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ヤバイぞアンテナ(2) あるいは僕が不吉な予言者になったわけ

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前回、ヤバイぞアンテナについて書きました。その続編。

★ヤバイぞアンテナの限界
ヤバイぞアンテナは、プロジェクトを成功に導く有効な武器なのだが、大きな欠点がある。それは「ヤバさ」を共有するのが難しいこと。
経験をベースとした感覚だから、同じような経験をしてきている仲間(会社の同僚とか)にはすぐに伝わることが多い。「あー、確かにヤバイっすね~」と。
反面、お客さまや協力会社など、別のバックグラウンドを持った人が相手だと大変。過去に同じような場面での失敗経験がないか、あっても懲りない人なのか。
後者のケース、実に多いんですが。

以下、僕が実際に言われたコメント。
・あれ、うまくいっていると聞いてますけど
・白川さんは石橋をたたいて渡る派ですね~
・それが出来ないなら、じゃあ何で貢献してくれるんだって言うことになっちゃうでしょ
・あのベンダーさんだって、プロなんですから。高いお金だって払ってるんだし。

そういう時に僕は、自分が不吉な予言者になっていることに気づく。
「あなた達がやっていること、多分失敗しますよ。ロジカルに説明しにくいんですが。決して、失敗を願っている訳じゃないんですけど」
というようにね。

どんなに分かってもらえなくても、こちらは自分の職業的カンに自信がある。例えば、僕のヤバイぞアンテナが反応して適切な対応を取り損ね、それでもうまくいったケースはこれまで1度しかない。それ以外は大なり小なり失敗してしまうのだ。
だから、必死で「何がマズイか」「このままだと何が起こるか」を根気よく説明する。だけれども対策には大抵お金が必要になる。メンバーを増員する、業務メンバーのエースを配置する、テストをやり直す、など。そうすると「言っていることは分かるけど、将来のリスクにそこまでリソース割けないよね」となってしまうことも多いのだ。本当は「今そこにある危機」なのに。

こういう状況で悔しい思いをしたことは何度も何度もある。ヒヨコSEだった頃は小さい機能グループをどう作るか、という局面で。プロジェクト全体の成功を支援する立場になってからは、50人くらいのプロジェクトが3ヶ月遅延してしまう、という1億、2億を左右するような局面で。

僕のヤバイぞアンテナの正しさは、問題がバッチリ表面化した段階で、ようやく周りの方々(主にはお客さん)に分かっていただける。
そのタイミングで「ほら、僕は前からヤバイって言ってたでしょ」と、言ってもむなしいだけだ(もちろん言わないけど)。自分が説得できなかったために、プロジェクトを危機から救えなかった無力感。コンサルタントとしての力不足。
ロジカルに説明する力か、「あんたが言うことなら信じるよ」という信頼、どちらかあればいいのだが。

★ヤバイのに手を打てなかった時は
当たり前だけど、自分たちで出来る対策は打つ。そして被害を最小化する。
でもほとんどのケースでは、自分たちだけが頑張ってもどうにもならない。大抵は担当外の仕事だし。
そういう場合、2つの方法しかない。

1)ヤバイFactを集める
オフィシャルな場でなくてもいいから、関係者に「どんな感じですか」とか「○○の件、内容ちょっと教えてください」とか、話を聞きにいく。情報は足で稼げ。
僕の会社(ケンブリッジ)にも、こういうのがやたら上手な社員がいます。すぐ仲良くなって、愚痴とかから問題点を見つけてくる。性格的に僕にはまねできない。
たばこ部屋トークも有効だけど、僕は吸わないし(以前、このためだけにタバコを吸っているプロジェクトマネージャーがいました。仕事熱心ですね)。

2)ヤバさが露呈する場を作る
もしヤバイ状況を改善出来ないなら、なるべく早くプロジェクトの周知の事実とする(全員でヤバさを実感する)。「早い」ことが大事。そうすればなんらか手を打てる。

僕はそのために、当初予定していなかったレビューポイントを意図的に設ける時があります。
例えば、
・ベテラン社員に業務ルールを詳細説明する場
・業務担当者を集め、業務プロセスのウォークスルーをする
・仕様の検討会を開く
・成果物のサンプルチェックをする
など。

こういうレビューポイントを早めに作れば、心配していたとおり本当にヤバイ時は、絶対にうまくいかない。うまくいかないことで、ヤバイことがみんなに知れ渡る。そうすると適切な手を打つことへの合意がやっと出来る。
このあたりは「プロジェクトにおける現物主義」というテーマにもつながるので、いずれまた。
運良く自分のアンテナが不調で「実は問題なかった」ということならば、万々歳だ。
プロとしてはちょっとだけ悲しいが。

★未然に防ぐ
ここまで書いたように、ヤバイぞアンテナが反応し始めてから対処するのは、実は大変。本当に有効なのは、あらかじめプロジェクト全員で(特にお財布を握っている人と一緒に)リスクを洗い出し、監視方法と対策を決めておき、予兆が出たら粛々と対応する方法。
これはまたリスクに関する別の話なので、また今度。

まとめ。ヤバイぞアンテナが反応したら、みんなに分かってもらおう。分かってもらうのに失敗したら「ヤバさが明らかになるイベント」を早めに仕掛けよう。今日はここまで。

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