チームで仕事をする上でなぜリスペクトが大事か、あるいは情けは人のためならず
★リスペクトという価値観
ウチの会社では社員が持つべき価値観(Core Value)をいくつか掲げている。Honesty(誠実であれ)とかTake Initiative(主体的であれ)とか、基本的なことばかりである。
その中の1つに「Respect」があるのだが、これが僕ら日本人にはちょっとわかりにくい。うちの社員以外の人にとっても大事な事だと思うので、少しこの場で考えてみたい。
「万人の尊敬を集める人になりなさい」という意味ではもちろんない。そんな、心がけだけではなんともならないことを価値観として掲げても意味はない。
「他の社員やお客さま、ベンダーさんのことを凄い!と尊敬しなさい」という意味だろうか?多分これも違う。全ての人を尊敬するなんて、宗教家みたいなことはできない。プロジェクトにはいろんな人がいるし。これまた出来ないことを掲げても意味はない。
そうではなくてリスペクトとは、
「仕事で関わる全ての相手のことを、1人の頑張っている人間として尊重する」
という意味、というのが僕の解釈である。全ての人を凄いとは思えないけれども、全ての人を尊重することはできる。
みんながそうやっていたら、お互い気持ちよく仕事ができる。プロジェクトはたいてい、立場やカルチャーが異なる人々で混成チームを組む。だから、お互いを尊重しあうことは、気持よく仕事をし、生産性を下げないためにとても大事なはずだ。
★情けは人の為ならず
「情けは人の為ならず」ということわざは、誤った解釈が広がっていることで有名だ。
誤った解釈
「他人に情をかけるということは甘やかすことであり、結局はその人のためにならない」
正しい解釈
「他人の為を思って行動すると、巡り巡って自分のためになる」
「一緒に働いている仲間をリスペクトしましょう」というのは、この正しい方の解釈に似てるなぁと思うのだ。つまり、一見他人のために見えて、自分のためでもあるということ。
「相手を尊重する事」のブーメラン効果をいくつか挙げてみよう。
A)リスペクトしないと、相手から何かを学ぶことができない
尊敬していなくても、相手を尊重していれば相手から学べる。つまり相手の言っていることを一旦受け止め、それがどういう意味なのか考え、有益な部分を選びとるということだ。
尊敬していたほうがより多くを学べるとは思うけどね。
B)リスペクトしないと、知恵を引き出せない
誰かに質問する際に「あなたの意見はプロジェクトにとって有益だと期待しているんですよ」という態度をちゃんと示すかどうかで、聞けることの深さは違ってくる。
あるお客さんから「ウチの担当者レベル(管理職じゃないということ)にヒアリングする時に、さも貴重なことを聞いている様にしてくれるので、話す方も喜んでますよ」と言われたことがある。
業務改革のプロジェクトをやる上で、業務をやっている当人の意見は掛け値なしに貴重なのだから、当たり前のことですけれど。
もちろん、現場ヒアリングだけの話ではない。プロジェクトの舵取り、目指すべきゴールについて自分なりに結論を出しているつもりでも、まず聞いてみることは無駄ではない。自分の考えとは違う考えが聞けたら、それが一見ピントはずれに聞こえても、自分のアイディアと混ぜ合わせてナイスな新案が生まれることもある。
C)リスペクトは相手のパフォーマンスを上げる
自分がリスペクトされていると感じる状況と、されていないと感じる状況で、どっちがパフォーマンスが上がるか、考えてみよう。あなたが周りの人をリスペクトしないと、その人達のパフォーマンスは上がらない。チームで仕事をしている以上、それはいずれ自分の首を絞める。
★リスペクトは段々難しくなる
この話、キャリアが浅いうちは比較的簡単である。みんな凄く見えるし、実際に自分よりも能力が高いのだから、尊敬できる。
でも、自分の能力が上がるにつれて、やるべきことをやらない協力会社、詰めがあまいメンバーなど、プロジェクトには自分よりも能力が低い人(能力が低く見える人)や、やる気がない様に見える人が多くなってくる。
そういう段階に入って、なお相手を「尊重」しつづけられるか。それって、チームで成果を上げられるかの大きなポイントなんじゃないだろうか。リーダーシップのイロハの気もする。
★リスペクトとダメ出し
以前僕は、「あなたの作ったものはゴミである、あるいはプロとアマの分岐点」という記事を書いた。たくさんの「いいネ」という反応があった反面、多くの批判ももらった。その中には「一緒に働いている人をリスペクトしろよ」というトーンのものが多くあった。
つまり僕自身は、今日書いたことをあまり実践できていないのだと思う。
自分では「一緒に働いているあなたのことはリスペクトしています」と「あなたが作ったものがゴミだと思います」は切り分けているつもり。でも、こういうのって受け手がどう感じるかが大事だしね。
でも、自分にできていなくても「こうやろうぜ」と言ったほうがいいと思っているので(「自分を棚に上げて叱れ。あるいはフィードバックの心得9選」を参照)、書いてみた。
そして僕は「相手を尊重したい」と「自分たちが作るものにたいして厳しくありたい」を本気で両立したいと思っている。
まとめ
一緒に働く人達を尊重しよう。あなた自身のためにも。
今日はここまで。