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優れたリーダーが途端に頼りなくなる現象について、あるいはリーダーシップ2類型

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何をやればいいか分かる時と、分からない時がある。
なぜやるのか分かる時と、分からない時がある。

図にすると、こうなる。
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いま向き合っている仕事が、この4象限のどこなのかによって、必要なリーダーシップと、モチベーションの上げ方が違ってくる。

図にすると、こうなる。
2_2



★右上:何をやったら良いかも、なぜ自分がそれをやるのかも理解できる
特に何もしなくても、みんな頑張る。リーダーシップもモチベーション向上施策も不要。
 
 
 
★右下:何をやるかは分かるが、なぜ頑張る必要があるのかピンと来ない
⇒A)頑張っていこうよ~型

例えば営業の仕事なんかがこれ。
広告を100枠受注する。債権を1億売る。車を10台売る。
目標も示されているし、売るためにはお客さんに電話まくったり訪問しまくったり利点を説明しまくったりと、比較的努力の方向は分かりやすい。

でも、ずっとやっていると「ぼちぼちでいいかなぁ」「電話しても、お客さん冷たいしなぁ」と萎えてくる。「頑張っても給料上がらないしなぁ」というケースもあるでしょう。

こういう状況で、みんなを乗せるのが実に巧みなリーダーがいる。金融業界の優秀な支店長は「あの人のためにがんばろう」と部下が燃える様な人だという話はよく聞く。僕が知っている何人かの支店長さん(または元支店長さん)は、何より人間の器が大きい。

「みんながコツコツ広告を売った先には、こんな未来が待っている」というビジョンを掲げて、モチベーションをあげるのも、「なぜ頑張る必要があるか、分かってもらう」という意味で、この右下の象限の世界の話である。

この「なんで私がそこまでやらないといけないの?」をモチベートする話で凄いと思ったのは、コンビニ店長の揚げ物拡販の話ですね。
言ってしまえば、バイト達には店の売上なんてどうでもいいはずだ。別にコロッケ売った先のビジョンを語る訳でもないのに、信頼と雰囲気と楽しさだけでココまで乗せることができる。
 
 
 
★左上:重要性は理解できるが、どうやればいいのか分からない
⇒B)こうすれば上手くいく型

僕はどちらかと言うと、この象限でずっと仕事をしている。
プロジェクトは成功させたい。業務改革がうまくいったりシステムが完成すると、みんなにとっても会社にとってもhappyなことだと思う。

でも、一体どっちに向かって一歩を踏み出せばいいのかよくわからない。今日も一日頑張ってみたが、それが前に進んだのかが分からない。

こういう状況が長く続くと、モチベーションは上らない。達成感がないからだ。この時に「とにかく、ここは黙ってみんな頑張ってくれよ」とか「景気付けに飲みに行くぞ~」とか、人間性だけで勝負しているような大将に発破かけられても部下はシラケるだけだ。

それよりは、黙って行くべき方向を指し示して欲しい。
これさえ作れば夜が明ける、というものを見せて欲しい。
 
 
 
★左下:重要性も、方向性も分からない
難しい状況ですね。上で挙げた2つのリーダーシップ、両方が必要なんでしょうね。こうなるともはやスーパーマンにしかリーダーが務まらない。
 
 
 
 
★発揮すべきリーダーシップは、状況による
リーダーシップについて書かれた本は多いが、どうもこの2つのリーダーシップをごちゃごちゃにしている事が多いように思う。

僕自身について言えば、「頑張っていこうよ~型」のリーダーシップは全然ダメだ。そもそも自分がそういう方面でのモチベーションがない。みんなのモチベーションをあげるために何かカッコイイことを言うことも、ほとんどしない。そもそも器も大きくない。
こういう人は、右下の状況ではほとんど役に立たない。

逆に、今まで右下の世界で「あの人のために」と慕われてきたリーダーが、左上の環境にやってくると、しんどい事が多い。いくらみんなが一生懸命走っても、方向が間違っていたらいつまでたってもゴールにつかないからだ。

司馬遼太郎が日露戦争を描いた「坂の上の雲」を読むと、日本軍の理想的な大将は「部下に細々と方向性は示さないが、器だけはやたらでかい人」だった事がよく分かる。薩摩藩の伝統を引き継いだのかもしれない。

先行きが見通しにくい世の中で、「頑張っていこうよ~型」のリーダーが苦戦している、という構図が、日本企業の内部事情としてひょっとしたらあるのかもしれない。
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