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意思決定の1000本ノック。あるいは決めることがやたらにある理由

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★プロジェクトでは意思決定をしまくる
「事務の生産性を30%アップしよう」でも「SAPの導入プロジェクト」でもいい。なんかしら企業を変革するプロジェクトを想像してみて欲しい。
あなたがそういうプロジェクトのマネージャーやコアメンバーならば、1日30個くらいなにかを「決定」することはざらである。プロジェクトの成否を分けたり、10人月くらいの工数が無駄になるかもしれない大きな決断もある。小さな「いいよ、それで」という決断もある。

だから僕はプロジェクトを始める前、よくクライアントに「プロジェクトは意思決定の1000本ノックみたいなものです。何かを決めることが、プロジェクトを前に進めると言うことです。覚悟してくださいね」とお話する。
ボールを取って、どこに送球するかを決めるのはあなた。ノックの打ち手として、決めるべきことを次々と用意するのは、プロジェクト・ファシリテーターである僕ら。

20110112__

例として、昨日1日で僕が関わった意思決定をいくつか列挙してみよう。
・統制を効かせ、ミスをなくしつつ、決裁は何段階まで減らせるか
・土曜日に集中検討合宿をやるのはアリかナシか
・既存機能と全く同じ機能の要件定義書類はどこまでちゃんと書くべきか
・協力会社Bさんに2月もプロジェクトに残っていただくかどうか
・役員Aさんへの報告事項に「あの件」を入れるかどうか
などなど。複数のプロジェクトが混ざっているので、上流の業務検討から
下流の要員計画まで様々なテーマの意思決定が並んでいる。

数日、数週間かけて議論すべきテーマもあるけれど、大抵のものは1日、というかその場で決めなければならない。明日も明後日もこの程度の決定事項はあるのだから、どんどん片づけないと(ノックを補球しないと)、貯まってしまう。

★前例がない=どうすればいいか、イチイチ決めないといけない
「ちくしょう、プロジェクトってなんでこんなに決めるべきことが多いんだよ」とよく思う。何となく答えは分かっていて、たぶんプロジェクトが前例のない仕事だから。
そして、大抵のプロジェクトはいくつかの組織をまたいでいるから、1人で決められないことも多い。あっちの部署と調整して、あの役員の了解を頂いて・・。
前例がない仕事をやっていると、想定外な困ったこともよく起こる。そのたびに解決策を決める。またまた意思決定だ。これを放置していてはプロジェクトは進められない。

★意思決定の質がプロジェクトの成否を分ける
意思決定の集合体がプロジェクトなのだとしたら、プロジェクトを成功させるためには意思決定の質を高めないといけない。まあ、当たり前の話だ。捨て牌を選択ミスする麻雀打ちに未来はない。ダブルプレーを取れる時に1塁に送球していたら野球は勝てない。1塁と2塁、どっちに投げようかと考え込むのは最悪だ。

プロジェクトにおける質の高い意思決定とは、こんな感じだろう。
a)戻りがない
b)スッキリ感(残尿感なし)
c)数をこなせる

圧倒的に大事なのはa)の戻りがないこと。どんなに速く意思決定しても、後で覆ったら逆効果。

b)は、決定に関わったみんなが合意していること。結論に納得して「良し、それでやろう」と思っていること。
政治の世界では野党が納得していなくても法案は通ってしまう。けれどプロジェクトでは、反対していた人でも、一回決まったら結論に従って協力してもらわないといけない。だから議論を終えたときの納得感や、議論をしつくしたというスッキリ感はすごく大事。

c)は1000本ノックを受けきるためには、数をこなせるスピード感や体力やシステマティックな運営が必要と言う話。
実はa)とc)のあたりはトレードオフ(二律背反)になっているので簡単にはいかない。その話はまたいずれ。

★だとしたら、ファシリテーションだ
この、意思決定をマネージする技術をファシリテーションと呼んでいる。
僕がこの言葉を最初に見たのは11年前、今の会社(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ)に転職して、新人研修をボストンで受けるために乗っていた飛行機の中だった。まあ、英語が不安だからちょっと予習しようか、と思ったわけですね。
facilitationがテキストでのキーワードだというのは分かったんだけど、辞書を引いても「促進する、容易にする」と書いてあるだけで、意味が通らない。

とりあえず「チームワークがうまくいくように、コーディネートする方法」くらいに思っておいてください。チームワークの中身が、1つの会議の時もあるし、プロジェクトの時もあるし、企業組織全体の時もある。

ちなみに、僕は自分をプロのファシリテーターだと思うけれども、未だに「ファシリテーションとは」を一言で説明するのは難しい。ファシリテーション協会で会う方々なんかもみんな苦労されているみたい。僕も一言で説明しにくいので本を1冊書いたし、このブログでも色々なテクニックや考え方を書くことで伝えていきたいと思う。

まとめ。プロジェクトが意思決定の1000本ノックであり、成否が意思決定の質に左右されている。だから、意思決定をマネージする技術である、ファシリテーションが大事。
今日はここまで。

※今後はなるべく、木曜日に更新しようと思います。いつまで出来るのか、オレ。

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