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自転車ロードレースあるいは僕の理想のチーム

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★ロードレースってみたことあります?
多くの日本人の目がナデシコに奪われている横で、僕はどっちかというとツール・ド・フランスを毎晩見ていた。世界最大の自転車ロードレースである。この大会を7連覇したランス・アームストロングの名前だけを知っている方もいるかもしれない。
今年は日本人選手は出ていなかったのだが(去年・一昨年は出ていた)、近年まれにみる激戦・逆転劇で熱くなった。

日本では自転車競技というと、屋内でやる競輪をイメージする人が多いが、ロードレースはその名の通り、公道を使って、150kmくらいの距離で争われる。ツール・ド・フランスの場合はそれが毎日1ヶ月続き、総合優勝が決まる。アルプスでは標高2600mの峠道も登るし、ひまわり畑をのどかに通過する時もある。
150kmも走るので、競輪のような筋肉ムキムキの選手が争う短距離走というよりは、マラソン選手のようなほっそりした選手達が争う、持久走のイメージだ。
ちなみに自転車をやると足が太くなる、というのは競輪からくる誤解で、普通は細くなります。持久走ですから。僕も自転車に乗り始めてからやせました。

マラソンやトライアスロンと大きく違うのは、自転車ロードレースはチームでやるスポーツということ。レースにもよるが、1回のレースには1チームから6人から9人の選手が参加している。
サッカーのようにチームで勝敗が決まるわけではなくて誰か1人が勝者になるのだが、そのためにはチームのバックアップが絶対に必要という、珍しい競技なのだ。誰か一人を勝たせるためにチームが協力するというか。

自転車ロードレースにおけるチームプレーは、僕の理想のチームにかなり近いので、今日はそれになぞらえて語ってみたい。
(レースの良い写真を持っていないので、典型的なレース風景のリンクを張っておきます

★みんなを引っ張るのはツライ
マラソンはどちらかというと個人競技なのに、自転車がチーム競技になるのは、風の影響が大きいからだ。自転車で時速40km~70km出すと、先頭を切って走る選手に比べ、2番手、3番手選手は半分程度の力しか必要としない。逆に言えば先頭を切って走ること、みんなを引っ張ることは2倍ツライということだ。
だから、最終的に勝利を目指すエースは、体力を温存するためにチームメートが引っ張ってあげる必要がある。いくらランス・アームストロングが凄いと言っても、チームメートなしでずっと1人で走ったら絶対に勝てない。
そして、エースじゃない選手が何人か代わりばんこに(ローテーションしながら)先頭をつとめることになる。

どんな組織でも、先頭を切って走るのは大変だ。僕は誰か一人をリーダーとして押し立て、全てを任せるのは組織設計として間違っていると思っている。プロジェクトで言うと、業務に詳しくてシステム構築力も秀でていて、調整能力も、書類作成もうまいスーパーマンをどっかから探してくるなんてナンセンスなのだ。
だれか一人が最終的な責任者になるにしても、みんなが自分の得意な領域で、代わりばんこにリーダーシップを発揮すればいい。そういうチームの方が絶対に強い。

★チームメイトが遅れたら、待つ
集団で走っていると、先頭以外は風の影響を受けない。一方で、パンクなどで遅れてしまったときに1人で走って集団に追いつくのはかなりしんどい。だからチームで大事なメンバーが遅れたときは、チームメンバーが何人か残って、集団に復帰するのを助ける。
義理と人情でやっているのではなく、冷静に、勝つための戦術としてやっているのだ。結局はその方がチームの勝ちに近づくから。

だれか一人が突っ走るよりも、多少ペースをゆるめてでもみんなで進んだ方が、結局はゴールに早く到達できる。そういう状況はプロジェクトでもあると思う。

★泥臭い仕事も評価
チームにはエースがいて、普通はエースが最後に勝つことを目指してレースを走る。だから、エース以外のメンバーは、エースの代わりに泥臭い仕事をやることになる。
・風よけとして先頭切って走る
・集団の後ろのサポートカーから水ボトルを9個受け取り、みんなに配る
・勝負所でエースの自転車が壊れたら、自分の自転車を差し出す
・ゴール直前でのつぶれ役
などなど。

ロードレースを見ていて関心するのは、こういう地味な仕事をやるアシスト選手の活躍も、キッチリ評価されることだ。アシストが良い働きをしないとエースは勝てない。それを見る人が理解しているからこそ、泥臭い仕事も評価される。

プロジェクトでの泥臭い仕事というと、
・ToDoリスト(やる仕事リスト)を300個くらいあげて、終わったら消し混む
・データが正しく移行されたかどうか、1件1件チェックする
・業務ルールが変わった際に、問合せ窓口となって社員にひたすら説明する
などがあるだろうか。

プロジェクトの最初に格好いい施策を立てて、役員に向けてプレゼンテーションするのも大事な仕事だが、プロジェクトが成功するためにはこういう泥臭い仕事も絶対に必要。
ロードレースと同じように、どちらもしっかり評価し、感謝しあいたい。

★チームの誰かが勝てればいい
エースが勝つのが普通だし、そのためにチームもアシストするのだが、レース展開によってはエース以外の選手に、チャンスがひょっこり巡ってくることもある。
そうなったらその選手を勝たせるために、エースも含めてみんなが協力する。要は、チームの誰かが勝てればいいのだ。

そういう精神を大事にするため、レース賞金は選手間で山分けになる。勝った選手やエースが独り占めするわけではない。みんなで勝利を目指し、勝てれば山分け。チームの利害と各選手の利害が一致するようにしているのだ。

まとめ。
スポーツの魅力を文章で語るのはなかなか難しいけれども、少しはチーム競技としての自転車ロードレースのおもしろさが伝わったでしょうか?
プロジェクトにおいても、こういうチームを作るのが僕の果てのない目標です。
今日はここまで。

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