なぜファシリテーションは会社で使えないか、あるいはあなたが直面する4つのハードル
★ファシリテーションの浸透
ファシリテーションについては「どんなものか」「有効性」については知られてきていて、本もたくさん出ている。
今一度ファシリテーションについて定義しておくと、
「チームワークがうまくいくように、コーディネートし、前進させる方法」
という感じ。
コーディネートする対象をチームワークよりもっと狭い「会議」に限定して、「良い会議をスムーズにやる技法」という意味で使っている場合も多い。今日は僕も、この狭い方の意味のファシリテーションについて書こうと思う。
僕らの会社(ケンブリッジ)はアメリカから輸入したファシリテーションという概念を「プロジェクトにうまく活用する」という1点に特化して、いわばガラパゴス的に進化させてきた。
でも、もう少し幅広いファシリテーションの世界と交流を持とうと、日本ファシリテーション協会に遅ればせながら入った。そして当然ながら、ファシリテーションに興味を持っている方とお話する機会が増えてきた。
僕がお会いした限り、現時点でファシリテーションに興味を持っている方のバックグラウンドは、・ボランティア活動や街作りのコーディネーター
・教育関係者
・ビジネスマン
・ファシリテーションやコーチングの研修をビジネスとしてやっている方
というように、多様。
いずれにせよ、話好きで人付き合いが良く、アクティブに色々なことに興味がある、勉強熱心な方がとても多い。
普通のサラリーマンとして企業に勤めている方も多いが、受け身ではなく、会社を自分たちの手で良くしていこう、組織の中でチャレンジを作ろう、というマインドの方が多い。飲みながら話す内容も実に前向きだ。
★実際に活用されているか?
現状では、街作りや教育現場、研修などでファシリテーションが特に有効活用されている様に思う。ファシリテーションには「対話を促進させる」という効果があり、多くの人を巻き込み、意見を引き出すファシリテーション技法はこういった活動と相性がいいようだ。
企業においても、ワークショップ形式の研修や、普段は話しにくいことを議論するオフサイトミーティング(合宿などに行って、会社の課題や将来などについて話し合う場)などの非日常業務ではファシリテーションの活用が効果を上げている。ここでもキーワードは対話の促進だ。
ところが、普通の仕事(プロジェクト活動や日々の会議など)では、あまり活用が進んでいないようだ。
会議ファシリテーションの大きな目的は「対話の促進」と「ぶれない合意形成を短時間で作る」である。つまり、前者はどちらかというと達成されているが、後者はまだまだ、ということになる。普通の仕事の現場であっても「ぶれない合意形成を短時間で作る」ことのメリットは凄く大きい。僕のメインフィールドであるプロジェクトであれば、ぶれない合意形成は最重要テーマだ。
合意形成にこそ、ファシリテーションの価値がある。なのにあまり貢献出来ていないとしたら、とても残念だ。
★なぜファシリテーションは企業で定着しないか
「知識としてファシリテーションを知っているが、実戦できていない」という状態の典型例は、以下のような形だろうか。
・意欲的な若手/中堅社員が本や研修会でファシリテーションを学ぶ
・が、日々の業務では上役が会議を仕切っていて、出る幕がない
・ダラダラ会議にはウンザリしているのに、現状は変わらない・・。
・一度めちゃくちゃ生産的な会議の味を知ってしまったが故に、参加するのが非常に苦痛
いくら研修や本で知識としてファシリテーションを学び「凄く良いから是非自分でもやってみよう!」と思ったとしても、たくさんのハードルが待ちかまえている。
a)お手本がないのハードル
例えば「すぐれたプレゼンテーション」に触れる機会はある。セミナー会場に出かけていけば、10回に1回くらいはまねしたくなるようなプレゼンに出くわすことができる。
でも、ファシリテーションはそうではない。小学校の学級会以来、本当に生産的な会議に1回も出たことがない人も多いと思う。見て盗めないのは厳しい。
b)恥ずかしいのハードル
研修から帰ってきて「トレーニングで教わったので、今日は僕がファシリテーターやります!」と宣言し、他の人がポカンとする前で会議を効率的に仕切る、というのは非常にハードルが高い。かなり図太い神経を持っているか、普段から変わったことを言い出すのに慣れていないと、なかなかできない。
c)お呼びでないのハードル
上の2つのハードルを乗り越え、本人がやる気になったとしても、周りの方々が受け入れてくれるか、は全く別の問題だ。ファシリテーションはチームワークの生産性を高める技術だから、ファシリテーターが1人で頑張っても、生産的な会議はできない。場にいるみんなが乗ってくれないとうまくいかない。
普通の企業では、会議に上下関係が持ち込まれるのが普通だ。
「会議を仕切る人=偉い人、でしょ」
「上司を差し置いて・・」
という空気は高い壁になる。
d)場数を詰めないのハードル
というわけで、はじめの一歩が踏み出せない。経験を積みながらファシリテーターとして成長することも難しい。だからいつまで経っても出来るようにならない。悪循環だ。
★僕らはなぜファシリテーションできるのか
うーむ、こうして見ていくとなかなか大変ですね。
ちなみに僕らはファシリテーションを売り物にしているコンサルタントとして、毎日数回の会議をファシリテーションしまくっている。参加者もそれを受け入れてくれているので、プロジェクトでの会議は効率的。むしろ密度が濃すぎて、疲れる。
僕らがファシリテーターとしてやっていけているのは「周りの方がそれを期待してくれるから」だ。こいつらに会議の下駄を預けたら、うまく仕切ってくれるだろう。その分オレ達は中身の議論に集中すれば良いんでしょ、という期待感。
こういうのは企業の外部の人間で、しかもそれに対してお金を払っているから出来ること。企業で仕事をしている普通の社員とは立ち位置が最初から違う。
次回は、そんなシャイなあなた、普通の社員のあなたでも出来る「隠れファシリテーション」について書きます。
まとめ。
ファシリテーションをやってみたいと思っても、ビジネスの現場でファシリテーターになるのは結構大変。ファシリテーター側にもハードルがあり、受け入れる側にもハードルがある。
今日はここまで。