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部下へ向かう時のマインドバランス、あるいはパフォーマンスに下駄を履かせる

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昨日はあるプロジェクトマネージャーのお悩み相談をした。

どうしても、部下であるメンバーに厳しくあたっちゃうんです。萎縮させてしまう。横で見ているお客さんからも「ちょっと厳しすぎない?」と言われちゃったりして。でも、プロとしてお客さんに良いサービスを提供するためには必要なことだと思うし、そういう姿勢をお客さんから評価してもらっている面もあるんですよね・・。


ウチの会社はサービス業だし、「ここまで品質上げればOK」が分かりにくい仕事なので、サービスレベルの見極めがグダグダだといずれ仕事を失う。でも、チームで働いている以上、人間関係も大事だし・・。という悩みですね。

そこで咄嗟にこんなモデルを考えてみた。

部下に対面するときのマインドバランス

以下のabcはどんな配分ですか?合計値10で表現してください。

a)品質維持: クオリティ基準を示し、到達していなかったら何とかする
b)成果の最大化: その部下の貢献を最大限引き出す
c)育成: その部下はどうすれば成長できるかな?

※a)は営業組織などでは品質ではななく売上金額のような数値になる


僕は管理職になりたての時は、a:b:c=2:3:5だった。
今は3:5:2になった。

その時相談に乗っていたマネージャーは「うーん、7:1:2くらいですかね・・。b)のパフォーマンス最大化ってほとんど考えていないです」と言っていた。つまり、プロとしての品質維持にすごく重きを置いているということ。
そして今の彼にとって、どのくらいのバランスが適切なのかをしばらく話しあった。


こういう相談にのるケースは多いのだけれども、そこで僕はこうしろ、ああしろ、と指示はしない。というか出来ない。何度もここに書いている様に、リーダーシップって、その人にあった形じゃないと絶対上手くいかないから。

そこで、その人にとって何がベストなのかを共に探っていくことになる。そういう時、僕はよくこの手の質問をする。「マインドバランスは何%ずつですか?」と。
もちろんスタンス、価値観みたいな話なので、正確に数値化するのは無理がある。だが敢えて数値化してみると、他の人と大事にしていることの違いが明確になる。自己評価と他者評価が食い違っていることが分かったりもする。
考えを進めるためのきっかけとしては有効だから、よくこういう問いかけをする。

僕自身の今のバランスは、
品質維持:成果の最大化:育成=3:5:2
である。

もちろん、相手が大人でタフな場合は品質維持(つまり、駄目出し)の局面が多くなるし、相手が若手なら成果の最大化や育成の要素が大きくなる。でも総体としては、このバランスだと自分で思っている。
ブログでは育成とか成長について書くことが多いのだが、実際に仕事をする時はあまり強く意識しない。何かを決定するときに「それも必ず考慮には入れる」くらいのものだ。

それよりもこの5年くらいで「成果の最大化」を強く意識するようになった。
人にはそれぞれ得意なことと苦手なことがある。スキルの高いひとと低い人がいる。その持ち味を活かし、最大のパフォーマンスを発揮できるようにする。
そのためには、「その人にできなさそうなことは予め僕が肩代わりして、実力に下駄を履かせてあげる」なんてこともするし、できなさそうなことは最初から振らない。得意な事が何か分からない時は、配置転換をしてみることもある。

つまりは「自分の能力を最大限発揮している状態が一番ハッピーだし、プロジェクトやお客さんにも貢献できるし、長期的には成長につながる」ということ。「いい仕事ができてるな、俺」という感覚が大事。

この感覚が持てているいるうちは自信も付くし、楽しいし、もっと工夫しようとか勉強しようとか思える。万一、長期的に成長しなくたって、ハッピーでその人なりにmaxな仕事ができているなら、上出来じゃないですか。

逆に、あまり自尊心が持てていない人に対して、毎日「ここがいけていない」「お前はココがダメだ」と言っていても、状況は改善しない。ますますイケていない仕事しかできなくなる。
本人もツライし、上司の方も部下が戦力にならないのだから、自分が楽できない。新しいことを始められない。悪循環なのだ。
だから、その人が(少し頑張れば)できそうな事をやってもらう。「本当はこんなこともやって欲しいな・・」と思うようなことは、やってくれるならウエルカムだが、やってくれないなら自分でやる。後で「本当は僕がやったこと、君にやって欲しいんだけどね」とは一言いうけど。


この辺については管理職になってから12年くらい、ずっと考えてきた。
最初は一生懸命、部下を育てようと現場で色々チャレンジした。だが、そのうち「部下を育てようというのは傲慢なのかもしれない・・速く育つやつは勝手に育つし、そうでないやつはそいつなりのペースで成長するだけのこと」という境地に達した。
「どうせ短期的には成長なんてしないから、今できる貢献をしてよ」と割り切った、とも言える。冷たい人間観かもしれない。

僕個人のマインドバランスから、少し大きな射程の話をしよう。
伝統的に、管理職になると人々は一番最初の「品質維持、量の達成」を重んじてきた。
「今期の売上未達じゃねえか。どうすんだ!」とか「まずはアポ取り100件やってから偉そうな事を言え!」とか。職種によっては「報告書の書き方がなっとらん、書き直し!」とか。「こんな低レベルで満足するな、ここまで背伸びしろ!」と、叱咤激励するのが仕事というか。

このスタイルは、努力の方向が見える状態の管理職のあり方としては正解だった。でも今、多くの組織が置かれているのは「どっちに向かって努力すればいいのか分からない」「何をしたらお客さんが喜んでくれるのか見えにくい」という環境だ。

こういう状況で成果を出そうとしたら、管理職の仕事は「どうすれば成果を出せるのか、教えてあげる」「成果を出しやすいように、環境を整えてあげる」という感じになるはずだ。「品質維持:成果の最大化:育成」のバランスでいうと、2番目。
営業課長を例に取れば「売上未達じゃねえか!」じゃなくて「売上達成できる作戦を一緒に考えよう」ということ。

当然、後者の方が難しい。自分のスキルが高くないといけないし、それを目の前の部下が実行できる形に噛んで含んで渡してあげる必要がある。
この15年でコーチングとかサーヴァントリーダーシップという言葉が定着してきたけれど、こういう時代の変化が底流にあるんだと思っている。
それができない管理職(上からの情報を伝達し、数値を集計し、未達を怒鳴るだけの管理職)はいなくてよくなった。かなりの部分を情報技術が肩代わりしてくれるようになったから。

部下のパフォーマンスを最大化できる管理職だけが存在価値がある。

※参考記事
優れたリーダーが途端に頼りなくなる現象について、あるいはリーダーシップ2類型

※この記事は先週投稿したものと全く同じです。ブログサービスの切り替えのため、再投稿しました。

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