オルタナティブ・ブログ > プロジェクトマジック >

あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

研修室と現場とのギャップについて、あるいはギャップを埋めるのを丸投げするな!

»

世の中に社会人向けの研修は無数にあるが、全ての研修は「ギャップ問題」から逃れられない。

つまり、
・トレーニングルーム(そこで語られる理論や実例や演習)

・仕事の現場
との間には、様々な意味でのギャップがあることだ。


例①講師が話の前提としているビジネスモデルと自社のビジネスモデルは違う。
⇒どうやら講師は暗黙の前提として、製造業をイメージしているようなのだが、自分の会社はサービス業なので、いまいちピンとこないんだよなぁ・・。

例②講師が知っている組織と受講者の組織はカルチャーが全く異なる
⇒リーダーシップについて語っているが、そもそもウチの会社、リーダーシップを発揮しようとすると煙たがられる文化なんですけど・・。

例③講師が前提としている能力と受講者の能力が違う。
⇒ファシリテーションの技法として、論点の整理法を解説しているのだが、受講者はそもそも他人の話を正確に聞き取るのが困難だったりする。が、講師にとってはそれは当たり前過ぎて、受講者がそこで躓いているとは思いもしない・・。


こんな感じでいくらでも挙げられるのだが、「トレーニングルームと現場とのギャップ」は色々な切り口で、無数にある。

とはいえ。ギャップと言うと「けしからん」と聞こえるかもしれないが、当たり前のことでもある。研修には様々な人々が参加するし、講師はすべての受講者に合わせて説明することはできないのだから。

それよりも僕が気になるのは「そのギャップを埋めることを、受講者に丸投げしている研修ばかり」ということだ。

講師は(研修資料に書いてある)話したいことを一方的に話す。
受講者は話の内容を理解はする。
ただ、次の日に仕事の現場に戻ると、ギャップが大きすぎて、教わったことをどう適用すればいいか、途方にくれる。現場で講師が相談に乗ってくれる訳でもないし、たいてい同じ研修を受けた人もいない。
「昨日教わったことを、この現場にどう適用すれば効果的か?」は自分ひとりで考えたり、試行錯誤しなければならない。丸投げされている、というのはこういう意味だ。

そういう研修を繰り返し受けていると、「研修で教わったことを現場で試そう」というマインドが根こそぎ失われてしまう
習ったことは習ったこと。わかりやすかった。面白かった。いい話を聴いたなー。さて、明日からはまた仕事だ・・。と。
大企業で社内研修を企画しているある方は「教えたことが"溶けて"しまう」と表現していた。その感覚、すごく分かる。
趣味のカルチャーセンターじゃないんだから、これだと研修を受ける意味が全くない。


このギャップがあること、そして自分自身も丸投げにしていることに気づいたのは、確か20年くらい前だったと思う。
例えば「プロジェクトの進め方」というトレーニングを1日かけて実施した時のこと。午後になってから気づいたのだが、そもそも受講者のほとんどはルーティーンワークばかりやっていて、「プロジェクト」を自分で立ち上げたことがないのはもちろん、配属されたこともなかった・・。
これではギャップが大きすぎて、仕事に活かしようがない(典型的な受講者ミスマッチ)。

もうちょっとマシな例として、「ファシリテーション入門編」を教えた時もギャップに気付かされた。トレーニングルームでは皆さん、真面目に演習に取り組んでくれた。ファシリテーションの有効性も身にしみた。
でも「明日、ウチの課でややこしい相談をする時にファシリテーターになれるか?」を想像すると、全くやれる気がしない。トレーニングルームとギャップが大きすぎるのだ。

それ以来、トレーニングを設計する時、ひいては人の育成について考える際に「トレーニングルームと現場のギャップを丸投げしない」が最大のテーマになった。
このブログの残りのパートで、その工夫をいくつか紹介しよう。


【1】現場で"こっそり"適用する方法をちゃんと伝える
一番分かりやすい例は、先にも触れた、ファシリテーション文化が全くない現場で、ファシリテーションする方法だ。
僕らはこれを「隠れファシリテーション」と呼んでいる。

いまこのキーワードで検索すると色んな人が「隠れファシリテーション」について書いていて、結構知られた概念になってきているようで、良いことだ。
(白川が最初にブログに書いたのは2011年なので、さすがにこれが初出だと思う)
黒子として会議を仕切る術、あるいはスクライブ(板書)入門


もう少し詳しく知りたい人は、同僚の榊巻が書いたこれ↓が分かりやすい。

「世界で一番やさしい会議の教科書」

せっかくファシリテーションを学んだのに、なぜ隠れないといけないか。それはトレーニング(や本)で語られている世界と、実際の現場に大きなギャップがあるからですね。
「私がファシリテーターやります!」と部長や課長を差し置いて、シャシャリ出るのは普通のサラリーマンに厳しい。実際には部長や課長は議論をリードする能力がないのだから、ファシリテーションを学んだ人がリードした方がいいんだけれども。


【2】プロジェクトの現場で教育する
「囲われたトレーニングルームで方法論を教え込む」というスタイルそのものを破壊してしまう方法だ。
まずガチな変革プロジェクトを立ち上げる。そしてそれを推進するのに必要なノウハウを必要となる直前に渡していく。プロジェクトを前に進めるために必要なので必死に吸収するし、トレーニングルームと現場(プロジェクト)とのギャップが少ない。そしてすぐに試せる。
だから教育効果はとても高い。「いつかどこかで役に立つかもしれないから、学んでおけ」とは大違いだ。

これについては大事過ぎて、1冊本を書いた。
「リーダーが育つ変革プロジェクトの教科書」



【3】ディスカッション型のトレーニングにする
本当はこれについて説明しようと思って文章を書き始めたのだが、前置きだけで普段のブログ記事くらいの分量になってしまった。
要は「受講者はテキストを事前に読んでおき、トレーニングの時間はディスカッションにあてる」という方法です。うちの会社(ケンブリッジ)のトレーニングはこの形式が最近かなり増えてきた。効率もよく、深く学べるからね。

で、ディスカッションを深めることで、ギャップを埋める。
とはいってもピンとこないだろうから、次のブログでその実態について、具体的な事例を元に書きます。

続きはこちら

Comment(0)