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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

隙間産業としてのITコンサルタント、あるいは情シスが果たすべき役割

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前にも書いたが最近、情シス部門(情報システム部または情シス子会社)が果たすべき役割について、つらつらと考えている。

保守運用の話も悩ましいのだが、まずは僕の主戦場である、変革プロジェクトについて考えてみたい。

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★プロジェクトには3つの仕事がある

「経営」「業務部門」「IT部門」の3つが参加しないと、プロジェクトは成り立たない。
業務部門がプロジェクトへのニーズや業務制約を表明する。
IT部門がITで実現できる事やコスト、ITとしての制約を表明する。
そして全社最適の観点から、経営が意思決定をする。


僕は仕事柄、プロジェクトが形作られる前に相談に乗ることが多いが、大抵どこかのコミットメントが弱い。

経営がプロジェクトオーナーの形でプロジェクトに入っていないと、将来投資決裁を受ける際に、大抵つまずく。難しい意思決定もしにくいし、他部門との調整でもスタックしやすい。

IT部門から単独でシステム再構築の相談を持ちかけられた時は、業務部門のキーマンから話を聞き、プロジェクトに引っ張り込んだ。
そうしないと、「あなた作る人、僕食べる人。あなたが作ったものはマズくて食えない」と言い出す(いくら美味しく作っても)。

業務部門が業務改革プロジェクトを起こそうとしている時も、IT部門からの参加者をプロジェクトに入れてもらう。
大昔ならいざ知らず、ITをテコにしないで抜本的な業務改革をすることは、やはり現実的ではないからだ。
IT部門がいない場で「ウチのシステムってイケてないよね・・」と言い合っていても、何も変えられない。

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★経営は指示しまくらない
少なくとも日本の会社では、経営陣からの指示の元に業務とITが動く、というスタイルのプロジェクトにはならない。プロジェクトがトップダウンで始まった時ですら、そうだ。
実際にはプロジェクトで議論した事の承認を取りに行く、ミドルアップでプロジェクトは進む。それすら苦労する事が多い。経営陣がぬるぬると掴みどころがないケースだ。

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★三角形の空白地帯
経営陣がバリバリ指示をしないので、3つを繋ぐ人がいないケースが頻発する。こういうプロジェクトは悲惨だ。進まない。決められない。
形ばかりのプロジェクトマネージャーが任命され、それをやるはずだったとしても、機能しないならやっぱり結果は変わらない。

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★たまにいるスーパーマン
「この方にはかなわない・・」というお客さん側のプロジェクトマネージャーがたまにいる。
大抵、それまでのキャリアで修羅場をくぐった方。例えば、経理のプロジェクトをやった時のプロジェクトマネージャーは、赤字の現地法人に飛び込み、立て直した経験をお持ちだった。
こういう方は、本来門外漢のはずなのに、必要とあらば3つを繋ぐ位置に立てる。
経営マインドがあり、業務知識があり。知らないはずのITでも勘所だけは押さえるスマートさ。

こういう方が率いるプロジェクトはうまくいく。
でも、こんな人は滅多にいない。僕のキャリアの中でも、数人しかお会いしていない。スーパーマンを青い鳥の様に探し求めていては、プロジェクトはいつまでたっても成功しない。

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★隙間産業としてのITコンサルタント
そこで、この3者を繋ぐために、ITコンサルタントが雇われる事が多い。本来はあまり活躍の場が少ない、隙間産業なのかと思う。

この時に必要な能力は4つ。

1)経営視点
・全社最適か?
・長期的に最適か?
・お金の観点からも最適か?
・会社のビジョンや戦略と合致しているか?


2)業務視点
・全社として業務が滞りなく回るためには?
・業務として価値がある事、致命的な事、どうでもいい事の見極め


3)IT視点
・ITプロジェクトのべし、べからずを押さえている
・要素技術の中身ではなく、使い方、組み合わせ方を知っている


4)ファシリテーション能力
繋ぐ人なのだから、繋ぐためのコミュニケーション能力が必要だ。
1)~3)が必要なのも、繋ぐためには最低限、3つそれぞれの理屈や構造が分かっていないと会話できないからだ。
自分自身はそれぞれのスペシャリストでなくてもいいので、スペシャリストと会話が出来ればいい。相手から知識を引き出し、議論し、必要な時には説得できること。

それに加え、「プロジェクトワーク」をうまく進める術。経験でも方法論でもいい。この力がないと、プロジェクトをリード出来ない。


ITコンサルタントと言っても、単にあるパッケージの知識があるだけの人から、「ITにも詳しい経営コンサルタント」まで様々だが、プロジェクトを成功させるために雇うなら、こういった人じゃないと、あまり役に立たない。

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★IT部門がやればいいんでは?
さて、昔はITコンサルタントなんていなかった。そして多くの場合、IT部門がそれを担っていた。30年前から使っているシステムを拝見すると、非常によく出来ているし、システムを作りながら業務をバリバリ再定義し、整理をしていったんだろうな、と窺える。
ITコンサルタントにお金を払わないで、自社で出来るならそれに越したことがないはずだ。変革プロジェクトの成否は会社の命運を決める事が多いのだから。


ある程度中立的な人が、真ん中に立った方が皆をリードしやすい。だから、真ん中をIT部門が全う出来るならば、いっその事、ものを作る役割はベンダーに投げてもいい。

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真ん中をIT部門がやるのはスキルセット的に難しい、という声もよく聞く。
「ウチには業務部門をリード出来る人材はいないです。ましてや経営をリード?」
「コミュニケーションって、ウチの部員が一番苦手なことですよ」
と言った具合に。


それでも、IT部門がこの役割をはたした方がいいと僕は思っている。

ネガティブな理由としては、右下で情シスが存在価値を示しにくい時代になったからだ。右下の仕事って、外から買って来たほうが安くて質がいいことが多いから。
ITの世界は技術の進歩が速い。それに比べて情シス部門がガッチリモノづくりや保守をしてしまうと、人材が特定の技術に染まりすぎてしまう。そうなると新しい技術を使おうと思った時には、今の人材が使えない。そうも行かないから、「発注屋さん」という役割のみを果たすようになる。残念ながら、その役割は価値が低い。真ん中に比べて。

ポジティブな理由は、IT部門の人の中に、真ん中のスキルやマインドを持った人もいることだ。そしてITが扱うデータの流れの視点から、全社の業務の全体像を深く理解している方も、いらっしゃる。
何より、「プロジェクト」という形態で働くことに慣れていることは大きい。プロジェクトが本質的に不確実だということ。
明日何をしたらいいか、毎日考え続けなければならないこと。
混成部隊をまとめ上げなければ、前に進めないこと。
こういうことを体感している強み。
最後に、外から来る僕らのような人間よりは、じっくりと会社を成功させるプロジェクトを作れる。


何とか、IT部門からそういう方を意図的に育成していけないだろうか。
遅すぎるということはない。
既に取り組んでいる会社はある。僕らもいくつかのアプローチで、それを支援している。具体的な話は気が向いたらまた。


★この↑話を新しい本に書きました!

Comment(2)

コメント

きむらよしひさ

結局は人事なのかな。この人はって人材をローテーションさせて育てる。その余裕が企業には必要なのかも。長期的視点に立てばね。

白川

木村さん、こんにちは。
僕も、この話の足枷は人事だと思います。特に、ローテーションの重要性を多くの人が圧倒的に過小評価していると思いますね。
これはこれでそのうち記事にしたい。。

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