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花粉症と腎臓病なおすのはどちら?あるいは現場と経営の見解の相違

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★腎臓の病気
学生時代に2ヶ月ほど入院していたことがある。
学園祭の委員をやっていて、色々無茶をしたら過労で急性腎炎という病気になってしまったのだ。簡単に言えば、腎臓は血液を濾過しておしっこを作る臓器である。そこがダメになったので、おしっこが作れなくなった。すると、顔がだんだんむくんでくる。
僕は自分の顔を普段から鏡で見ないので、異変に気がつかなかった。先輩に「おまえ、それ絶対おかしいから病院行かなきゃダメ」と言われ、病院行ったら絶対安静で即入院。

腎臓は大事な役割をもっている割に、ダメになっても痛いとかそういう自覚症状が全然ない。静かに機能低下していく。今から振り返ると、入院前にコンサート用のバカでっかいスピーカーを運んだ時、疲れやすかった気がする。そして僕は普段、二日酔いは全くしないのだが(二日酔いするほどの量を飲めない)、入院の前の日に一生で唯一の二日酔いをした。これも毒素を排出できなかったためだと思う。

この時に、自分の体がタフではなく無理が利かない事を学んだ。おかげで仕事を始めてから大きな病気は一度もしていない。
あと、入院のせいで単位を落とし、人より長く大学で学業にいそしむことができた。
ラッキー・・。まあ、その話はいいや。

★現場のヒアリングで聞ける課題
今日書きたいのは「プロジェクトで目指したいことは現場と経営層とで違うよね」という話だ。

プロジェクトの初期段階では、毎回必ず、仕事のやり方、ルール、システムなどを網羅的に現状調査する。それを土台として色々と分析し、「やっつけるべき課題」を明確にし、改革の打ち手としての「施策群」を見出していく。プロジェクトとは言ってみれば施策をいくつか束にしたものだ。

この調査・分析の段階では
・現場で実際に仕事をしている人の感覚(ココがマズイから何とかして!)
と、
・会社全体のことを考えて判断した「ココを真っ先に変えるべき」
が食い違うことがよく起こる。

「システムのこの画面の使い勝手が悪いので、こんなに苦労している」
「他社ではもっと良いのを使っていると思うんですよね」
「この制度が実装されていないので、手で管理している。大変。」
現場の方にお話を伺って出てくる、典型的な課題はこういう話だ。業務上で困っている事をお聞きしても、「システム使いにくいバナシ」になる事も多い。

一方で、経営視点で考えると本当に手を入れるべきは、
「同じ分量の仕事を、他社では半分の人数でやってますよ?」
「隣どうしの部署で、ほぼ同じ仕事を別々にやっている」
「結構なお金を払ってアウトソースしているのに、こちらの作業は削減されていない」
などなど、もう少し広い視点で見なければ分からない、構造的な課題であることが多い。

言うまでもなく、現場の方へのヒアリングは変革プロジェクトではとても大事である。
・課題以前に、プロジェクトの計画立案には「現状がどうなっているか」の把握が不可欠
・上記のような問題も、あまりにたくさんある場合は見過ごせなくなる
・本質的な課題を聞ける場合もある
・多くの関係者の意見を聞いた上でのプロジェクト計画にする必要がある
(聞くこと自体にも価値がある)

現場へのヒアリングは大事なので必ずやるのだが、だからといって現場の課題意識を片っ端から取り入れることが、変革プロジェクトにとって良いとは限らない。

上記の「経営視点で考えると本当に手を入れるべき課題」は、現場で日々お仕事をされている方々は気付かない事が多いのだ。
例えば「同じ分量の仕事を、他社では半分の人数でやってますよ?」について。
2倍の人数をかけているということは、それ程は忙しくなかったり、表面的な問題が起きていなかったりする。そうすると、そのことに対する課題意識は当然持たない。
だから「何か問題だと思っていることはないですか?」とヒアリングしても、出てこない。自覚症状を持ちにくいタイプの課題なのだ。

★花粉症と腎臓病
変革プロジェクトを議論していく中で、このギャップ感を常々感じていたのだが、先日「これって花粉症と腎臓病の関係に似ているかも・・」と思った。

花粉症は本当にツラそうで気の毒だ(僕自身は毎年プチ花粉症にはなるが、プチなのでツラさは本格的な方の比ではない)。花粉症は症状を日々実感するし、仕事にも影響しそうだ。でも、幸いな事に命に関わる病気ではない。
一方の腎臓病は自覚症状はないのだが、放っておくと死んでしまう。おしっこをつくれないのだから。

花粉症と腎臓病の場合は、両方なったとしても「どっちも直しましょう」という事になるのだろうが、変革プロジェクトの場合は「現場の要望を実現する」と「経営視点で効果の高いことをやる」のどちらかを選択する、という局面がしばしば訪れる。
完全な二者択一でなかったとしても、どちらを優先して先に取り組むのか?は常に判断する必要がある。
(僕は素人なので分からないけれども、花粉症と腎臓病に両方なったら、やっぱり腎臓病の治療を優先するのかもしれませんね。まあ、この辺はモノの例えです)

そして変革プロジェクトを考える際に、花粉症的な症状と腎臓病的な症状、どちらを優先して直すのか、というこのテーマには正解がない。
今の僕は、会社のお金を投資して変革プロジェクトをやる以上、会社としてキチンと成果を受け取れるようなプロジェクトにすべきだと思っている。それを担保するために費用対効果を分析する。
でも以前、システムをコツコツ作っていた際のモチベーションの源泉や判断基準は「現場の方にとって使いやすいか&今後メンテナンスする現場の方にとって分かりやすいか」だった。
そして今プロジェクトをやっていても、お客さんの偉い人が
「現場で働く人たちに良くなったね~、と言ってもらうのが一番ですから!」
とおっしゃるケースもある。これはES(従業員満足度)を高めることが経営の中で優先順位が高いということで、必ずしも間違っているとも言えない。

そういう場合でも「花粉症より腎臓病をまず何とかしませんか」と自分の意見を言って、議論はするけれども。

まとめ。
内蔵の病気は自覚症状がないことが多いから気を付けよう。そして現場と経営視点ではプロジェクトへの期待値は食い違うことが普通ですよ。
今日はここまで。

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