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【2026年版】エージェンティックAIで急拡大するメモリ市場 ―― DRAM・NAND・HBM需要予測と価格動向を整理する

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市場調査会社のTrendForceは2026年5月29日、世界メモリ市場の予測を上方修正したと発表しました。

Agentic AI Drives Structural Expansion in Memory Demand, Global Memory Market Projected to Reach US$1.28 Trillion by 2027, Says TrendForce

AI開発の重心が大規模なモデル学習から推論中心のエージェンティックAIへ移るなかで、メモリ需要が構造的に拡大しているという見立てです。供給不足は短期では解消しにくく、価格の上昇局面が続くと想定されます。2026年の市場規模は前回予測の5,516億ドルから8,893億ドルへ、2027年は8,427億ドルから1兆2,800億ドル超へと引き上げられました。背景には、推論処理の反復化、サーバー構成の見直し、クラウド事業者の設備投資拡大という連動があります。

今回は、市場予測の上方修正の中身、DRAMとHBMを押し上げる推論需要の論理、NANDの成長領域、そして、今後の展望について取り上げたいと思います。

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2年で倍増する市場予測の中身

TrendForceは今回、メモリ市場全体の規模感を一段引き上げました。2026年の予測は5,516億ドルから8,893億ドルへ、2027年は8,427億ドルから1兆2,800億ドル超へと修正され、年間成長率はおよそ44%とされています。

この修正幅は、単年度の需給調整というより、需要の土台そのものが切り上がったことを示しています。半導体メモリは長く好不況の波が大きい市況産業とされてきました。価格は供給側の投資サイクルに引きずられ、数年単位で上下する構図が続いてきたためです。

足元で起きているのは、その波形が崩れる可能性です。AI関連の需要が在庫調整を上回る速さで積み上がり、供給側が増産しても逼迫が続くと見込まれています。市況の谷を前提にした調達計画は、前提から見直しが必要となりつつあります。

推論の反復化がDRAM需要を押し上げる

需要拡大の起点は、AIの使われ方の変化にあります。エージェンティックAIの推論処理は、単発の問い合わせから連続した反復サイクルへと移行しているとTrendForceは指摘しています。

ここで鍵を握るのがKVキャッシュです。文脈窓(コンテキストウィンドウ)が大きくなるほど、保持するKVキャッシュの容量も比例して膨らみます。これを再計算しようとすると、計算コストは指数関数的に膨張します。そのため、キャッシュを効率よく保持・管理することが推論性能を支える条件となり、HBMやDRAMへの需要を直接的に押し上げる構図が生まれています。

学習用途であればGPUとHBMの組み合わせが議論の中心でした。推論が主役になると、文脈を保持し続けるメモリ容量そのものが性能のボトルネックとなります。需要の質が変わったといえます。

CPU対GPU比の見直しとサーバーDRAM

変化はメモリ単体にとどまりません。エージェンティックAIの処理は、スケジューリングやデータ前処理、メモリ管理といったCPU側の負荷を押し上げています。

その結果、次世代AIサーバーではCPU対GPUの比率が、従来の1:8から1:4以上へと移りつつあります。NVIDIAのNVL72ラックでは1:2の構成が採用されているといいます。CPUの搭載が増えれば、それに付随するサーバーDRAMの容量要件も拡大します。

この変化は、調達数量と契約価格の双方を支える方向に働きます。GPUの台数だけを見ていると、サーバー1台あたりに必要となるメモリ総量を読み違える恐れがあります。AIインフラの設計思想が、演算性能の追求から、演算とメモリの均衡を取る方向へ移りつつある状況です。

HBM増産が生む汎用DRAMの逼迫

供給側にも連鎖が及んでいます。HBMの生産はウエハー消費量が大きく、その拡大が汎用DRAM向けに使える生産能力を圧迫しています。

需要が拡大する局面でこの圧迫が重なると、供給者側の価格交渉力が増します。TrendForceは、こうした上昇圧力が2027年まで続くと見込んでいます。DRAM市場の予測は2026年に6,187億ドル(前年比303%増)、2027年には9,033億ドル(前年比46%増)まで拡大するとしています。

ここに需要家側の難しさがあります。HBMを優先して確保しようとする動きが、汎用DRAMの調達環境をさらに厳しくするためです。短期の値ごろ感で発注を遅らせる判断が、後に高い調達コストとして跳ね返る可能性も想定されます。価格と数量を切り離さずに考える姿勢が求められています。

NANDを押し上げるCSP投資とトークン消費

NANDフラッシュにも同じ駆動力が及んでいます。世界の主要クラウド事業者9社の設備投資は拡大が続き、2026年の伸びは79%、設備投資集約度は34%へ高まると見込まれています。需要に追随する増設から、長期の競争優位を見据えたAIインフラ投資への移行が読み取れます。

背景にあるのもエージェンティックAIです。AIエージェントの企業利用が広がり、利用の多い層では従来の4倍ほどのトークンを消費するといいます。AI生成コンテンツの複雑化も、トークン消費を加速させています。

HBMは大規模展開にはコスト負担が重く、HDDはアクセス速度と消費電力の制約から、リアルタイムのAIデータセンター用途には向きにくいとされます。その間隙を埋める形で、SCM SSDやHBF、SLC/pSLC SSDといった高性能ストレージが、推論・学習・エージェント処理の各層へ広がっています。NAND市場は2026年に2,706億ドル(前年比280.7%増)、2027年には3,794億ドル(同40.2%増)へ拡大すると予測されています。

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産業構造と国際競争への波及

これらの数字が示すのは、メモリが演算の脇役から、AIインフラの性能と経済性を決める中核部材へ位置づけ直されつつある状況です。HBM、DRAM、NANDが同時に逼迫する局面は、過去のメモリ市況とは異なる様相を示しています。

供給はサムスン電子、SKハイニックス、マイクロンの上位3社に集中しています。設備投資のサイクルは長く、増産には時間がかかります。需要側のクラウド事業者が長期契約で容量を囲い込む動きが進めば、後発の調達者ほど数量と価格の両面で不利な立場に置かれかねません。

日本にとっては、後工程や材料、製造装置といった周辺領域に強みがあります。HBMの実装や先端パッケージングは、こうした技術が価値を発揮する領域です。メモリ需給の構造変化を、自国産業の立ち位置を捉え直す機会として読み解く視点が求められています。

今後の展望

メモリ市場の拡大は、半導体業界の一時的な好況という枠を超えつつあります。推論の反復化、サーバー構成の見直し、CSPの設備投資、トークン消費の増加という複数の要因が連動し、需要の土台そのものを押し上げているためです。

この連動が続けば、価格上昇は2027年まで及ぶと見込まれます。需要家にとっては、調達戦略を価格変動への対応から、容量確保を前提とした中期計画へと組み替える必要が出てきます。クラウド事業者と同様に、メモリ容量を経営資源として位置づける発想が問われる場面が増えるでしょう。

供給側では、HBMと汎用DRAMの能力配分、NANDの技術階層化といった選択が競争力を分けます。日本企業にとっては、後工程や材料での強みをAIインフラの価値連鎖にどう接続するかが課題となります。

メモリを単なる部品ではなくAI時代の戦略物資として捉え直し、調達と投資の両面で先手を打てる企業が、次の競争環境で優位に立つことになるでしょう。

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