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ワインバーグの魔法あるいは僕が緊張しなくなったわけ

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★今日は、ずいぶん前にツイートした、師匠であるワインバーグへの感謝を込めた即興連ツイを転載する。僕の対人関係やプレゼンテーションは、彼のおかげでがらりと変わりました。

ワインバーグの魔法(1) 僕は8年ほど前からG・M・ワインバーグを師匠と仰いでいる。会ったことはない。たった数冊の本を読んで、勝手に弟子入りしただけだ。弟子の側の一方的な思いこみだけでも、師弟関係と、それからもたらされる学びは成立する。

魔法(2) 僕が彼を師匠と私淑する理由はたくさんある。なんと言っても、僕のコンサルスタイルの40%は彼によってもたらされたのだから(ちなみにもう40%はケンブリッジの方法論)。その中で1つだけ挙げるとすれば、「自分の内面を目の前の相手に伝える作戦」の有効性を教えてくれたことだ。

魔法(3) 例えば、目の前の相手(お客さんでも上司でも、誰でも)に対して腹が立ったら、それを隠すのではなく「今、あなたが言ったことを聞いて、腹が立ってきました」とOpenに言ってしまう。そういうコミュニケーションのスタイル。

魔法(4) 師匠はそれを「自分の内面と行動を一致させる」と表現する。自分のなかに怒りがあるのであれば、それを自覚し、行動に移し、表現してしまう。怒りだけでなく、混乱でも、悲しみでも「何も思い浮かびません」でもいい。「そんなことやれる訳ないじゃん」と思いますか?

魔法(5) でも、僕はだまされたと思ってやってみたわけです。こういう「今までの自分ならば、まるで理解できない事に踏み出せること」が師匠を持つことの利点。師匠を持たず、全て自分で正しいと思ったことだけをやっているうちは、成長の幅などたかが知れている。(以上、内田樹の受け売り)

魔法(6) 例えば「あなたが怒っているので困惑しています」と言ったとしよう。
反応例①「え、私は怒ってないですよ。」
反応例②「ああ、確かにカッとしてしまいました。申し訳ない」
どちらの反応も、こちらの感情を言わなかった時よりもずいぶんましなはずだ。

魔法(7) ファシリテーション中に議論が見えなくなってしまったら「今、話が錯綜していて、混乱しちゃいました」と言ってみればいい。会議の参加者は、もう少し整理して話そうと努力してくれたり、ファシリテーターの代わりに誰かが結論をまとめてくれるものだ。

魔法(8) 不思議な事なのだが、自分から「僕、混乱しています」と表明する人の事を、他の人は「バカでどうしようもないヤツだな」とは思わないらしい。本当にバカだったり、混乱しているならば、「混乱しています」とは言い出せないものだ、とみんな分かっているからだと思う。

魔法(9) この考え方を応用すると、大人数相手の講演でもし緊張していたら「僕チョット緊張しているんですよね」と言っても良いことになる。僕も講演中にトラブって「あれ?これは困りましたね」と口走ったことがある。慣れてなかった頃だから、口に出していなかったらパニックだったかも。

魔法(10) ところが、「そういうのもあり」というスタンスで講演しているうちに、不思議なことが起こる。そもそも全く緊張しなくなるのだ。この作戦が「魔法」だと僕が思う理由はココにある。単なるコミュニケーション・テクニックにとどまらず、自分自身を変える力があるのだ。

魔法(11) 「もし緊張しちゃったら、緊張していると言えば良いだけ」という余裕が、緊張を追い払ってくれるんだと思う。多分。全く同じように「本当に腹が立ったら、腹が立っていると言えば良い」と思っていると、我を忘れるほど人に対して腹を立てる事はなくなる。

魔法(12) そう言う理由で、今では「自分の内面を目の前の相手に伝える作戦」自体を使うことも少なくなった。だが、ワインバーグの魔法が僕の仕事人生を少しだけhappyにしてくれた事実は揺るがない。師匠、ありがとう。

★ちなみに、ワインバーグ本のオススメを
コンサルティングスタイルについては、
「コンサルタントの秘密」
「技術リーダーシップの人間学」
「コンサルタントの道具箱」
の3冊が代表作。

「コンサルタントの秘密」の冒頭に書いてあるように、「請われて、人に影響を与える人=コンサルタント」なので、職業的コンサルタントでなくても、読んでも損はない。
それぞれ、4回ずつくらいは読み直しているが、読むたびに発見がある。多分、読む側がだんだん変化しているので、同じ本でも読みとること、得るモノが毎回変わるのだと思う。
最初に読んだときに「自分の考え方と似てるな」と思ったのだが、今ではそれが、自分の元々のスタイルなのか、ワインバーグ師匠を自分がまねしているだけなのか、判別不能になっている。
弟子とは、そういうものなのだろう。

そして文章については、
「ワインバーグの文章読本」
が僕の唯一の教師である。

最初に読んだときは、自分が本を書くことになるとは全く思っていなかった。でも、関さんと「プロジェクトファシリテーション」を書こうという話になった時に、本の書き方のベースになったのはやっぱりこの本だった。

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