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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

面接で「コンサルタントになりたい?」と聞かれて意味が分からなかった話、あるいは肩書きは心底どうでもいい

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もう19年前の昔話なのだが、ウチの会社の採用面接を受けた際、当時の人事担当から開口一番「コンサルタントになりたいですか?」と聞かれた。
「何言ってんだこのヒト?」と思ったよね。

ウチの会社は「ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ」という名前で、ミドルネームはテクノロジー。だから、当時主流になり始めたWebを活用したビジネスモデル立案や、それを受けてのWebサイトの構築をガリガリやるんだと思って面接に臨んでいた。
実際には(僕個人に限れば)そういう仕事はあまりせず、業務改革を中心にやることになり、結局当時主流だったJAVAすら書かないまま終わってしまったのだが。


新卒のときはコンサルティング会社を1社も受けていないし、3年後の転職活動のときにも「コンサルタントになりたい!」という願望は全くなかった。単に、その時やっていたSEのしごとをもっと良い環境でやるなら、コンサルティング会社と呼ばれる組織に属したほうが良いらしい、という情報をもとに転職活動していただけだ。
前職ではできなかった「お客さんと対等なパートナーとして、より良いビジネスや業務プロセスやシステムについて、ガチで議論したい」というのが、僕の転職の主な動機だ。

だから「コンサルタントになりたいですか?」と言われ、まるで意味が分からなかった。
素直に答えれば「No」だろう。実際にその時にどう答えたか忘れたが、多分意味を聞き返したと思う。
コンサルタントというのは「お客さんから相談を受け、影響を与える人」という程度の意味だろうが、そういう意味なら、前職でSEをやりながら、そういう存在でありたいと思っていた。ある程度は実態も伴っていたと思う。単に要望通りにシステムを作るだけの職人のつもりは全くなかったから。
全ての候補者がコンサルワナビー(コンサルタントになりたくてたまらない人)とか、コンサルタントという肩書きに憧れていると思ったら大間違いですよ、と憤慨した。

結局、その質問にもめげずにウチの会社に入り、長く勤めている訳だが、今から振り返っても、「コンサルタントになりたいですか?」という質問の意図はよく分からない。
「SEやただの事務屋ではなく、コンサルタントという特別キラキラした職業にチャレンジする意欲があるか?」という質問だったのかな?としか思えないが、その手の意欲を面接で判断できるなんて幻想でしかない。意欲をアピールするのが得なだけの口先ワナビーを積極的に集めてどうする。

ITエンジニアの人からはよく、「コンサルタントを名乗る奴ら」への呪詛や軽蔑の声を聞く。
口だけの奴らとか、高すぎるとか、できもしないプランを作って去っていくとか。
こういう、肩書きでものを断定するのスタンス、あんまり生産的じゃないと思うんだよね。
もちろん「俺はコンサルタントだから」と肩書きでマウンティングしようとする奴はそれ以上にくだらない。


僕は「コンサルタント」になりたかったのではなく、お客さんといい関係を築き、いいプロジェクトを作りたかった。
「コンサルタントがクソ」なのではなく、ダメなプロジェクト計画を作った人が無能。
それだけのこと。

その面接から7年後くらいに、僕はお客さんと2人で本を書いた。その時のサブタイトルは2人で相談して「クライアントとコンサルタントの幸福な物語」とした。コンサルタントという肩書きから世間が連想するイメージではなく、「困難なプロジェクトを成功させる中で、共に作り上げた関係性」を皆に知ってほしかったからだ。
それは、僕が転職した時に追い求めていたこと、そのものだった。

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