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人材粘着競争あるいは、僕はなぜ今の会社にいるのか

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オルタナブロガー小俣さんの「退職される側の戯言・・・」という記事を読んだ。
僕は雇用されているサラリーマンである一方で、マネジメントメンバーの一員として自分の会社を経営しているつもりなので、雇用する側でもモノを考えようとしている。
このテーマを考えるにあたっては、社員と会社、双方の視点を持つことが大事だと思う。

★人材粘着競争
企業は製品開発、コストカット、製品調達など、実に様々な局面で競争している。その結果が「結局、お客さんから選んでもらえるの?」に表れ、存続できるかどうかが決まる。

そういった様々な競争局面のなかでも、どんどん重要度が上がっているのが、
優秀な社員が
「会社に居てやってもいい」と思ってもらえるかどうかの競争
だと思う。仮に「人材粘着競争」と呼ぼう。

「居てやってもいい」とは随分高飛車な感じですね。そう、人材が流動化し、結果として企業から社員へパワー(交渉力)が移動したのだ。

★人材流動化によって、社員のパワーは強まった(ただし優秀者に限る)
覚えている人は少ないと思うが、昔は転職にはどこか後ろめたいというか、失敗感ただようイメージがあった。「いい大学⇒大企業⇒終身雇用」とうルートから外れてしまった・・という。
それがいくつかの変化によって、随分事情が変わったように思う。

透明性:
どれくらいの能力のある人がどういう仕事を任され、いくら位お給料を持っているのかについて、情報を入手しやすくなった。

成功事例:
ビジネス本、自己啓発本の流行で、「転職してこんなにやりがいのある仕事に!」といったストーリーが溢れる様になった。
このことは「誰でも転職すればハッピーになれる」ことは意味しないはずだが、転職のイメージはつきやすくなった。

人材の市場化:
転職エージェントも多くなり、中途採用に積極的な会社も増えた。昔に比べ、魅力的な転職先が増えたのだ。

かくして、現状に不満があったら転職して新しい道を探ることが、現実的な選択肢になってきた。良いとか悪いとかの問題ではなく、実際そうなっている、というだけの話だ。

★人材粘着が競争のフロントエッジへ
マーケティングの世界では
「顧客がある商品にロイヤルティ(忠誠心)を持ってくれるか」
「顧客にとって、何か気になる存在にいかにしてなるか」
が重要なテーマである。
これは「そもそもお客さんというのは移り気なものだよね」という認識から出発して、どうしたら少しでもうちの会社に粘着してもらえるか?を考える思考方法である。

それと全く同じことが、社員についても起きている。
今、企業が本当に必要としているのは、一握りの超優秀な人材、明日を切り開いていけるような人材である。こういった人材は、転職先には事欠かない。人材が流動化した結果、顧客だけでなく、社員も移り気なものになったのだ。
だが、企業が存続し、成長するためにはそういった人材が絶対に必要である。そういう人材をいかに会社に粘着させるか。これこそが、今の企業で最も大事な経営課題なのだ。

言い直すと、

「人材市場で引く手あまただからいつでも辞められるけど、ココがいいから辞めない!」と、優秀な社員にいかに思ってもらうか。

またはちょっと違う方向として、

「自分の能力は市場価値はあまりないかもしれないが、この会社であれば良さを認めてくれる。自分を十分活かせる会社はココしかない!」と、優秀な社員にいかに思ってもらうか。

でもいい。

★ではどうすれば?
社員の粘着度を高めるために、他より高い給料に頼るのはあまり得策ではない。社員の側からすると、給料は高いほうがいいに決まっているし、会社としてもなるべくたくさん支払いたいものだが、給料自体は粘着度を高めるのには役にたたない。きりがないからだ。どれほど高い給料を払っても、人材市場には何らかの事情で相場よりもかなり高い給与を提示する会社は常にある。
給与の高さだけに惹かれてその会社に来た人は、遅かれ早かれ同じ理由(もっと高いオファーが出た)で、去ってしまうだろう。

それよりもっと原始的で安上がりな事が有効だと思う。
・良い仕事(ワクワクする仕事、やっていて楽しい仕事、成長出来る仕事)
・良い人間関係(信頼しあえる仲間、ともに成長を目指す仲間、目標になる人)
・不愉快さの排除(くだらないルールがない、他より極端に悪い待遇ではない)

もちろん、考えようによってはとても難しい。例えば僕らコンサルティング会社の場合は、社員がやりがいのあるプロジェクトに取り組めるよう、マーケティングに力を入れることになる。売上のためと言うよりは、ワクワクする仕事を、自分を含めた社員に提供するために。
そして、良い人間関係を築くためには採用や教育にも時間をかけなければならない。

★僕はなぜ今の会社にいるのか
最後に自分の話をしよう。
コンサルタントというのは、比較的独立しやすい商売である。フリーランスとして活躍している友人も多いし、「なぜ独立しないんですか?」と聞かれることもある。多分独立しても、自分と家族が食べていくくらいは稼げると思う。はやりのノマド?
では僕が今の会社をなぜ辞めないか。

1人で出来る仕事って、たかが知れていると思っているからだ。
自分がやりたいことを実現するためには仲間がいる。だから独立しても、結局は会社を作ることになるだろう。そしてせっかく会社を作るならば、僕の信念としては、誠実でプロフェッショナリズムにあふれつつも、楽しい会社にしたい。

ここまで考えると「あれ?それもうあるじゃん」と思うのだ。
僕にとっては、会社を辞めてそういう環境を探すよりも、今の会社をもっといい会社にするほうが手っ取り早い。
つまり、会社は「いつでも辞められるけど、ココがいいから辞めない!」と僕に思わせることに成功しているのだ。今のところは。

願わくば、他の社員もそう思ってくれていると良いのだけれども。

※おまけ
本論には関係ないことだけれども、僕の転職経験は1回です。
その時に考えたことについては、以前ブログに書きました。
「12年前に会社を辞めたときに考えたこと、あるいはその後の現実検証」

Comment(1)

コメント

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私も「高い待遇はあまり効果がない」ということは感じます。待遇は結構簡単に慣れてしまうんですよね。高くなった瞬間にうれしくても、当たり前になってしまうものなのです。それよりも、やり甲斐ですよねぇ。
それと同時に、人間関係も影響が大きいですね。できる人同士は意外と反発し合いますしね。
この難しい問題には答えがないと思っていますが、どう転んでも良い方向に向かえるように準備しておくことが一番でしょうね。

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