オルタナティブ・ブログ > プロジェクトマジック >

あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

高齢を理由にトップ人事に反対するのは年齢差別なのか?あるいは組織を若く保つ理由

»

五輪組織委員長が川淵さんになるのかまだ不透明みたいですね。
一人のJリーグファンとして川淵さんが発揮してきたリーダーシップについては、強くリスペクトしている。
全部が川淵さん個人の功績ではないにしても、
・チーム名に企業名を入れさせない
・最初は東京を拠点にするチームを作らない
・立ち上げ期のマーケティング方法
・チームは株式会社にして財務の透明性を
・どんどんチームを増やしてどこにでもプロチームを
・Jリーグ100年構想の先見性
など、創世記のJリーグはその名のとおりに100年の土台となる素晴らしい仕事をしてくれたし、その結果として僕らファンに毎週末の喜び(と悔しさ)をもたらし続けている。

だがそんな僕ですら「森さんの後任候補が川淵さん」という話を聞いて「もしかして80歳以上しか委員長になれない、みたいな内規があるの???」と思ってしまった。

だが、こういうことをうっかりSNSなどに書くと炎上のリスクがある世の中だ。
「男女差別だ!と弾劾するのと同じ人が年齢差別している!」とか「多様な人材が参加する社会づくりを阻害する」という意見が結構強くなってきた。僕がフォローしているTwitterやFacebookだと、女性差別がダメなのは言うまでもないからか、そちらの声のほうが多いくらいだ。
だが僕自身は、この意見には同意できませんね。
女性が重責を担わない社会を変える必要はもちろん強く感じるけれども、世の中の多くの役職はもっと若い世代が担うべきだと思う。アレとコレは別だ。僕自身はこれから老いていくので、ポジショントークとは逆の主張になる。


僕が「もっと若い世代に」と考える理由は、現在、公的な役割にあまりにも老人が多いから。政治も民間企業も。これをある程度是正したほうがいい。
明治維新期や戦後の歴史を見ると、数十年先を睨んだ素晴らしい仕事が多いが、これは社会が変わったので、一気に世代交代が進んだことと相関がありそうだ。今はそれと真逆になっている。
ただし、今が変革期だから若い人を登用すべき、という主張ではない(もう50年以上ずっとメディアは「今は激動期!」と言い続けている)。そうではなく、戦争や革命がなく、強制的な世代交代がないからこそ、意図的に世代交代をする必要があるのだ。
そもそも変革期に限らず、組織は変化し続けなければならない。そして変化するためには、リーダーに精神的若さが必要だ。精神的若さとは、成功体験やしがらみにとらわれずに将来を構想する力、それを断行する力だろうか。技術や世の中の変化を織り込んだゼロベース考える力と言ってもいいかもしれない。

実年齢と精神的若さは必ずしも一致しないが、ある程度は相関する。少なくとも80歳の人に新しい世界は作れない、といいきっていいんじゃないかな。
川淵さんだってJリーグを無理やり作り上げたときの彼ではない。または、彼は今も当時の彼のままなのだが、世の中は変わっている。単純に新しい世界観を知らないし、理解できないし、仮に頭で理解していても肌感覚とまでは染み付いていないだろうから。
今回の発端になった「女性は会議での話が長い」という発言だって、森さんが今の僕ぐらいの年だった35年前には、特に問題にはならなかった。内輪でちょっと際どい話をして一体感を高める効果も狙っていたのかもしれないが、そういう行動自体が許容されない時代だ。「新しい価値観が染み付いていない」というのはまさにそういうこと。

もしかしたら「一番優秀な人、エネルギッシュな人をトップに据えるのではなく、年の功でみんなをまとめられる人、周りをかき乱さない人をトップに据えたほうが物事がうまくいく」と考えられているのかもしれない。
もしそういう力学でおじいちゃんばかりが組織のトップに推挙されるのであれば、そういう組織の「空気」自体を変えなければならない。
そういう空気をまとっている会社はやはり、大胆な全社最適な意思決定や痛みを伴う改革をできないからだ。もしかしたら五輪の組織委員会にそんなものは必要ないと思われていたのかもしれない。でも「中止か否か」「そもそも何のためにやるのか?」「中止する痛みを最小化するためのIOCとのガチ交渉」「スポンサーへの説明責任や金額交渉」など、タフな状況での舵取りに必要なのはそういう能力じゃないかな。

などと普段から思っているので、もちろん自分の会社ではなるべく若い人の意見を取り入れたい。マネジメントメンバーを若々しく保つための仕掛けも考えている。まあ55歳くらいを過ぎると、仕事はもちろん続けるけれども、会社全体の舵取りからは退くみたいなイメージだろうか。
ということをこの数年考えているところに、「新任も80歳オーバー」というニュースは、一体どこの星の話ですか?という感覚を覚える。
この辺の感覚、どれくらいの人と共有できるんだろうか?

Comment(0)