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変革プロジェクトにITは不可欠か?あるいは金槌を買ってもらった子供の話

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1年半前に出した「業務改革の教科書」では、ITについてはほとんど触れなかった(全部あわせても3ページくらいか?)。ちょっと不自然なくらいにITには目をつぶって、ひたすら「業務をどう良くするのか」「そのためのプロジェクトをどう起こせばいいのか」を書いた。
ようやく書き始めた3冊目の本はITをテーマにしようと思っている。なので最近それっぽい本をよく読んでいるし、考える頻度も多い。


★ITを使うプロジェクトの割合は?
そんな折、採用の会社説明会で学生さんから「ケンブリッジはITを使ったプロジェクトは多いんですか?」と質問された。質問の意図はわからない。単なる確認かもしれないし、「ITを勉強するの大変そうで嫌だなぁ」かもしれない。どちらにせよ、ITにからんだ仕事かどうかで、仕事のイメージはずいぶん変わるだろうから、気になる気持ちは分かる。

回答としては、
・ほとんどITが関係ない仕事が1/3弱
・検討の結果としてITを変える/作る仕事が1/3強
・最初っからITをテコにした変革プロジェクトが1/3
くらいだろうか。もちろん時期にもよるけど(7年くらい前は一番下がもっと多かった)。

ITに関係したプロジェクトと一口に言っても、僕ら自身がシステムを構築する場合と、別のベンダーさんに作ってもらうのとでは、やることはずいぶん変わってくる。僕らの会社の場合、自分でシステムを構築する仕事はほうっておくとゼロになってしまうので、人材育成のためにかなり意図的に、自分たちで構築する機会を作るようにしている。自分でシステムを構築した経験がないのにITを人に作ってもらったり、ITを駆使した戦略を立てるのは無理があると思っているからだ。
とは言え、割合としては「作ってもらう」側の立ち位置の方がずっと多い。
この辺りは会社のドメインというか、「どういうサービスを顧客に提供しているか」による。会社ごとにずいぶん違うのではないだろうか。



★わざとITの構築にプロジェクトを寄せている?
最近はどうなのか分からないが、一昔前は企業の変革を相談されると、何でも「ERPパッケージを導入しましょう!たったの10億円で、経営のすべてが見えるようになります!」みたいな感じで巨額なITプロジェクトに落としこむコンサルタントがいた。
「クリスマスに金槌をプレゼントされた子供は、すべての物が釘に見える」という言葉を知っているだろうか。誰しも、自分の能力や手にした道具に応じて世の中を見る。
自分たちがITに知見がある場合、お客さんに「ITをテコにした変革」を提案したくなる、というケースはありうる。僕も社会人になった時に3年ほどSEをやっていた人間なので、こういうことがないようにかなり気をつけている。

もちろん、もっとストレートな理由もあっただろう。IT構築のプロジェクトにすると、は多くの人が動員され、大きなお金が動く。要は「ITプロジェクトに寄せないと、売上目標に達しないからIT構築をメイン施策にする」というゲスな話だ。
こういう話が各企業でちょくちょくあった訳だから、コンサルタントという商売の評判は一般的に悪い。まあ、そりゃそうだ。自業自得ですよね。


業務改革のプロジェクトでは、その会社を調べて抜本的に良くするための施策を色々探す。この時、僕自身がどういうスタンスか白状するならば「なるべくならITにタッチしない施策はないだろうか」と思ってます。
なぜかといえば、ITをいじるとカネと時間がかかるから。

変革プロジェクトをやる際に、ある程度初期投資が必要なのはしかたがないことだ。その結果業務効率が上がったり売上が伸びたりして、投資を回収できればいいだけのことだ。
だが、ITをいじると、途端に初期投資額が跳ね上がる。期間も半年、1年、2年とかかるようになる。投資を回収するプランを描きにくくなるのだ。
20年前ならば、今まで手でやっていたことを機械にやらせる訳だから、人件費はずいぶんと削減できた。でも今は主要業務はほとんど自動化されているから、それを別のITに置き換えたところで、それほど簡単には投資は回収できない。
僕がかつて描いたプランで最速の回収は1.5年かかるプラン。これは例外で、たいていは3年~5年くらいはかかる。
という訳で、役割の変更やルールの変更、教育、売り方の工夫など、あまりITに触らなくてすむ施策があれば、真っ先に検討する。



★とは言え、抜本的な改革はもうITを変えずには出来ない
にもかかわらず、先に紹介したように、僕らの会社でも2/3以上のプロジェクトでITを変革のテコとする。
なぜかといえば、今の企業にとって、ITは交換の効く単なる道具ではないからだ。

道具というより、ITは企業にとっての骨格とか神経みたいなものだ。体にしっかりと絡みついている。というか、体そのものである。業務を変えようとすると、骨格や神経に手を付ける大手術になってしまう。
そして、そもそも骨格が曲がっていること自体が、その会社の問題であるケースも多い。骨格であるITが長年の積み重ねでおかしな構造になっている。それに釣られて体全体がゆがんでいる。
今やっているプロジェクトがちょうどそんな感じだ。変なITの周りで、人間が苦労しながらITに合わせた仕事をしている。こうなると骨格を作り直す大手術を検討せざるを得ない。投資も回収しにくいし、そもそもいま大手術をする体力があるかも見極めなければならない。だからもちろん、「当面は凌ぐ」とか「小規模な手術ですます」というのも有効な選択肢になる。


という訳で、冒頭の「ITを使ったプロジェクトは多いのか?」という質問に対する答えは「結果として多くならざるを得ない」という感じだ。
逆に言えば、ITが全く分からない人が企業の変革を構想するのは、かなり厳しい時代になっている。
パリっとした変革プランを練ろうとしている時に「なんかITでこんなかんじにならないもんですかね~。ウチのITが癌な気がするんですけどねぇ~。誰かやってくれないかな~」とか言っていても、全く進まない。

・ITのどこが悪くて、どう変えれば良くなるのか
・やろうとしていることはITにどういう影響を与え、どれくらいお金がかかるのか
・どの新技術を使えば、経営がよくなるのか
・そのITのプロジェクトは本当にやりきれるのか

といった話は、プロであっても大変むずかしいが、逃げない姿勢を持ちたいものです。

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