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あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

重大決定に必要なのは夢とソロバン、あるいは論と情

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★費用対効果分析
プロジェクトを仕事にしていると、会社にとっての大きな決断のタイミングにお付き合いすることが多い。というか、その決断をベストな決断にすることこそが、コンサルタントの仕事と言ってもいい。
会社は組織だから、通常はプロジェクトメンバーが作った案を、経営会議に上申して、OKをもらったりNG食らったり・・という形で意思決定はくだされる。

ビジネスはロジックの裏付けがあって行うものだ。だから大きなプロジェクトの意思決定は必ず、
現状調査⇒分析⇒施策検討⇒将来像を描く⇒ロードマップ作成⇒費用対効果分析
という流れで、ロジカルに進める。

最後に挙げた費用対効果分析は、
「今からやることをお金で表現すると、どうなっていくのか」
というシミュレーションのことである。

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最終的には、こんなグラフを書く。

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要は「このプロジェクトをやると、こんなにバラ色の未来が待っています。儲かりまっせ!」ということだ。
折れ線グラフが0を超えることを「黒転」と呼ぶ。累積投資を回収できたということだから、当然早ければ早い程よい。

この単純なグラフの裏には、詳細なコストや利益のシミュレーションExcelが埋まっている(グラフ自体も、本物はもっと緻密になる)。

ただ、いかに緻密にシミュレーションしても、しょせん将来のことである。どこまで行っても「予測」にすぎない。だから、こういった予測はこれからのガンバリや環境変化によって変わるものですよ、ということを示すためにも、いくつか条件を変えたバリエーションを用意する。
・ベストケース(一番楽観的な予測)
・中間ケース(一番ありそうなケース)
・ワーストケース(一番悲観的な予測)
の3パターン用意することが多い。

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例えばベストケースだと
・○○の作業効率が30%アップする
・××の投資には5000万必要

なのに、ワーストケースだと
・○○の作業効率は改善しない
・××の投資には8000万かかってしまう

といった感じで、予測に使う変数を変えていくのだ。
ちなみに、この絵だとワーストケースでも3,4年後には投資を回収しているが、実際のプロジェクトだと、ワーストだと永遠に回収できません、といったグラフになることもある。

パターンを作っていく過程で、リスクの洗い出しをすることになるし、「ワーストにならないために、こんな手を打とう、あれをやっておこう」と事前に手を打てるのもいい。

★夢とソロバン
本格始動の前に費用対効果を時間をかけて分析するのは、この様にとても意味があるのだが、落とし穴がある。
この分析は数字集め作業も、モデル化も、あれこれシミュレーションしてみるのも、とても大変で、プロジェクトの一時期はかかりきりになる。
そして夢中になっていると、肝心の「なぜこれをやりたいのか」が頭から抜けていってしまうのだ。そして経営会議の時に、それを訴えるのがおろそかになってしまう事が実に多い。

リクルートで、「じゃらん」や「フロム・エー」など数え切れない程の事業を立ち上げた、くらたまなぶさんという方が「MBAコースでは教えない「創刊男」の仕事術」という本で、事業を立ち上げる時にスポンサーに向けて行うプレゼンで必要な3つを挙げている。

右手に夢、左手にソロバン、心にジョーダン

人間「儲かりまっせ」だけでは、走り続けることが出来ないのだ。
・この事業をやると、どんなお客さんが笑顔になるの?
・世の中どうしたいの?
という夢こそが、プロジェクトのガソリンになる。

★論理と感情

同じ事を言い方を変えてもう一度。

大きな意思決定になればなるほど、人は論理だけでは決断できないのだ。

経営者の方々も人間だから、論理の前に感情で判断を済ませてしまうことも多い。
さっきのマトリクスで言えば、「エイヤッ」も意外にバカにならない、ということだ。

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たぶん、

ロジックは嘘をつくが、人は嘘をつかない

ということなのだと思う。

経営会議の様な場で、担当者達が緻密に作ってきたロジックに嘘が巧妙に紛れていても、その場では中々見抜けないものだ。嘘というと言葉がキツイが、なんとかプロジェクトを実現させたいと願っている担当者があれこれ前提を操作してしまうことはあり得る。
ハッキリ言って、費用対効果分析の数字を「ちょっと良く見せる」ことなんて、やろうと思えば簡単にできるのだ(やらないけど)。

でも、夢を語っている人の嘘や自信の無さを見破ることは、それに比べればやりやすい。
そいういうことなのではないだろうか。

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