以上かかることも珍しくない。

一方でSSEは、既存のネットワーク機器をそのままにして、セキュリティだけクラウドに移すことができます。「まずZscalerでSSEを入れ、後からSD-WANも統合してSASEに移行する」という2段階アプローチを取る企業が今、急増しています。

実は、SD-WANをまだ導入していない企業のほうが多数派です。本社集中型のMPLS専用線構成を10〜20年使い続けている企業は非常に多く、「壊れていないから触らない」状態。多くの企業にとって現実的な着地点は「SSE+既存NW」であり、それは正しい選択です。


第5章|製品乱立問題――「入れすぎ」の代償

SSEを入れた。EDRも入れた。SIEMも入れた。IDaaSも入れた。CSPMも入れた――。

気づくと管理コンソールが6つ。セキュリティアラートが一日に数百件。対応できる人間は1〜2人。これが今、多くの企業が陥っている「セキュリティツールのスプロール化」です。

具体的にどんな弊害が出るか。

① インシデント対応が遅れる 攻撃の全体像を把握するために、複数ツールのログを手作業で突き合わせる必要がある。その間に攻撃は進む。

② 運用できる人材が育たない 製品ごとに専門知識が必要なため、中堅・中小企業では社内で運用しきれない。「入れたけど使いこなせていない」状態が生まれる。

③ コストが青天井になる ベンダーごとにライセンス費・保守費・構築費が発生。気づけばセキュリティ予算の大半が維持費に消える。

④ 製品間の連携が取れない A社の検知アラートをB社の製品で自動対応させようとすると、API開発と追加費用が発生する。「繋がっているようで繋がっていない」。


第6章|プラットフォーム統合――次の波

この製品乱立問題への答えとして、大手ベンダーが進めているのが**「プラットフォーム化」**です。

プラットフォーム カバー範囲
Palo Alto / Prisma SASE+XDR+CSPM
Microsoft Security Entra(ID)+Defender(EDR)+Sentinel(SIEM)
CrowdStrike Falcon EDR+SSE+SIEM

1社のプラットフォームにまとめることで、管理コンソールが一元化され、ログが統合され、製品間の自動連携が動く。運用担当者の負荷は劇的に下がります。

ただし、プラットフォーム化にも落とし穴があります。

ベンダーロックインのリスクが高まります。1社に依存すると、そのベンダーが障害を起こしたとき全部止まる。2024年のCrowdStrikeの大規模障害では、世界中の企業のPCが一斉にブルースクリーンになりました。あの事件が示したのは、「統合の恩恵と、単一障害点のリスクは表裏一体」という現実です。

また、「何でもできる」は「何かに特化している」より劣ることがある。特定の機能ではベストオブブリード(各分野の専門ベンダー)のほうが優れているケースも多く、「全部1社にする」か「最良の製品を組み合わせる」かは、組織の規模・体制・リスク許容度によって判断が分かれます。


第7章|結び――「何を入れるか」より「どう運用するか」

セキュリティの世界で今起きていることを整理すると、こういう流れになります。

クラウド化・リモートワーク普及
従来の「社内=安全」設計が崩れる
課題ごとに専門製品が登場 → 製品乱立
SSE/SASEで「ネットワーク+セキュリティ」を統合
それでも残る運用の複雑さ → プラットフォーム化へ

あなたの組織に、こう問いかけてみてください。

  • 「今、何製品のセキュリティツールを使っていますか?」
  • 「インシデント発生時に、誰が何の画面を最初に見ますか?」
  • 「ツールは入っているのに、運用しきれていないという感覚はありませんか?」

もし答えに詰まるなら、それが課題のありかです。

セキュリティは「入れた製品の数」では測れません。攻撃を受けたとき、どれだけ速く気づき、どれだけ速く動けるか――その一点で測られます。製品を入れることはスタートラインに過ぎない。どう運用するか、誰が動くか、ログはつながっているか。

プラットフォーム統合という流れは、技術トレンドではなく、「運用できる組織になる」ための現実解です。ツールの数を増やす前に、まず今あるものがちゃんと動いているか――そこを見直すところから始めてみてください。

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