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クリエイティビティとは脱思考停止のことである、あるいは仕事におけるちょっとした工夫について

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「仕事をもっとクリエイティブにできたらいいよね」というゆるい秘密結社(笑)が社内にある。活動もゆるめなのだが、そこに集った人々と
「クリエイティブなことをやったら、もっとみんなドヤった方がいい」
「クリエイティブなことを清々しくみんなにアピールする掲示板を作ろう」
みたいなことを話した。

そこで、マトリクス大好きおじさんである僕が
・真面目←→ゆるめ(ガチに仕事に直結することか、遊び半分か)
・重い←→軽い(大掛かりな取り組みか、ちょっとした工夫か)
という2軸を考えて、クリエイティブな成果を自慢する掲示板を作ることにした。

マトリクスを考案したら、それが面白いマトリクスになるかどうか、まずは自分たちでいくつか出して確かめることにしている。その時にみんなが書いた付箋は、例えば・・

【真面目×重い】
・デジタルマーケのセミナー新しく作った
・戦略プロトタイプを絵に描きまくった
・本書いた

【真面目×軽い】
・グラレコを仕事に活用した
・方法論の定番一覧表にちょっと列を追加した
・インターンをGoProで撮影、編集1時間で即アップ
・方法論についてのトレーニングを久しぶりに改編した

【ゆるい×重い】
・オフィス作った
・社員旅行の新しいスタイルをやりきった!
・チャットボットの勉強会やった

【ゆるい×軽い】
・ケンブリッジ20周年年表作った(クリパ用)
・日報に毎日川柳書いた
・社員旅行のチーム用にTシャツ作った


僕がマトリクスを作るとき、メッセージを込めることが多い。
この時は「クリエイティビティを自慢すると言っても、凄すぎなくていいよね」というメッセージだった。例えば本を書くとか「戦略の絵を書く」みたいなことって、あからさまにクリエイティブだし、立派だ。
だが、それってハードルが高すぎる。そういう重いクリエイティビティに溢れた会社もいいけれども、少なくとも今の僕らには、「社員が自分の現場で考えた、ちょっとした工夫や人を楽しませること」も十分尊い。そういうのが3倍増えたらもっといい会社になれるし、もっとお客さんに貢献できる。なにより、現場でいろんな面白いことが日々行われる会社に勤めたいと思いますよね?
という訳で、「真面目×重い」以外のクリエイティビティも奨励したいし、みんなに自慢して欲しい。そういうのもっと増やそうよ。


さて、こうやってリストアップされた「ちょっとクリエイティブなこと」を眺めながら「クリエイティビティってなんだろう」と考えた。
「これまで誰も見たことがなかったモノを出現させること」だと重すぎるし、仕事の現場だとそこまで創造的なものは受け入れがたい。
必ずしも絵を書くとかデザインみたいなビジュアルな要素が必要という訳ではない(本はビジュアル要素薄めだ)。
「イノベーションのような新しい金儲けの種を作る」という要素はあってもなくても良い。
一人でやってもいいし、他の人を動かして成し遂げてもよい。
「どこかですでに書かれている様な話をまとめた本を書くのはクリエイティブか?」
「警察幹部の自宅に張り込んで得たリーク情報で記事を書く新聞記者は、クリエイティブな仕事か?」
みたいな疑問もある。
クリエイティブな仕事って憧れる人が多いけど、こう考えていくと意外に難しいですね。

結局の所、僕が考える「クリエイティブな活動」とは、
「現状を思考停止的に受け入れず、ゼロベースで考えた結果、これまでとは違うことをやること」
である。


例えば「方法論についてのトレーニングを久しぶりに改編した」を例にとろう。
これは元々、僕が入社した頃から新入社員向けにずっと行われているトレーニングで、ウチの会社の方法論の歴史や構成を説明したものだった。
ずっと行われているのだから、自分が講師を担当することになっても、自分が教わったときと同じように既存の資料を説明すれば責任は果たせる。講師自身が100%理解できてない所もあるだろうが、口八丁手八丁でどうとでもなる。
でも一度立ち止まって、
「そもそも、だれでも理解できるように方法論とは何か?を説明してないよね」
「彼らが今後仕事しながら方法論をうまく活用できるようになるためにどんなガイドが必要か」
「数年後、彼らが方法論のつくり手になるために必要なことは?」
を考えるところからクリエイティビティは始まる。

ところで、僕は「思考停止」という現象に特別な関心を持っている。(前に記事も書いた)
いま、これを書きながらようやく自分でも理解できてきたのだが、思考停止はクリエイティビティの一番の敵だと思う。なにしろ現状を受け入れずにゼロベースで考えることからクリエイティビティはスタートするのだから(あくまで僕の定義では)。これをやらずに「今までこうだから」「他の人もこうしているから」と現状を受け入れるのが思考停止だ。

だから僕は思考停止を憎んできたし、自分が思考停止に陥らないように特別な配慮をしてきた。

言うまでもなく、僕はクリエイティビティをデザイナーや作家など、特別な職業の人だけのものとは思っていない。経理部だろうが営業だろうがどこででも発揮する余地がある。いや、いい仕事をするためにはどんな部署だろうがクリエイティビティは必要だ。だからどんな仕事においても、思考停止は敵なのだ。

ちなみに。
「組織にどっぷりと浸かっていない人はクリエイティブになれる」とよく言われる。
「イノベーションを起こすのは、若者、よそ者、バカ者」なんてことも。
そのとおりだと思う。組織に浸かっていない人は「現状をありのままに受け入れて思考停止してしまう」から逃れやすい。
僕も今の会社にもう19年もいる。だから若者、よそ者の意見を大切にしたいと思うし、自分がバカ者になりたいとも思う。
少なくとも思考停止だけはしないように。

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