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なぜデスマが後を絶たないか?あるいは成功プロジェクトを作るための身も蓋もない事実

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プロジェクトは完了させてナンボである。目指していたゴールを達成し、成果を刈り取るためには、まずはやり遂げなければならない。
しかし、プロジェクトをやり遂げるというのは、それほど簡単ではない。終わる目処がつかないプロジェクトをデスマーチ、通称デスマと言うが、キャッチーな略語が出来るくらい、ありふれたことである。


デスマはつらい。
プロジェクトの完成を受けて、やろうとしていたことができないのでつらい。
お金がダバダバと流れ出ていくのでつらい。
(それを負担するのは発注者側の時と、ベンダーの時と、両方の時があるが)
後ろ向きの仕事なのにエースを投入しないといけないのがつらい。
終電すぎまで残業したり徹夜したりデートをキャンセルしないといけなくてつらい。
いつになったら終わるのか分からないからつらい。
そもそも今やっていることが何かの役に立つのか分からなくなっているからつらい。
ひょっとしたらもうダメかも。何もかも無駄なのかも。そう思いながら1週間に85時間働き続けられるほど、人間は強くないだろう。

デスマに参加して、仕事が何もかも嫌になってしまう人もいる。最悪、自殺してしまう人もいる。
大げさではなく、国家的損失である。



で、なぜデスマが発生してしまうのか。
原因は色々あるだろう。
SEだった頃は、ほとんどのダメプロジェクトは、データベース設計がクソな事に起因していることに気づいた。オープン系の開発が盛り上がりつつある当時としては、あながち外れてはいなかったと思う。
無責任な仕事のとり方をする営業さんがデスマ・クリエイターだと言う意見も根強い。確かに、自分でプロジェクトを切り盛りする能力もなければ、切り盛りする責任もない人がなぜ営業をやっているのか、僕も不思議に思う。
でも、営業さんが売上あげたさに無理な受注をしたとして、赤字プロジェクトにはなるとは思うけどデスマ(完成の目処が立たないプロジェクト)になるかどうかは、また別の話だと思う。


「プロジェクト管理をちゃんとやらないから」というのは、間違いなく正解の一つだろう。
プロジェクト管理というのは、平たく言えば「プロジェクトが予定通り行われているかチェックし、予定とずれている場合は対策を打つ」ことだ。チェックし続けなければ、プロジェクトがとんでもない方向に進んでいても(または全く進んでいなかったとしても)、気づけない。気づいた時にはデスマである。

ただ、僕は少し別のことも考えている。プロジェクト管理というのはあくまで「計画通り行われているか」という話であって、「そもそも成功できる計画か?」への感心はやや薄い。

でも、ダメなプロジェクトを多く観察していると、
「そもそも、計画が全然だめじゃん」
「計画通りにやれっこない」
「計画通りにやったとして、それって嬉しいの?」
「計画がない」
「何も考えずにゴールだけ決めた」
などなど、計画自体がゴミ、というケースが実に多い。
これでは、プロジェクトマネージャーが一生懸命プロジェクト管理をしても、あまり意味が無い。
ゴミな計画を粛々と進めたら、ゴミ溜めに到達するのが関の山だ。


つまり、プロジェクトは計画の建て方が命なのだ。

僕らのお客さんの言葉を借りれば「プロジェクトの成否は、最初で9割決まる」




僕もそう思う。
もちろん、良い計画を立てたって、それをやりきれるとは限らない。当たり前のことだ。
だが、「この計画をやりきれる様な人を集め、お金を集め、合意をとっておく」のも、良い計画のうちだ。

そして、もし良い計画が作れなかった時は、Goサインが出ない様なハードルがあること。
「良い計画があったら絶対にプロジェクトが成功する」とは言えないが、「良い計画がなければ絶対にプロジェクトが失敗する」とは言える。デスマが発生するのは、本格的にプロジェクトを始める時に、ストップをかけなかったからだ。
そこまで含めて「最初で9割決まる」と言える。


ただし。
本当に悩ましいことなのだが、良いプロジェクト計画をたてることは本当に難しい。
なにしろ、プロジェクトというのは一回こっきりの仕事である。誰もやったことがないことの先を見通して、計画をたてるのは難しい。計画の良し悪しを判断するのも難しい。やったことがないのだから。これが、デスマが続々と発生し続ける理由である。
みんな一生懸命仕事しているんだから、同じことを延々と繰り返すのであれば、いつかは上手くいく様に改善できる。でもプロジェクトはそうはいかない。いつだって初めてなのだから、毎回失敗することなど、ザラに起こる。



いまから18年前、新入社員研修でのこと。
社長から「どんな話を聞きたいか」と言われたので、当時その会社にあったデスマの話を聞かせて下さい、とお願いした。社長が新入社員にするには、あまりかっこいい話ではないが、それでも包み隠さず話してくれた。
デスマ特有の「どよんとした雰囲気」の話。「プロジェクトマネージャーを変えないで下さい」とお客さんから言われていたのに、約束を守れなかった話。デスマを立て直すためにやったことの話。立て直すために投入したエースがかっこよかった話。

その研修の感想文に「僕はデスマの火を消すスーパーヒーローを目指しません。最初から火が出ない様なプロジェクトを粛々と作れる人を目指します」と書いた。
書いたら後で、その会社のかなり偉い人がわざわざ僕のもとに来た。そして「新人なのに、威勢のいいこと言うやないか。やれるもんならやってみい」と言っていった。懐かしい。


その時立てた目標は未だに変わっていない。
火事を消す人よりも火事を出さない人を目指しているのも変わっていないし、完璧な「火事を出さない人」になれた訳でもない。あの時、偉い人が忠告してくれたように、それはとてもとても難しいことだった。

でも去年、「業務改革の教科書」を出すことができた。
これは「成功するプロジェクトの立ち上げ方」を書いた本でもある。最初そういうタイトルを考えていた。
18年たっても、未だに野望は実現できていないが、「火事を出さないプロジェクトを作る」への僕なりの回答を示すことができた。

発売してまだ半年ですが、ありがたいことに第4刷が先日決まりました。
買ってくださった方、ありがとうございます。

Comment(3)

コメント

highcastle

まんま、当社の子会社に当てはまります。。。(*_*;
そもそも、始めてしまったことが失敗で、始めた人は、それなりに優秀だから、護るためにも、やめられないってことが多いと思います。

そもそも、できて嬉しいか?っていう視点は大切で、システム屋が作って満足っていうのは、ダメでしょうね。
なので、できても、ダメだと思ってます。

ardbeg32

「良い計画がなければ絶対にプロジェクトが失敗する」けだし名言だと思います。
しかし悲しいことに「こうやれば絶対にプロジェクトは失敗する」というのもいくらでもあるんですよねorz
で、えてして「こうやれば失敗する」というのはプロジェクトのGO-NOGOのハードルを決めるエライさんが主因だったりするわけで。
だからこそ、技術屋のあずかり知らない所で失敗のデスマーチの号砲が鳴り、レミングのようにみんな崖っぷちに向かって全力疾走を強いられるのだと考えてます。

火消しなんてのは成功するかどうか丁半博打みたいなもの。会社の火消しって有名人は、技術が素晴らしいんじゃなくて、応援要員を呼ぶのが上手いとか火消し予算を引っ張ってくるのが上手いとか博打にならないようにする物量作戦の名手だったり(それはそれで才能ですが)。
凡人の私としては、エライさんが火付けをしているのを傍観しつつ、すこしでもボヤが減るようにあちこちで小細工をするしかありません。火消しもロクにできず、火事を防止することも出来ず、私の人生ってなんだったっけとじっと手を見る今日このごろです。

きむらよしひさ

>そこまで含めて「最初で9割決まる」と言える。

私もそう思います。失敗してしまう直接の原因はプロセスの未熟さ、不完全さ、欠陥なのですが、結局のところ経営者、上級管理職の能力によるところが大きいというのが私なりの結論です。

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