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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

the Project、あるいは「自分のプロジェクト」を追い求める幸せについて

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僕はこれまでにいろんな小説に夢中になり、いろんなジャズにのめりこんだ。でも僕にとっては最終的にはスコット・フィッツジェラルドこそが小説(the Novel)であり、スタン・ゲッツこそがジャズ(the Jazz)であった。 (和田 誠、村上 春樹「ポートレイト・イン・ジャズ」)


これは村上春樹が「ポートレイト・イン・ジャズ」のスタン・ゲッツのページに書いた文だ。僕はこの1文がとても好きで、初めての本「プロジェクトファシリテーション」を書いた時にも最後のパートで引用させてもらった。
小説でも音楽でも、何かに深くのめり込むのは素晴らしい経験だ。もちろん僕も1人の本読みとしてthe bookがある。
そして僕らの人生で多くの時間を占める、仕事にのめり込むのも悪くない(もちろん程度問題だが・・)。僕の場合、仕事≒プロジェクトなのだから、僕にとって大事なのはthe Projectである。さて、いったいどれだろうか・・。


僕だけでなく、プロジェクトというワークスタイルが仕事の中心だという人は結構多いのではないだろうか。一つ一つの成果を組み上げていくIT業界や建設業界はもちろん、事業立ち上げや自社の業務改革に関わっている人、マーケティングキャンペーンに参加している人、はたまた出版社などもプロジェクトの集合体と言える。

だが、「これが俺の代表プロジェクトだ」と胸をはれるプロジェクトがある人は、数少ないように思う。僕も、初めて村上春樹の文を読んだ時は考えこんでしまった。そして「いまだそんなプロジェクトはやり遂げていない」という寂しい結論に至った。
それどころか、大学を卒業して10年の間は
「あの時書いた卒論以上に自分で誇りに思える仕事をやっただろうか?いや、社会人になってから全くやれてない。イケてねーなー、俺」
と思いながら生きてきた。あまりにもかっこ悪いので誰にも言わなかったが。
これを読んでいる皆さんは、the Projectと言えるものをお持ちだろうか?


何をもってthe Projectと思うのか、というのは完全に自分で決めることだ。
例えば、全ての人にとってスコット・フィッツジェラルドがthe Novelな訳がない。ちなみに僕は「グレート・ギャツビー」は全然良いと思わなかった。それと同じように、これこそが僕にとってのthe Projectだ、というのもその人の思い込みでいいんだと思う。
しかし他人に同意してもらう必要はないけれども、自分は騙せない。昔の僕のように「いい仕事出来てねーなー」と思ってしまえばそれで終わりだ。


自分がやってきた仕事をthe Projectとまで思えるために、一番大事なのは「自分の思い入れを込められたか」と「自分が出来ると思っていなかった事が(自分の成長や周りの助けのお陰で)やり遂げられたか」だと思う。
いくら一生懸命働いたからといっても、自分の何かがそこに反映されていなければ、「これこそが俺のthe Projectだ」とは思えませんよね。


さて、何をもってthe Projectと思うかは完全に自分次第なんだけど、参考までに僕が思う最高のプロジェクトの基準を挙げると、

・出来るのか分からない(出来ないと思っていた)ことを成し遂げてしまった
・それが大きなビジネスインパクトを持っている
・関わった皆が成長し、楽しんだ
・会社や部署の垣根を越え、One Teamを作れた
・「こういう仕事がしたい」と人々が思い、後々まで語り継がれる

ということだし、そういうプロジェクトに個人として、

・最初から最後まで関わった
・きちんと自分のやりたいこと(思い)をぶつけた

という関わりを持てたならば、the Projectになると思っている。


こういう、誇りに思えるプロジェクト体験を一つでも持っている人は稀だし、幸運だと思う。そもそもプロジェクトは成功率が非常に低いし、上記のように「大成功」するプロジェクトはそもそもセンミツ(1000回に3つくらい)と言っていいだろう。
加えて、一部参加だけじゃなくて立ち上げ段階から参加し、成果を出すまで見届けられることも稀だ。組織で働いている以上は異動はつきものだから。

そういう自分の努力や才能だけではどうしようもない運も味方につけて、the Projectを持てた人は強い。自尊心というのは他人と良い関係を結んだり、チャレンジし続けるためにはとても大事だから。
自尊心は「自分ってスゴい」と勝手に思い込んでも身につかない。the Projectみたいな手応えのある仕事をやり遂げることで、自分の内側に湧いてくるものだと思うのだ。


僕はコンサルタントという仕事柄、とても多くのプロジェクトに参加してきた。もちろん今も。
でも僕にとっては最終的にはあの本に書いた「古河電工人事BPR」こそがプロジェクト(the Project)である。
そして仕事人生を終えるまで、これは多分変わらないだろう。残念なことに、今の僕は1つのプロジェクトに100%専念する立場にないからだ。仕事をしている間、「どうしたらこのプロジェクトを成功させられるだろう」だけをずっと考えていていい、というのは今の僕にとっては手の届かない贅沢になってしまった。

その代わり、関わるプロジェクトが「自分以外の人たちにとってのthe Project」になるようにするのが、今の僕のミッションだと思っている。自分の会社の将来をかけている、お客さんのコアメンバーにとってのthe Project。ウチのコンサルタントにとってのthe Project。
もし、結果としてthe Projectにはならなかったとしても、青い鳥のように「今回こそ、自分にとってのthe Projectにするぞ」と思いながら仕事をする方が幸せだと思う。少なくとも、やらされ仕事からは脱出できる。
関わる人々がそういう前のめりな感じでプロジェクトに参加してもらいたい。

もちろんそういう雰囲気をつくるのだって、十分に難しい。1000回に3回よりはずっと多いが、それでも毎回、という訳にはいかない。
でも、せっかく縁があって一緒に働いているのだから、僕らが古河電工のプロジェクトで経験したような、プロジェクトを通じてのワクワクや戦友意識や達成感を感じてもらいたいと思っている。


僕は、「社会を変えようぜ」という大それた目標を掲げるのは性に合わない。それよりも自分のごく身近にいる周りの人々が、本当に思い入れを込められる仕事ができるようにしたい。
それがその人々の仕事人生を支えるモノになったら素敵だと思うし、そうやって一つ一つのプロジェクトを大成功プロジェクトにしていくと、いつかTipping Pointを越え、そういうプロジェクトがスタンダードになる時が来るのではないかと思っている。
そうなったらすごいと思いません?

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